2018年06月02日


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コーガンは58歳という全盛期に他界し、奇しくも時を同じくしてモノラルからステレオ録音への交替期が訪れたこともあってレコーディングにはそれほど恵まれなかったヴァイオリニストだ。

彼のセット物ではこれまでヴェネツィア・レーベルからソヴィエト音源を収集した16枚組とワーナー・コリアからの15枚組がそれぞれリリースされているが、前者は既に廃盤、後者はコスト・パフォーマンスが難点になっている。

このメンブランのマイルストーンズ・オヴ・ア・レジェンド・シリーズではEMIだけでなくRCAなどの音源からコーガンの演奏した協奏曲、ソナタ及び彼がメンバーとして加わった室内楽などが比較的ランダムに選択されているようだ。

例えばモーツァルトとブラームスではセッションとライヴの異なった協演による2種類ずつの協奏曲を比較鑑賞できる趣向になっていて、特にブラームスではコンドラシンとモントゥーでは全く解釈が違うのが興味深い。

コリア盤に比較して単価はほぼ半額になるので、世紀のヴァイオリニストの神々しいばかりの演奏を気軽に体験できるところがセールス・ポイントだろう。

コーガンのヴァイオリン演奏は、鉄壁のテクニックをベースにしつつ、内容の豊かさを失うことがない申し分のないものであり、いずれも珠玉の名演奏と評しても過言ではあるまい。

コーガンは、テクニックと音楽表現の両面において、筆者個人はハイフェッツやミルシテインにも匹敵する名ヴァイオリニストと考えているが、色々な意味で悲劇的と言える生涯を送った彼は、その真価がなかなか正当には認識されていない傾向があるようだ。

特に日本では、コーガンというと大家と認められながらも、どちらかというと技巧派としての面ばかりに目を向けられてきたきらいがあるが、彼は音楽的な表現力も実に豊かで、もっと高く評価されるべき偉大なヴァイオリニストである。

突然死した彼の死因については、暗殺説もささやかれているが、ここに示された厳しくも彫りの深い表現と輝かしく格調の高い表現の素晴らしさには、この孤高の名手の芸の高さもが如実に映し出されている。

また、理想的なほどに自在で滑らかなボウイングのテクニックも、注目に値するものである。

音質面に関してはメンブランは無頓着なところがあって、版権の切れた過去の名演奏を低コストで提供することに主眼を置いていて、当然新しいリマスタリングは期待していなかったが、このセットは正規音源を使ったものらしく、一通り聴いた感じでは概して良好な音質で再生され、鑑賞に全く不都合はない。

また彼のさまざまなジャンルのレパートリーがまんべんなく収められていて、コーガンの至芸を堪能するには充分な質と曲数も提供している。

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classicalmusic at 00:33コメント(0)コーガン 

2018年05月31日


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ラファエル・クーベリック生誕100周年だった2014年に彼のさまざまな音源がCD化された。

メジャー・レーベルからの網羅的なイシューはEMIのイコン・シリーズ13枚とドイツ・グラモフォンからのシンフォニー・エディション23枚、それにソニーへの晩年の録音を纏めた7枚のソニー・クラシカル盤が代表的なセットだった。

今回はグラモフォンからの徹底した全音源放出で、軒並み音質に恵まれた円熟期の演奏で占められている。

こちらには4年前のベートーヴェン、シューマン、ドヴォルザーク及びマーラーの交響曲全曲を収録したシンフォニー・エディションには組み込まれなかったドヴォルザークのスラヴ舞曲集全曲や『スターバト・マーテル』、マーラーの『さすらう若人の歌』や5曲のオペラ全曲盤の他に、更に映像も加わってクーベリックの小宇宙とも言えるコンプリートなコレクションになった。

ただし2種類のブラームス交響曲全集はウィーン・フィルへの客演がデッカ、バイエルン放送響とのライヴはオルフェオからのリリースで、ここには入っていない。

シンフォニー・エディションとは全CDがだぶっているので、欲を言えば嵩張らず音質で上回るブルーレイ・オーディオに凝縮して欲しかった。

レギュラー・フォーマットに固執したリイシューが惜しまれる。

チェコが生んだ巨匠ラファエル・クーベリックは1948年に英国に亡命し、フリーでインターナショナルな演奏活動を開始したが、結果的にカレル・アンチェルにチェコ・フィルの首席指揮者の道を拓いた。

皮肉にもアンチェルの亡命という連鎖反応によって今度はノイマンにそのタクトが回ってくることになる。

クーベリックはチェコの熱狂的な民族意識を持っていながら、それをより高踏的な音楽性に昇華することができた。

それ故自国の作曲家の作品で聴かせるオリジナリティーからは迸るような情熱が感じられるが、彼の古典派から現代音楽に至る幅広いレパートリーでも、緊張感溢れるエネルギッシュで傑出した解釈を堪能できる。

彼はマーラーの交響曲全曲録音は果たしているが一方でブルックナーにはそれほど熱心ではなかったようで、DVDに映像を収めた『ロマンティック』は単独だが、やはり強烈な存在感でクーベリック節を披露している。

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classicalmusic at 00:19コメント(0)クーベリック 

2018年05月29日


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1958年、レオニード・コーガン初のアメリカ・ツアーの途上、ニューヨークで録音されたアンコール・アルバムが半世紀を経てようやく世界初CD化。

RCA及びソニーに録音された過去の音源をいわゆる箱物ではなく、単独あるいは2枚組のCDでリイシューするシリーズのひとつでミドル・プライスに留めてあるのが惜しまれる。

先に紹介したピエール・モントゥーとの協演盤で久しぶりにコーガンのハチャトゥリァンを聴いて、改めて彼の類い稀な音楽性と切れ味の良いヴァイオリン・ソロに感動したので、このアンコール・ピース集も聴いてみることにした。

58歳という全盛期に世を去ったヴァイオリニストが遺した、彼としては珍しく際物を集めた録音で、また音質にも優れているのでその意味でも貴重なCDだ。

鋼のようにソリッドな技巧とストイックなほどに真摯な音楽への取り組みから生み出される演奏は、ヴァイオリンという楽器の本質とその多彩な魅力を開示してくれる。

ショスタコーヴィチ、プロコフィエフやハチャトゥリアンなどお得意のロシア物を入れ込みつつ構成されたこのアンコール・アルバムは、そうしたコーガンの芸術に親しむ上で最上のイントロダクションと言えるだろう。

中でも白眉はツィガーノフ編、ショスタコーヴィチの『4つの前奏曲』で、この曲が最もコーガンの音楽的な趣味と奏法が一致した演奏のように思われる。

中には彼の演奏スタイルからは想像できないようなドビュッシーの『月の光』やグラズノフの『間奏曲』などの甘美なレパートリーも組み込まれている。

そこは流石に隙のないテクニックで巧みに洗練して、欠点を見せない完璧主義を堅持しているのもコーガンらしい。

彼のヴァイオリンはグァルネリ・デル・ジェズと思われるが、その磨き上げられた音色の美しさにも魅力がある。

惜しむらくはピアニストのアンドレイ・ミトニクの伴奏がいくらか変化に乏しく、コーガンのソロを充分引き立てていないことだろう。

こうした小品集では粋で遊び心のあるピアニストの起用が望ましいが、当時のソ連では当局の監視もあって自由主義的な演奏がままならなかったのかも知れない。

目の醒めるような超絶技巧で楽しませてくれるのが最後に収録されているサラサーテの『バスク奇想曲』でヴァリエーションの部分ではダブル・ストップ、アルコとピチカートの驚異的な応酬、それにフラジオレットなどが駆使されて爽快なフィナーレになっている。

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classicalmusic at 00:26コメント(0)コーガン 

2018年05月27日


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自らの生涯を描いたと言われるリヒャルト・シュトラウスの壮大な音絵巻を、ブロムシュテットの豊穣にして端正な指揮、R.シュトラウスを知り尽くしたドレスデンのオーケストラによる極め付きの名演。

1984年9月ドレスデン・ルカ教会でのセッション録音で、マスターの音質の良さに加えて今回のUHQCD化によって、レギュラー・フォーマットCDでのリーズナブルな価格帯で更に音質向上の可能性を追究しているところを評価したい。

確かに従来盤より見通しの良い鮮明な音場が得られているが、その中でブロムシュテットの緻密でありながら溢れるほどのアイデアと音楽性を湛えた指揮と、ルカ教会の広く豊かな音響空間に無理なく伸展するシュターツカペレの潤沢なサウンドがこの交響詩にひとつの理想の姿として映し出されている。

また随所に現れる名コンサート・マスター、ペーター・リミングのヴァイオリン・ソロも非常に巧妙でこの作品に欠かせない聴きどころを創っている。

彼は1972年のケンペとの共演でもソロを弾いているが、オン・マイクでヴァイオリン協奏曲のように録音されているのに対して、こちらではあくまでもオーケストラの一部から響いてくるように採音も改善されている。

リヒャルト・シュトラウスの多くの作品は作曲家自身、或いは彼の信任に厚かったカール・ベームの指揮によってドレスデンで初演されている。

また1970年代にルドルフ・ケンペがシュターツカペレ・ドレスデンとEMIに交響詩全曲録音を完成させている。

そうしたオーケストラに蓄積された貴重な経験を現代のシュターツカペレが受け継いで、R.シュトラウスの老舗としての伝統を引っ提げていることは無視できないだろう。

R.シュトラウスの時代に作曲上のオーケストレーションのテクニックは爛熟期を迎え、後期ロマン派から受け継いだ手法を更に発展させた、大編成のオーケストラのための洗練を極めた豊麗な音響で魅了する音楽が殆んど飽和状態に達する。

6管編成100名を超えるオーケストラ、3人の独唱者と大合唱のための『吟遊詩人タイユフェ』はその象徴的な作品だ。

彼の作曲した殆んどの作品はタイトルが付けられた標題音楽で、管弦楽曲でもオペラにおいても独自の管弦楽法が最高度に発揮されていて、音楽によって細密画的に描写するストーリーの展開に熟達している。

一方で標題音楽と絶対音楽との宿命的な邂逅とせめぎ合いがあり、彼の作曲上のスタンスを良く示している。

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classicalmusic at 00:45コメント(0)R・シュトラウスブロムシュテット 

2018年05月25日


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ヤーノシュ・シュタルケルが1970年代に南西ドイツ放送局のために録音した音源で、このディスクにはヒンデミット、プロコフィエフ、ラウタヴァーラの3曲のチェロ協奏曲が収録されている。

少なくとも私の知る限りでは、ヒンデミットを除いた2曲はシュタルケルのレパートリーとしても唯一の音源だ。

プロコフィエフに関しては1956年のワルター・ジュスキント、フィルハーモニア管弦楽団とのセッション録音がワーナーからイコン・シリーズで復活している。

ここに収められているのは同曲からの改作Op.125の方で、交響的協奏曲と改題され、音楽もより充実した内容に仕上がっている。

演奏はヒンデミットがフォン・ルカーチ指揮、SWRシュトゥットガルト放送交響楽団で1971年、プロコフィエフはエルネスト・ブール指揮、ラウタヴァーラがブロムシュテット指揮になり、この2曲はバーデン=バーデン・フライブルクSWR交響楽団で、どちらも1975年の協演になる。

音楽的な質の高さは言うまでもないが、当時としては音質的にも極めて良好なステレオ音源で保存状態も完璧だ。

3曲ともシュタルケルが得意とした20世紀の作品で、今もって彼の演奏がその解釈の面でも、またテクニックにおいても最高峰にあると思える。

というのも近年こうした新しい時代の作品を一流どころのチェリストがあまり積極的に採り上げないからかもしれない。

ヒンデミットの色彩的でスペクタクルな堂々たるオーケストレーションに支えられたソロ・パートを一瞬の隙をも見せない緊張感に貫かれた奏法で弾き切る彼の美学が面目躍如たるセッションだ。

またフィンランドの現役の作曲家、エイノユハニ・ラウタヴァーラのチェロ協奏曲は規模は小さいがチェロの音響的可能性を追究している点で注目される。

神秘的なフラジオレットによるアルペッジョがソロの重要なモティーフになっていて、重音奏法とフラジオレットを駆使したパッセージがシュタルケルの精緻な技巧によって超然と響いてくるのに唖然とさせられるが、ブロムシュテットのサポートも絶賛したい。

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classicalmusic at 00:22コメント(0)シュタルケルプロコフィエフ 

2018年05月23日


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ダヴィッド・オイストラフとレオニード・コーガンは1950年代に相次いでアメリカ・デビューを飾ったが、このCDには彼らが丁度その時期にボストン交響楽団のサポートで録音した4曲が収められている。

東西冷戦当初、旧ソヴィエト連邦の芸術家たちは国外での活動が著しく制限されていたが、いわゆる「雪溶け」の時代になると、少しずつ世界に紹介されるようになってゆく。

この録音は、そうした時代におけるレオニード・コーガンとダヴィッド・オイストラフというソ連の2大ヴァイオリニストの、初のアメリカ・ツアーの際に収められたものである。

コーガンの驚異のテクニック、オイストラフの懐の深い演奏が聴きものだ。

ハチャトゥリアンのヴァイオリン協奏曲ニ短調とサン=サーンスの『ハバネラ』はコーガンのソロ、ピエール・モントゥーの指揮で、1958年のヒス・ノイズも殆んどない鮮明なステレオ録音だ。

ハチャトゥリアンの協奏曲ではモントゥーの創り出す色彩豊かな音響の中に、コーガンのヴァイオリンが冷徹とも言えるリズム感で鋭利に切り込んでいく鮮やかなテクニックが冴え渡っている。

第2楽章アンダンテ・ソステヌートの幻想的なカンタービレの美しさにもコーガンらしい媚びのないしめやかさが感じられる。

対照的に終楽章で彼は血の騒ぐような無窮動的な民族舞踏の曲想を漸進的なテンションを維持しながら息をもつかせず弾き切っている。

頻繁に聴かれる変則的なリズムをものともせずに一糸乱れずオーケストラを率いるモントゥーの棒さばきも爽快だ。

サン=サーンスの『ハバネラ』は、ソロにも管弦楽に呼応したエキゾチックな甘美さがもう少しあっても良いと思うが、コーガンの隙を見せないフラジオレットや重音奏法などの妙技が心地良い1曲だ。

一方後半の2曲、ショーソンの『詩曲』及びサン=サーンスの『序奏とロンド・カプリッチョーソ』はオイストラフののソロで、指揮はシャルル・ミュンシュだが、こちらは1955年のモノラル録音になる。

ただ幸いにも録音状態、音質ともに極めて良好な状態で残されていて、今回同シリーズで初CD化されたソナタ集と並んでオイストラフの貴重なアメリカ・デビュー・アルバムが復活したことになる。

またここではミュンシュの得意にしていたフランスのレパートリーということもあって、シカゴ交響楽団から巧みに情緒と陰翳を引き出して、これらの小品にある種の刹那的な魅力を与えている。

オイストラフのソロは磐石で、ショーソンの妖艶さからサン=サーンスの快活さまでを、全く無理のない自然体の奏法と大らかなリリシズムで表現している。

彼としては際物になる曲種だが、こうした作品でも彼の音楽性の豊かさ、優れた表現力とそれを支える万全のテクニックが充分示されている。

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classicalmusic at 00:29コメント(0)コーガンオイストラフ 

2018年05月21日


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イングリット・ヘブラーは決して幅広いレパートリーを開拓したピアニストではなかったが、幸い2曲のベートーヴェンのピアノ協奏曲を録音している。

その演奏は彼女の生涯の課題となったモーツァルトの亜流のように思われるかも知れないが、実際にはこのディスクでモーツァルトとは異なったアプローチで作品に取り組んでいることが明らかにされている。

つまりヘブラーはモーツァルトの延長線上にあるベートーヴェンではなく、控えめではあるにせよ次世代のウィーン楽派の担い手としてのベートーヴェンの野心的な試みを感知させている。

確かに現在の個性を前面に打ち出すピアニストのパフォーマンスに比べれば、こうした正面切った正攻法の演奏は売れ筋ではないだろう。

それくらい飾り気がなく、またスリルに満ちた疾走感とも縁のない再現だが、音楽的にはしっかりとした力強い構成感の中に確信を持った表現が充分な説得力を持っている。

協奏曲としては作曲家の処女作となるピアノ協奏曲第2番変ロ長調では、その瑞々しいフレッシュな感覚がヘブラーの毅然としたソロとガリエラ指揮するニュー・フィルハーモニア管弦楽団のどちらかというと室内楽的な軽快な雰囲気の中に良く表れている。

ガリエラはモーツァルトでやや失望させたがベートーヴェンではしごく真っ当なサポートをしているように思える。

確かにコリン・デイヴィスがこの2曲を指揮していたら、全く別物に仕上がっていただろうという印象は免れないのだが。

第4番ト長調でもヘブラーの解釈は決して革新的なものではなく、むしろ文字通りオーソドックスの典型のような表現である。

常にアーティキュレーションを曖昧にしない明瞭なタッチと泰然自若としたピアニズムから醸し出される格調の高さが抜きん出ている。

どちらも1970年のフィリップス音源で、リマスタリングされた音質は鮮明で分離状態も良好。

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classicalmusic at 00:23コメント(0)ベートーヴェンヘブラー 

2018年05月19日


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旧ソヴィエトを代表するヴァイオリニスト、レオニード・コーガン(1924-1982)の現代ロシア作品集2枚組で、チェコ・プラガ製作によるレギュラー・フォーマット盤のシリーズであることを確認されたい。

ただし保存状態の良いセッション及びライヴ音源が使われていて、新規リマスタリングによって音質はかなり向上しているので鑑賞に全く不都合はない。

ちなみに2曲目のハチャトゥリアンの協奏狂詩曲のみがモノラル録音だが、他の収録曲に遜色のない、ソロを克明に捉えた芯のあるしっかりした音響が再現されている。

これまでにリリースされたコーガンのボックス・セットでは聴くことができない貴重な選曲が特徴で、これらの6曲でコーガンは新時代のロシアのヴァイオリン音楽を告げる先鋭的な意気込みを伝えている。

中でもケレンニコフとヴァイセンベルクの協奏曲はそれぞれがコーガンに献呈され彼自身が初演を飾った作品で、その真似のできないオリジナリティーと彼特有の近寄りがたいような鮮烈な演奏が繰り広げられている。

彼は前者では勇猛果敢な作風をスヴェトラーノフの豪快なサポートで鬼神のように具現し、一方後者ではコンドラシンとのコラボでより精緻で頭脳的な形式感を感知させている。

ハチャトゥリアンの協奏曲はオイストラフに献呈されたものだが、ここではピエール・モントゥー指揮、ボストン交響楽団による1958年の歴史的録音が収録されていて、こちらも彼がエスニカルな熱狂を示した名演のひとつだろう。

最後のデニソフの『パルティータ』はバッハの無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番からソロ・ヴァイオリンと室内管弦楽用にシュールレアリズム的なオーケストレーションでアレンジした、ストコフスキーの現代版といったところだ。

しかし、彼の超ポリフォニー手法が幾らか裏目に出て、時折ソロを邪魔してしまうのがやや煩わしい。

また通奏低音にチェンバロも加えて故意にバロック的音響を残しているが、全体的に音楽が中途半端に新しいという印象を与えている。

コーガンが亡くなる前年のライヴで、その気迫のこもった情熱的な演奏からは彼の早世が惜しまれる。

尚この作品の指揮はコーガンの息子であり、ヴァイオリニスト、指揮者のパヴェル・コーガン。

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classicalmusic at 00:07コメント(0)コーガン 
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classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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