2023年01月01日


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はじめまして。

このブログでは、クラシック音楽の真髄にどんどん斬り込んでいきます。

「ぶった斬り」というタイトルにしては、内容は名前負けしている感はありますが、書きたいことを楽しく書く、ということをモットーにしています。

どちらかというと、クラシック音楽を聴き込んだ玄人向けの内容ですが、これからクラシック音楽を聴いてみようかな、と思っている方にも親しんで頂けるように考えながら書いています。

クラシック音楽の本当のところは、どんな演奏家であれ、作品を自分の色に染めて演奏しています。

私たちが、ベートーヴェンの何、モーツァルトの何を聴いているつもりでも、実際は、演奏家の音楽を聴いていることのほうが多いでしょう。

ことに、本当に秀でた演奏家ほど個性が強く、作品はその演奏家の音楽となってしまうのが常です。

例えば、フランスの名ワインの産地、ブルゴーニュの赤ワインは、ピノ・ノワールというただ一種類のぶどうだけで作られています。

しかし、作り手によって、味は驚くほど違います。

高級なものほど個性的です。

いわば、飲む人は作り手の個性を味わうのです。

音楽についてもまったく同じことが言えるでしょう。

作品がぶどう、演奏家が作り手というわけです。

同じ作品からでもいろいろな演奏が生まれてきます。

すばらしい演奏家の奏でる音楽ほど、独特の味わいを持つのです。

私はそこに焦点をおいて書いています。

どうぞ、よろしくお願いします。

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2022年01月21日


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Profilレーベルのヴァントの名盤がSACDハイブリッド化された。

Altusレーベルがライセンスし、このハイブリッド盤のための最新リマスタリングを施して製品化した。

シューベルトとブルックナー、ふたつの未完成交響曲を1日で演奏した1993年のライヴをそのまま収録しており、両曲共にヴァントの得意とした作品なので大変に聴きごたえがある。

先ず録音状態だが、1993年のライヴとしてはかなり良い状態でレコーディングされている。

ライヴといっても殆どセッションと変わらないくらい聴衆からのノイズは抑えられている。

従来のレギュラー・フォーマット盤では高音の角が取れて、やや丸みを帯びて聞こえ、音像も平面的に広がる傾向がある。

しかしマスターの状態が良好なので、特に高音質に拘るオーディオ・ファンでなければ充分高度な鑑賞にも堪えられる。

とはいえ聴き比べるとやはり高音の鮮烈な再生と音像の立体感、そして音量を上げても破綻がない点ではSACD盤が優っている。

シューベルトの『未完成』は精緻なアプローチがヴァントの身上だろう。

それだけに演奏に独特の品格があり、高貴な雰囲気を醸し出している。

弦楽とブラス・セクションのバランスが絶妙で、あらゆる意味での逸脱を避けた境地が窺えるが、豊かな歌心が横溢していて物足りなさは全く感じられない。

これはヴァントのひとつの至芸だろう。

恐ろしい低音が聴き手を一気に音楽へ引きずり込む第2楽章の楽器バランスの美しさもヴァントの独壇場だ。

一方ブルックナーの第9番はオーケストラから壮麗なサウンドを引き出し、ブラス・セクションには殆ど限界まで咆哮させる大技を繰り出しているが、ヴァントならではの統率があくまでも緻密な音楽表現の中に収めているのは流石だ。

完璧に整っていながらも熾烈・強烈な音響で、圧倒的な完成度でもって至高の音の大伽藍を築き上げている。

1980年代から90年代初頭にかけて客演したベルリン・ドイツ交響楽団とのライヴ録音には、ヴァントの解釈がとりわけ鮮烈に現れているといっていいだろう。

ヴァントの演奏解釈の本質は、一つひとつのパーツが全体を構成するための入念な設計にある。

テンポは速めで、決して流れを停滞させることなく、圧倒的な構成美を作り出す。

ベトついた感情表現などは無縁で、透き通るようなクリアさ、辛口の味わいが魅力だ。

こういった方向性に、ベルリン・ドイツ交響楽団はじつにフレキシブルに、過剰なまでの反応の良さで応えている。

異様なまでに密集度の高いサウンドだが、同時に適切なバランスで組み立てられている。

そこで生み出されるのは、驚異的といっていい立体感だ。

ヴァントは晩年になって、ようやく世界の楽壇から注目されるようになったが、このシューベルトとブルックナーも彼の長いキャリアの頂点を示した演奏のひとつだろう。

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classicalmusic at 04:25コメント(0)ヴァントブルックナー 

2022年01月18日


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ステンハンマルは、同時代のシベリウスやニールセンと並ぶスウェーデンの大作曲家であるにもかかわらず、その作品は殆ど知られていないという嘆かわしい状況にある。

ステンハンマルは、管弦楽曲や協奏曲、室内楽曲、ピアノ曲、合唱曲など、多岐にわたるジャンルにおいて数々の名作を遺しているが、その代表作と言えば、やはり交響曲第2番ということになるのではないだろうか(セレナードを掲げる人もいるかもしれない)。

交響曲第1番は、ブルックナーなどのドイツ・ロマン派の影響を多分に受けた作品であり、ステンハンマルの個性が必ずしも発揮されているとは言い難いし、交響曲第3番は断片しか遺されていない(ピアノ協奏曲に転用されている)ことを考慮に入れると、ステンハンマルの個性が発揮された名作は、やはりこの交響曲第2番ということになるのは論を待たないところだ。

同曲のこれまでの録音としては、既に廃盤になっているものも含めると、マン(1959年)、ヴェステルベリ(1978年)、ネーメ・ヤルヴィによる2つの録音(1983年及び1993年)、スンドクヴィスト(1996年)、パーヴォ・ヤルヴィ(1999年)、ニール・トムソン(2009年)の7種である。

このうち、最も優れた名演として評価が高いのはヴェステルベリ盤であるが、これは今では廃盤で入手難である。

これに次ぐのが、録音がいささか鮮明ではないがマン盤であり、他の演奏も決して悪い演奏ではなく、それぞれ一聴の価値がある演奏であり、この知られざる傑作を演奏する指揮者の見識とレベルの高さのほどを窺い知ることが可能だ。

筆者としては、このような知られざる傑作こそは、有名指揮者がもっと積極的に演奏して、それこそ国内盤で発売されることを大いに期待するものであった。

ヘルベルト・ブロムシュテット(1927-)は、ブルックナーやベートーヴェンの作品とともに、シベリウス、ニールセン、グリーグなどの北欧の作品も数多く手がけてきた。

本盤は、同曲の待望の新録音であり、まずは、このような知られざる傑作の録音を試みたという姿勢を高く評価したい。

筆者は未聴であるが、かつて知人から、ブロムシュテットがNHK交響楽団を指揮して同曲を演奏して大変感動したと聞いている。

ブロムシュテットは、ステンハンマルと同郷のスウェーデン人であり、シベリウスやニールセンの交響曲全集を録音した実績もあり、いずれも名演と評価できる。

既にかなりの高齢であったが、ブロムシュテットによる同曲の録音を大いに期待していただけに長年の渇きを癒された思いだ。

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classicalmusic at 10:14コメント(0)ブロムシュテット 

2022年01月14日


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このディスクのレコーディングは1965年のステレオ録音だが、彼は異なったソリストと共にその10年前にも『クリスマス・オラトリオ』のモノラル録音を遺している。

しかしこの作品の喜びに満ちた華やかな性格は、勿論こちらの新録音が断然優っているし、またソリストもグレードアップされているのが特徴だろう。

音質的にもSHM-CD化によって、雑味の払拭された明瞭なサウンドが特徴だ。

ただしその後にリリースされたリヒターのバッハ宗教音楽選集でブルーレイ・オーディオ化がされたので、現在最も優れた音質で鑑賞したい方にはそちらをお薦めしたい。

細部にいたるまで妥協を許さないリヒターの緻密な設計と、強力な統率力が全曲を支配している。

バッハを真正面からとらえた演奏で、厳しいまでの表情は他の演奏にはみられない威容を示す。

4人の独唱者、オーケストラ、合唱団の集中力の高い、真摯な演奏も申し分なく、その重厚な響きと清澄な音色は一度聴いた者の耳を離そうとしない。

現代楽器を用いた演奏だが、時代や様式を超えたバッハ像がある。

この演奏に抜擢された歌手陣は、現代でも得難いほどのメンバーが揃っている。

清楚で宗教曲にも精緻な歌唱を披露したソプラノのヤノヴィッツとメゾのルートヴィヒ、癖がなく真摯で若々しテノール、ヴンダーリヒと説得力のあるバスのクラスがそれぞれ宗教曲としての抑制を加えながら全体のバランスを絶妙にとって歌っている。

そこにはリヒターの哲学が感知される。

彼の解釈に迷いはなく、非常にすっきりした簡潔な構築力を見せているし、またその中に彼の強い情熱が迸るように感じられる。

当時まだ古楽としての奏法も楽器も確立されていなかったので、例えばフルートは木製のいわゆるトラヴェルソではなく、ベーム式のフルートで、トランペットはバロック時代には存在しなかったピッコロ・トランペットを使用している。

言ってみれば折衷様式による再現だが、そうした制限を乗り越えてリヒターの演奏は燦然と輝いている。

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classicalmusic at 09:20コメント(0)バッハリヒター 

2022年01月10日


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マレク・ヤノフスキは2010年から2013年にかけて、手兵ベルリン放送交響楽団を率いてワーグナーの主要なオペラを集中的にライヴ録音した。

総てベルリン・フィルハーモニーでのDSDレコーディングでSACD化されていて、またライヴといっても演奏会形式な舞台や客席からのノイズは全くない。

音質はこれまでの『マイスタージンガー』では屈指だが、確かに劇場での臨場感に関してはやや希薄だ。

特にこの類まれな喜歌劇にとってはスマート過ぎる音質かも知れない。

しかしオペラ畑で叩き上げたヤノフスキだけあって、これだけの長い作品の聴かせどころを効果的に、しかも解かり易くまとめている。

例えば第1幕への前奏曲は、単独で演奏する場合はどの指揮者も重厚な表現になりがちだ。

彼はライトモティーフを聴かせる以外は部分的に拘泥することなく、喜歌劇の特徴のひとつである、一日のうちに完結するドラマを想起させる颯爽とした、快活な演奏だ。

このタイプはオペラ劇場で鍛えた指揮者、例えばサヴァリッシュなどにも一脈通じている。

またベルリン放送響も融通性のあるオーケストラで、精緻でありながら歌手にも良く寄り添っていて好演。

歌手陣で最も際立っているのは、言うまでもなく靴屋の親方ハンス・ザックス役のアルベルト・ド―メンで、豊かな声量は勿論だが、演技が目に浮かぶような歌唱と表現力に圧倒される。

第2幕及び第3幕の二つのモノローグは聴きどころだ。

エファを演じるエディト・ハラ―も悪くはないが、いわゆるワーグナー・ソプラノに欠けがちな、きめ細やかな抒情的な表出、特にヴァルターとの重唱に必要な愛情豊かな表現力に多少不足していて冷たく聞こえるのが残念だ。

ヴァルター役のアメリカ人テナーのロバート・ディーン・スミスも期待していたより聴き劣りがした。

ヘルデンテノール系は力みが目立つと重苦しくなってしまうが、彼にもそうした傾向が無きにしも非ずだ。

やはりこのオペラの喜劇性を考えればもう少し柔軟な歌唱が望まれるだろう。

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classicalmusic at 16:46コメント(0)ワーグナー 

2022年01月07日


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フランスの伝統的なスタイルを正統的に継承するカントロフ&ルヴィエという2人のアーティストが、透徹した知性と薫り立つエレガンスをもって2大名曲の真の魅力を改めて浮き彫りにした素晴らしい名演だ。

フランクのヴァイオリン・ソナタは、得も言われぬ独特な色彩感が魅力だと思う。

理路整然とした古典的なタイプの曲とは違って、美しい混濁と繊細且つ絶妙なニュアンスを持ち合わせたロマン的なタイプの曲とでも言うべきであろうか。

この2人の演奏は、実に自然であり、誇張的な表現もなく、純粋に美しく綺麗で、温かみのある響きを奏でていて、第1楽章の冒頭を聴いただけでも、このセンス満点の情感の豊かな世界に惹き込まれてしまう。

また、フランクのヴァイオリン・ソナタは、哀愁ある、かきくどくヴァイオリンの音色が魅力的な、人気の高いソナタでもあるが、カントロフの、むせび泣くようなヴァイオリンは、まさに、この曲にうってつけで、聴いていて思わず身がとろけそうになる。

しかも、陳腐なセンチメンタルさは皆無であり、抒情的でありながら、常に高踏的な透徹した音楽が全体を貫いている。

何よりもカントロフ&ルヴィエというフランス人コンビが、いかにもフランス風のエスプリに満ち溢れた瀟洒な味わいを見せてくれるのが素晴らしい。

もちろん、瀟洒な味わいだけが持ち味ではなく、例えば第2楽章の圧倒的な技量をベースとした力感のある迫力は、演奏全体にいい意味でのメリハリを与える結果となっている点も見過ごしてはならない。

終楽章は、第1楽章と同様の演奏傾向であり、このセンス満点の硬軟併せ持つ美演を終えるのにふさわしい締めくくりとなっている。

ルヴィエも、時にしっとりと、時に力強くヴァイオリンをサポートしており、聴き終えれば、おそらく、幸福な溜め息が漏れてくるに違いない。

うって変わって、ラヴェルのヴァイオリン・ソナタは、演奏自体は非常に素晴らしいのだが、曲自体に作曲家の強烈な個性が宿っているためか、古典的クラシックが好きな人には少々アクが強く、聴いてしまうと、きっと腰を抜かされるような思いになるだろう。

でも、これはこれで面白いし、そんな名曲に触れてみるのもいいのではないだろうか。

この名演を聴くと、2人が怖じ気もせずに、この名曲を楽しそうに演奏しているのが目に浮かぶようである。

ラヴェルのヴァイオリン・ソナタは、フランクのそれと比較すると、必ずしも有名曲ではないが、この両者の手にかかると、フランクのヴァイオリン・ソナタに匹敵する傑作に聴こえるのだから、いかに演奏が優れているかを表わしているとも言える。

ガラスで作った雪の結晶みたいに明快で奇跡のような透明感を持つカントロフのヴァイオリンと、冬がけ布団みたいに慈愛に満ちていて、なおかつ正確なルヴィエのピアノ。

情感豊かさと抜群のテクニックをベースとした力強さが持ち味であるが、全体から漂ってくる瀟洒な味わいは、さすがはフランス人コンビの真骨頂と言える。

Blu-spec-CD化によって、音質がより鮮明になったのも素晴らしく、ぜひとも聴いてもらいたい1枚である。

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classicalmusic at 21:17コメント(0)フランクラヴェル 

2022年01月04日


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デ・ロス・アンヘレスが1969年にパリでレコーディングしたふたつのフランスの作曲家の作品が、SACDで復活した。

どちらもオーケストラの伴奏付きでジャン=ピエール・ジャキャ指揮コンセール・ラムルー管弦楽団とのコラボになる。

デ・ロス・アンヘレスの透明感のある声質が素晴らしく再生される。

ショーソンもカントルーブも非常に凝った、また気の利いたオーケストレーションを施していて、コンセール・ラムルーもジャキャの求める陰翳深い情緒を良く表現している。

ただしこの時代のEMIの録音は最良のものとは言えない。

オーケストラの解像度は思ったほどではなかった。

これはマスター・テープの音質だから致し方ないだろう。

『海と愛の詩』はモーリス・ブショルの洗練された高踏的な詩にショーソンの天才が花開かせた歌曲だが、デ・ロス・アンヘレスの輪郭のはっきりした、迸るような歌声と繊細な表現が鑑賞者を別世界にいざなってくれる。

ソロを支える管弦楽も決して重くなり過ぎず、移ろうような明暗と水の感触を髣髴とさせる。

この作品の最も優れた演奏といえる。

一方『オーヴェルニュの歌』はカントルーブの採譜と編曲になる民謡集だが、こちらでの彼女はエスプリに満ちた機知と、蝶のように軽快な飛翔、またララバイでは慈愛に溢れる歌唱を聴かせてくれる。

尚このディスクには9曲のみがピックアップされているが、EMIイコン・シリーズの7枚組では同メンバーによる24曲が組み込まれている。

彼女はバルセロナ出身のスペイン人だが、地元のサルスエラやスペイン歌曲は勿論、モーツァルトやイタリア・オペラの主要作品からドイツ・リートにまでレパートリーを持っていた。

ジェラルド・ムーアの引退コンサートにシュヴァルツコップ、フィッシャー=ディースカウと共に参加したことも記憶に新しい。

しかしフランス・オペラや歌曲、宗教曲にも驚くべき才能を発揮した。

彼女の歌ったフランス・オペラを試みに挙げてみると、ビーチャムとの『カルメン』、クリュイタンスとの『ペレアスとメリザンド』『ファウスト』『ホフマン物語』宗教曲ではフォーレの『レクイエム』、プレートルとの『ヴェルテル』歌曲にもラヴェルの『シェエラザード』『ギリシャの歌』などがあり、いずれも名演の名に恥じない録音だ。

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classicalmusic at 17:32コメント(0) 

2022年01月01日


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ダヴィッド・フレーの新譜は、バッハの『ゴールドベルク変奏曲』で、彼がデビューした頃から課題にしてきたバッハの作品へのひとつの到着点を示した演奏と思える。

彼のドイツ音楽への執着は、これまでにリリースしてきたアルバムを見れば明らかだ。

そこにはドイツのピアニストが誰も弾かなかったようなラテン的リリシズムに溢れた解釈が示されていて、陰翳と抒情の世界があいまったサウンドに不思議な魅力がある。

勿論メリハリを利かせたダイナミズムも生き生きと表現されている。

この作品は主題になるテーマに30の変奏が従い、最後に再び静かなアリアが戻ってくるという壮大な構成である。

三変奏ごとにテーマを一音ごと上げて追いかけるカノンを配置し、テーマも順行、逆行が駆使され、最後には二つのリートを組み合わせるという、バッハの対位法のエッセンスが面目躍如の作品だ。

また当時の二段鍵盤のチェンバロの機能とテクニックがフルに活用されているので、現代のピアノで弾く場合はテクニカルな問題を少なからず解決しなければならない。

フレーは独自のリリカルな歌心を充分に披露しつつ、全く不自然な印象を与えていないのは流石だ。

それぞれの変奏は二つの部分から成り、更にそれぞれに繰り返しの指定がされている。

ピアニストによってはリピートを省略した録音もあるが、フレーは一回目と二回目を巧みに変化をつけてリピートに必然性を与えている。

例えば最後の第30変奏『クオドリベット』では弱音で弾き始め、クレッシェンドを加えながらフォルテで繰り返すという手法を取っている。

それはあたかもバッハ家のささやかな団欒が、次第に音楽的な充実感に満たされていくようにも聴くことができる。

録音での残響はやや多めだが、音質は良好。

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classicalmusic at 10:54コメント(0)バッハ 
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Profile

classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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