2018年12月31日


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はじめまして。

このブログでは、クラシック音楽の真髄にどんどん斬り込んでいきます。

「ぶった斬り」というタイトルにしては、内容は名前負けしている感はありますが、自分が悪いと思うものを人には薦められないし、書きたいことを楽しく書く、ということをモットーにしています。

どちらかというと、クラシック音楽を聴き込んだ人向けの内容ですが、これからクラシック音楽を聴いてみようかな、と思っている方にも親しんで頂けるように考えながら書いています。

クラシック音楽に欠かせないのが、演奏家です。演奏家の優劣によって作品の価値が決まるといっても過言ではありません。

私はそこに焦点をおいています。

そして作曲家のことや曲の内容説明はそれぞれのディスクの解説にあるので、私は演奏の批評をこのブログで書くことに重きをおいています。

どうぞ、よろしくお願いします。

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2017年06月22日


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現代ドイツを代表するカルテット、アルテミス弦楽四重奏団が1998年に開始し、途中2人のメンバー・チェンジを経て2011年に完成させたベートーヴェンの弦楽四重奏曲全集。

1989年にドイツのリューベックで結成されたアルテミス弦楽四重奏団は、アルバン・ベルク弦楽四重奏団の面々や、ラサール弦楽四重奏団のワルター・レヴィンに師事し、エマーソン弦楽四重奏団やジュリアード弦楽四重奏団からも大きな影響を受けている。

活動が本格的になったのは1994年頃からで、1996年にはミュンヘン国際音楽コンクールで優勝、翌1997年、プレミオ・パオロ・ボルチアーニ弦楽四重奏国際コンクールでも優勝し、その圧倒的な実力を世に示した。

以後、ヴァイオリンとヴィオラのメンバー・チェンジを経て現在に至り、ますます高まる演奏能力によって、世界各国で高い評価を獲得している。

ベートーヴェンの弦楽四重奏曲の録音史を考えると1978〜1983年に完成されたアルバン・ベルク弦楽四重奏団の最初の全集が1つのターニングポイントと言えるところであり、圧倒的な技術とシンフォニーのような音量、雄大なダイナミックレンジと機敏で明晰な解釈で、一世を風靡した。

以後、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲を録音するにあたっては、アルバン・ベルク弦楽四重奏団とは違った新しい価値をどのように達成するか、というのが1つの基準になる。

そこで、このアルテミス弦楽四重奏団の録音であるが、彼らも豊かな音量を誇っており、そういった意味でスケールの大きい、室内楽的範疇に収まらない演奏を繰り広げているが、併せて、きわめて緊密なやり取りを高度な制御により行っている点が凄い。

彼らの演奏は力強くシャープで、広大なダイナミックレンジを持つが、長年に渡って研鑽を積んだ合奏能力はきわめて高度なものであり、このベートーヴェン録音シリーズでも、そのパワーを遺憾なく発揮すると同時に、細部に至るまで作品情報が掌握されていることが大きなプラスになっている。

チェロのエカルト・ルンゲはベートーヴェンについて、「最もモダン、刺激的、実験的そして豪胆な作曲家」と語っていたが、彼らのベートーヴェン演奏からはそうした積極的な要素が強く感じられるのがポイントで、このスタンスの徹底により、彼らの全集は、大きい存在感を獲得している。

そうして彼らが獲得した自然な歌謡性は、アルバン・ベルク弦楽四重奏団ではやや乏しく感じられたものである。

聴いていて「潤う」成分が欲しいリスナーには、このアルテミス弦楽四重奏団の演奏は、絶好の録音と言える。

個人的に強く印象に残ったのは、飛躍を感じさせる充実感に満ちた第5番、弦楽四重奏曲の概念を覆した名曲に相応しい壮大さを感じさせる第7番、アコースティックな暖かみを十全に感じさせてくれる第12番の3曲。

逆に、やや物足りないと思った曲としては、均質性に配慮しているが、もう一歩力強い踏み込みが欲しかった第14番、弦楽器的なサウンドに徹しているが、より活発さの欲しかったヘ長調Hess34の2曲を挙げる。

しかし、全般に現代的でシャープな感性で押し切った、素晴らしい内容の濃い全集であり、その平均的な質の高さは驚異的なものと言って良く、全集として強く推薦したい。

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2017年06月20日


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今年2017年は夭折したルーマニアのピアニスト、ディヌ・リパッティ生誕100周年に当たり、既にワーナーからはダイジェスト3枚組リマスタリング盤がリリースされている。

しかしこれまでのセット物では最も多くの音源を纏めているのが独ヘンスラー、プロフィール・レーベルからの当セットで、12枚のCDには1936年から亡くなる1950年までの現在入手可能な総ての音源が網羅されている。

古くは10代の頃のものからあり、バッハ作品では珍しいリパッティのチェンバロ演奏に触れることができる。

また、ブラームスのワルツは恩師ナディア・ブーランジェと連弾していて、リパッティのみならずブーランジェのピアノ演奏も聴くことができる。

代夫にして人生の恩人エネスコを独奏者としたヴァイオリン・ソナタ2篇は国内盤も出ていなかった貴重な音源。

チェリスト・ヤニグロの伴奏をつとめた録音は、前年にジュネーヴ国際コンクールでデビューしたヤニグロの力量を買い、共演コンサートを経て、チューリヒのコロンビアにテストレコーディングしたもので、息の合った絶妙のアンサンブルが聴ける。

それらは貴重な記録には違いないのだが、一方で音質に関して言えばCD1の前半及びCD3の音源は鑑賞に堪えないものもあり、どういう経緯で録音されたものか疑いたくなる。

プロフィール・レーベルは独自のリマスタリングが売り物だが、マスター自体の音質が鑑賞レベルに達していないのが実情なのだろう。

改めて夭逝したリパッティは、不運にも録音にも恵まれなかったピアニストだったことを痛感する。

後半には良く知られたカラヤンとのシューマン、モーツァルトの協奏曲第21番の他にアンセルメ、スイス・ロマンドとの協演になるシューマンのライヴも良好にリマスタリングされている。

版権の違いでEMIとデッカから別々にリリースされていたものが纏められたのは幸いである。

その他の協奏曲はリストの第1番、グリーグ、ショパンの第1番、バッハ/ブゾーニ編のピアノ協奏曲第1番、バルトークの第3番に加えてリパッティ自身の作曲になる『古典様式による小協奏曲』の2種類の音源とオーケストラ付ルーマニア舞曲3曲など、彼が遺した総ての協演を聴くことができる。

ブザンソン告別演奏会ではショパンのワルツ全曲を弾く筈だったリパッティが、精根尽きて僅か1曲を遺して演奏会場から去ったとされている。

その後の事情は伝説化されていて真実は定かでないが、一説によると彼は再び聴衆の前に姿を現し、ワルツの替わりにバッハ/マイラ・ヘス編のコラール『主よ、人の望みの喜びよ』を弾いたとされているが録音は遺されていない。

CD12の最終曲は彼の最後の幻の演奏を再現する形で同曲のセッション録音が付け加えられている。

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2017年06月18日


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独ヘンスラーのプロフィール・レーベルからリリースされているカルロ・マリア・ジュリーニがドイツのオーケストラに客演したラジオ放送用ライヴ録音シリーズのひとつ。

1979年1月26日に収録された質の良いステレオ音源は、大手メーカーのセッション録音に引けを取らない音質が再現されているし、また鑑賞の時に煩わしい聴衆からの雑音は一切混入していないのも幸いだ。

プロフィール・レーベルのリマスタリングには定評があり、それはこれまでにリリースされたジュリーニがドイツの放送局に遺した幾つかの音源でも証明されている。

この録音でも音場が広く分離状態も良くオーケストラのそれぞれの楽器配置も明瞭で、確かにやっつけ仕事ではない良心的で丁寧な仕上がりが感知される。

唯一の弱点を挙げるとすれば収録曲がブラームスの交響曲第1番ハ短調の1曲のみというところだろう。

ジュリーニは若い頃オペラからオーケストラル・ワークに至るかなりのレパートリーを持っていたが、年と共にそれらを厳しく収斂していった指揮者なので、こうした音源の発掘は歓迎したい。

ブラームスはジュリーニが得意としていた作曲家の1人で、交響曲第1番に関しては、フィルハーモニア管弦楽団(1961年)、ロスアンジェルス・フィル(1981年)、ウィーン・フィル(1991年)とそれぞれスタジオ録音している。

ここでのジュリー二の指揮は難解に感じられる部分が全くない明快なもので、冒頭からメリハリを利かせた起伏のあるダイナミズムの中にブラームスの演奏には異例なほどの鮮やかな色彩感を反映させている。

テンポの采配もかなり自由で、第2楽章後半のヴァイオリン・ソロとホルンのユニゾンではカンタービレを充分に奏でる流麗な抒情が美しいし、終楽章のテーマもテンポを抑えて悠々とした歌心を披露している。

ジュリーニは音楽を理詰めで聴かせるタイプの指揮者ではなく、あくまでも作曲家のオーケストレーションの妙を引き出し、それを最大限活かしながら表現する、言ってみれば感性が主導する解釈が支配的だが、その一方で音楽の起承転結を疎かにせず作品を弛緩させることのない巧妙なバランス感覚が彼の美学でもある筈だ。

その結果オーケストラの重厚さやほの暗さによって表されるブラームスの諦観よりも、むしろ平明だがより開放的なサウンドが特徴だろう。

ジュリーニはまた、ブラームスの作品独自の重厚な音構造、和声感覚、ディテールの入念な動きをことごとく表出しながら、伴奏音型、対旋律、普通なら目立たない楽句も手にとるように表現している。

それもバイエルン放送交響楽団がジュリーニの手足の如く自在に力量を発揮し、緻密な演奏をする姿勢がなければ不可能だが、事実、オケは極めて質の高い水準を示している。

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2017年06月16日


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イタリアSQは、ここで新しいベートーヴェン像を描き出そうとしており、全曲を通じておおらかなリリシズムが支配する明るく流麗な表現と息の合った絶妙なアンサンブルが特徴だ。

4人の奏者の音楽性には見事な均一性が保たれ、しなやかな弦の味わいが終始貫かれている。

好んで明るい音色を求めながらも、楽章に応じて音色を巧みに変化させ、その上表情にも意志的な姿勢をみせ、テンポをテリケートに浮動させながら、音楽をよく歌わせている。

むろん、アンサンブルにも隙がないが、彼らの演奏は実に明快で、そして美しい歌に溢れているのが、大きな特色に数えられるだろう。

歌う際の独自のアクセントとダイナミクスの変化で造型していく他に類のないベートーヴェン演奏で、その未来のベートーヴェン像を象徴するかのような新鮮なアプローチは驚嘆に値する。

ひとりひとりが南国的な明るい感性をもち、強烈な歌の精神でベートーヴェンの心を歌い上げているが、リズムも明快に処理しており、朗々たる魅力に圧倒される。

ベートーヴェンの解釈として異例であることは認めざるを得ないが、彼らはどんなフレーズにも歌を見い出し、洗練されたカンタービレの奏法で歌い上げてしまう。

極めて特徴のある演奏スタイルだが違和感はなく、ベートーヴェンの前向きの迫力を伝える演奏として貴重なものだ。

確かに哲学的な深みのある表現については他の四重奏団に一歩譲るかもしれないが、感覚的に誰でも素直に入ってゆける、親しみやすいベートーヴェン演奏と言えるだろう。

それだけに演奏が決して神経質で辛気臭いものにならない屈託の無さが魅力だが、また一方でメリハリの効いたオーケストラを髣髴とさせるスケールの大きな表現と自由自在に変化するテンポの採り方も手馴れたものだ。

ベートーヴェンの深遠な音楽の前に少しも萎縮することなく、むしろ耳に心地よい響きの中に総ての音楽的なドラマを映し出すリリシズムこそ彼らの演奏の身上なのだ。

弦楽器同士ならではの柔らかな対話の仕方というものに、イタリアSQはとてもよく通暁していたグループであったが、ここでも彼らの語り合いは少しも肩に力が入り過ぎておらず、トゲトゲしくならず、なめらかで、自然で、味わい深く再現されている。

余裕を持ったゆったりしたテンポの設定からもそのことが理解できるが、それ故にこの全曲集はなんと10枚のCDに収められている。

技巧的な安定感の強さは、これらの四重奏曲の数多い録音の中でも屈指のものだし、彼らの南方的な資質も各曲で遺憾なく発揮されている。

とりわけ中期の作品95「セリオーソ」や同59の3曲の「ラズモフスキー」等は彼らの面目躍如たるものがあり、各々の第1楽章では意志的な逞しさにも不足はない。

一方、作品74「ハープ」の軽やかな透明感、端正な楽想の処理、各部のバランスの妥当さ、変奏部分の連続性の強さは無類に楽しく、美しい限りで、彼らの音楽性の幅を感じさせる。

また、後期の作品132の最終部分で歌われるヴァイオリンとチェロのスケール豊かな表情には、この全集の独自性が見事に集約されている。

長年に亘り培ってきたインティメイトな交流が存分に発揮され、自然な呼吸の中から自ずと曲の本質を衝いた演奏が生まれたと言うべきだろう。

4人のイタリア人がベートーヴェンを主要なレパートリーにしていたことは興味深いが、その発端は1951年に参加したザルツブルク・フェスティヴァルでのフルトヴェングラーとの出会いだった。

巨匠は彼らをホテルに招いてベートーヴェンの後期の弦楽四重奏曲とブラームスのピアノ五重奏曲について自らピアノを弾きながら助言した。

それは彼らにとってかけがえのない経験であり、その後の演奏活動の重要な課題ともなった。

このベートーヴェンだけに限らず、イタリアSQの演奏の大部分は、弦楽四重奏というスタイルの最良の部分を高らかにかかげるようなものであった。

1967年から75年にかけてフィリップスへの録音が集大成されたもので、更にリイシュー廉価版として再登場、音質の良さも特筆に値する。

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2017年06月14日


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ここ数年間でカール・ベーム円熟期を代表する演奏のバジェット・ボックスが次々とリリースされている。

ユニヴァーサル・イタリーからの交響曲集22枚、ドイツ・グラモフォンからの後期録音集23枚及びグレイト・レコーディングス17枚の3セットを揃えると、オペラ全曲盤は別としても彼のオーケストラル・ワークでの公式セッション録音の殆んどを網羅することが可能だ。

それらは比較的録音状態にも恵まれているが、オールド・ファンやコレクターにとってはその前の着々とキャリアを積んでいた壮年期の演奏も聴き逃せない。

確かにノイズに塗れた録音も多く入門者にはお薦めできないが、ベームの解釈や指揮法の変遷を知りたい方にとっては非常に貴重なサンプルだろう。

彼はフリッツ・ブッシュの後を継いで1934年にシュターツカペレ・ドレスデンのカペルマイスターに就任するが、この時代のエレクトローラへの全音源がCD1から14までに収録されている。

その後ベームはウィーン・シュターツオーパーに活動を移し、彼らとのエレクトローラ、HMVへの録音が後半の4枚に、そしてベルリン・フィル及びフィルハーモニアへの客演が1枚強という内訳になっている。

この時代既にベームはリヒャルト・シュトラウスからも絶大な信頼を得ていて、彼がドレスデンで初演した年の『ダフネ』の抜粋や交響詩『ティル』『ドン・ファン』、オペラでは『サロメ』『薔薇の騎士』などでその片鱗を窺うことができる。

戦前から戦後にかけてオーケストラル・ワークを中心にしたレパートリーだけでもこれだけの録音を遺しているという事実は、如何に彼の手腕が買われていたかという証明でもある。

このセットの中で最も古い演奏は彼がドレスデンに就任した直後1935年のベートーヴェンの『エグモント序曲』とロルツィングの喜歌劇からの2曲で、一番新しいものでもセットの後半に収録されている1949年のウィーン・フィルとのモーツァルトを中心としたプログラムになる。

ここでのオペラや声楽曲はごく一部だが、爆撃で瓦礫の山に帰す前のゼンパーオーパーが如何に精彩に富んだレパートリーの上演を敢行していたか想像に難くない。

ライナー・ノーツ巻末にはこのセットに使用されたオリジナル音源の出典一覧表がオーケストラごとに掲載されている。

尚総てがモノラル録音で、オペラはドイツ語及びドイツ語訳詞による歌唱。

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2017年06月12日


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この作品集ではレギュラー・メンバーのピアニスト、エリック・ル・サージュが参加しない、純粋な管楽器のみのアンサンブル作品10曲を採り上げているが、レ・ヴァン・フランセーの面目躍如たる名演と評価したい。

メンバーの5人は言わずと知れた名ソリスト達だが、アンサンブルの難しさは個人の技量よりもむしろ個性を抑制して相手に合わせる協調性にあるため、名人が集ったからといって理想的な演奏になるとは限らない。

しかし彼らはそれぞれがヨーロッパの名立たるオーケストラに所属している首席奏者であるためにそのあたりも絶妙に心得ていて、合奏としての高度な愉悦と優れた芸術性も体験させてくれるのは流石だ。

このCDに収録された作品は、他に比較鑑賞する同時代の優れたサンプルが少ないので、やはりフランスのモラゲス五重奏団がリリースした20世紀のウィンド・アンサンブル集と聴き比べてみた。

そちらのアルバムにもリゲティ、バーバー及びヒンデミットの3曲の同一曲が収録されていて、ウィンド・アンサンブル入門者には有力な選択肢と言える。

両者を聴き比べてみると、確かにレ・ヴァン・フランセーの音色にはスター性を持った華やかさがあり、幅広い表現力も魅力的だが、アンサンブルの巧みさではモラゲスも決して劣ってはいない。

しかも彼らがこのアルバムを録音したのが1991年であることを考慮すると、より前衛的な曲目を積極的に採り入れた斬新な啓蒙性ではモラゲスが優っていると言えるだろう。

それに比べるとレ・ヴァン・フランセーのレパートリーはやや万人向けの傾向が無きにしも非ずだ。

レ・ヴァン・フランセーは1993年に南フランスの小都市サロン・ド・プロヴァンスでの国際室内楽音楽祭を企画したエマニュエル・パユ達によって同年に結成されたウィンド・アンサンブルだが、20年を経過して彼らの演奏活動は益々インターナショナルなものになっているし、その芸術性も一層成熟してレパートリーも豊富だ。

一般的に管楽器に関しては歴史的にもフランス系のソリストが圧倒的な能力を発揮していて、ソロ、アンサンブル、オーケストラル・ワークのジャンルを問わず、彼ら特有の音色と奏法でその存在感を示している。

こうしたスター・プレイヤーの多くはレギュラーのアンサンブルの中で定期的な演奏活動をしているのはむしろ例外で、機会に応じて集う臨時の室内楽団が多い。

古くはランパル、ピエルロ、ランスロなどによるフランス管楽アンサンブルがその例だが、一方固定したメンバーによる室内楽では前記したモラゲス兄弟を中心とするモラゲス五重奏団が少ないながら優れたCDをリリースしている。

そうした中でより継続的なアルバムを制作しているのがレ・ヴァン・フランセーで、これからの彼らの演奏活動にも期待したい。

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2017年06月10日


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プラガ・ディジタルスからのジェニュイン・ステレオ・ラブ・シリーズの新譜で、リムスキー=コルサコフの作品3曲が収録されている。

ピエール・モントゥー&ロンドン交響楽団の『シェエラザード』が目当てで買ったが、他の2曲の室内楽も機知に富んだ作曲家のアイデアと才能を示していて予想以上に楽しめるアルバムになっている。

弦楽のための六重奏曲及びピアノと管楽器のための五重奏曲はライナー・ノーツによればどちらもリムスキー=コルサコフがロシア音楽協会のコンクールのために提出した作品で、優勝は逸したが音楽性の豊かさと若々しい意欲的な作風に魅力がある。

前者は屋外で演奏する気の利いたセレナードのような清涼感があり、弦楽トリオをふたつ組み合わせる斬新な発想と第2楽章フガートではバッハの名前B、A、C、Hの4つの音を使った手の込んだ二重フーガ、第3楽章はイタリアの軽快な民族舞踏タランテッラ、更に第4楽章ではスラヴの抒情をクロスリズムの伴奏の上に歌わせるというかなり凝った作品だ。

演奏者はコチアン四重奏団にヨセフ・クルソニュのヴィオラとミハル・カニュカのチェロが加わる編成で、明快かつ溌剌とした推進力が見事な演奏だ。

一方後者は一種のサンプラーで、このCDの収録時間がトータル82分15秒とかなり詰め込んでいるにしても、第2楽章だけなのが惜しまれる。

プラハ木管五重奏団のメンバーにピアノのイヴァン・クランスキーが協演していて、管楽アンサンブルはどことなく垢抜けない音色だがスラヴの土の薫りをイメージさせるローカル色が聴きどころだろう。

モントゥー&ロンドン交響楽団の『シェエラザード』は1957年の良く知られたデッカ音源で、初期のステレオ録音だが新規のリマスタリング効果で分離状態の良い鮮明な音質が再現されていてノイズも殆んどなくなっている。

寓話「アラビアン・ナイト」の世界を説明的ではなく、音のみによって十分に描いた巨匠の腹芸のような含蓄の多い名演で、色彩豊かに、しかしナチュラルに表現している。

曲中4回に亘って登場するヴァイオリン・ソロによるシェエラザードのテーマはアイルランドの名手ヒュー・マクガイヤーの妖艶というよりは、むしろ清楚で可憐な表現に好感が持てる。

この作品はヴァイオリンの他にもフルート、オーボエ、コーラングレー、クラリネット、ファゴットやチェロなどのソロも大活躍する華麗なオーケストレーションに仕上げられているが、モントゥーのテンポは快速で、部分的な拘泥を避けてストレートな物語性を描き出し、クライマックスでのブラス・セクションの惜しみない咆哮も効果的だ。

この辺りにも彼の多くの新作初演の経験から鍛えられたスコアへの鋭利な洞察力が示されている。

レギュラー・フォーマットだが古いCDと聴き比べると見違えるような音質の向上が特筆される。

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