2008年12月
2008年12月05日
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EMIが満を持して完成させた「リング」全曲録音。EMIはかつてワルター、フルトヴェングラー、クレンペラーによる全曲を企画したが、いずれも完成されなかった。
ライヴ録音はあるがスタジオ録音のシリーズはこれが初めて。また当曲の録音としてもフルトヴェングラー以来30数年ぶり。キャストはバイロイトなどで活躍中の当代最高のメンバーが集められている。
第1弾は「ワルキューレ」。ハイティンクの指揮は、冒頭の序曲からしてすでに並々ならぬエネルギーと力にあふれている。
とりわけ第1幕のロマンティシズムあふれる愛の場面、第2幕第4場以降の悲愴さ、そして第3幕フィナーレの雄渾壮麗な表現は特筆に値する出来映えだ。
キャストは当時でのベスト・チョイスとして衆目の一致するような顔ぶれを揃えているが、乙女の精のように清らかで美しい歌唱を聴かせるステューダーのジークリンデはひときわ素晴らしい。
第2弾の「ラインの黄金」でも、透明精妙な音の徹底的練磨の中に、豊かなリリシズムに満ちた劇的表現を目指すのはここでも変わりがない。
後半の2つの場が特に申し分のない出来映えで、全体の流れもすこぶる自然だ。
歌手陣も極めて充実しており、個性的な登場人物たちが見事な性格表現で歌われている。これはバイロイトでさえ容易には望めないものだろう。
「ジークフリート」「神々の黄昏」は、オペラティックというよりシンフォニックな表現だが、精緻な仕上げから生まれる響きの美しさは特筆すべきもので、性格のはっきりした名歌手を適材適所に配した配役もすぐれている。
ただハイティンクには、もうひとつ語り上手な雄弁さを望みたくなる。
歌手ではイェルザレムが若々しい抒情と力強さを完備した好演で、「ジークフリート」におけるモリスのさすらい人も、第3幕第1場の苦渋する老いたる神の胸中が痛いほど伝わってくる名唱だ。
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プレヴィンは元来ロシア音楽を得意としているだけあって、こうした作品を指揮すると卓越した手腕を発揮する。
この「白鳥の湖」の演奏もそうで、全体にややテンポを遅めにとり、チャイコフスキー独特の抒情的な旋律をたっぷりと歌わせながら、どの曲も表情豊かにまとめている。
ことに劇的に描きあげた終幕は秀逸だ。
「白鳥の湖」のコンサート・スタイルによるすぐれた演奏といえよう。
「眠りの森の美女」も実に素晴らしい演奏だ。
プレヴィンが自家薬籠中のものとしているチャイコフスキーのバレエ音楽だけに、巧みな棒さばきで各場面を的確に描き分けながら、作品の幻想的な持ち味をあますところなく表出している。
特に第3幕は見事な出来映えで、生き生きとした表情のポロネーズから、変化に富んだ踊りと続き、絢爛豪華な「アポテオーズ」で終わるまで、息をもつかせぬ優れた演出力には感激のほかはない。
「くるみ割り人形」でもプレヴィンは1曲1曲を丹念に練り上げながら、この作品のもつメルヘンの世界をものの見事に表出しており、いかにもこの人らしい語り口のうまい演奏だ。
第1幕第2場の「情景(冬の松林で)」や「雪のワルツ」、第2幕最後の「終幕のワルツとアポテオーズ」などの、ロマンティックな雰囲気にあふれた卓抜な表現は、プレヴィンならではのもの。
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2008年12月04日
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スウィトナー独特の表現スタイルを持ったモーツァルト演奏。
あたかも小さなフラスコの中で手塩にかけて醸成した高価な香水を、狭い小さな容器にいったん集約した上で、必要なだけ少しずつ、真に注意深く耳を傾ける聴き手にだけ分かち与える、といった趣がある。
その音楽は十二分に精錬されているが、決してみずからの美しさを誇示することのない、慎み深い純潔さをもったモーツァルトだ。
スウィトナーの指揮するモーツァルトの演奏は、端正で古典的な様式美にあふれているのが特色である。
この「魔笛」の演奏は、その好例で、スウィトナーは明確な棒できびきびと運びながら、モーツァルトの音楽の美しさを鮮やかに浮き彫りにしている。
シュライアーのタミーノ、ゲスティの夜の女王ら独唱陣も、スウィトナーの意図に十全にこたえた好演だ。
ドレスデンのオケも随所で夢のような音色感を出していて美しい。
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バレンボイムのモーツァルトというと、20代のころに録音した、ピアノ協奏曲の全曲録音が有名だが、それ以降、久々に録音したのが、1984年から85年にかけておこなわれたピアノ・ソナタ全集である。
指揮者としても伴奏者としても、幅広い音楽ジャンルに挑んでいるだけあって、このピアノ・ソナタ全集では、そうしたさまざまなものを吸収した彼の豊かな表現力が、プラスにはたらいている。
バレンボイムは、ベートーヴェンやブラームスのピアノ曲も得意としており、音楽の内面に光をあて、じっくりと聴かせることに秀でたピアニストだ。
ここでは、そうした彼の魅力がよく生かされていて、みずみずしく直截に表現しており、構成的な美しさをひき出していて素晴らしい。
バレンボイムは現在指揮者として活躍しているが、その学習と実践がこのアルバムでは大きな実りとして生かされている。
これは以前のバレンボイムを知る者には大きな驚きである。
とにかく、ここでのバレンボイムは楽譜の読みが実に深い。しかも自在感に満ち、音楽の自然な流れを少しも失っていない。
清潔感をただよわせた端正なモーツァルトになっているのはさすがで、清澄な響きと爽快なリズム感が実に快い。
しかも、それが自然になされているところに、バレンボイムの円熟をみてとることができる。
さらに安易な新ロマン主義的演奏とは、はっきり一線を画している。
バレンボイムはじっくりと、ゆとりをもってモーツァルトにアプローチし、いっさい余分なものを付け加えずにエッセンスを取り出してみせる。
しかも彼のピアノの音はすみずみまで美しく大げさに響かすことがないから、立ち現れてくる音楽にも透明感がただよっている。
いっさいの邪心を捨てた、まさしく古典美溢れるモーツァルトだ。
スマートでクール、だから聴き飽きないモーツァルト演奏であるといえる。
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2008年12月03日
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コルトーはペルルミュテルについてこう言った。
「彼はたいへんピアノ音楽に造詣が深い。リストやラヴェルの、まばゆいばかりに響きわたる作品の演奏にかけては、天下一品である。」と。
ペルルミュテルは、コルトー、カサドシュ亡き後のフランス・ピアノ界を代表する名ピアニストであった。
ペルルミュテルは、ラヴェルに師事し、彼から直接教えを受けたピアニストである。だからただ単にラヴェルの音楽を得意にしているのとは大いに違うわけで、ラヴェル直伝の模範的な演奏をおこなう。
この人には1950年代の前半に録音した、モノーラル録音のラヴェルの「ピアノ曲全集」があり、それも名盤として知られているが、1973年のステレオ録音ではペルルミュテルの華麗で色彩的な音色と軽妙さを失わない響きが、いっそう鮮明に収録されているのが魅力だ。
この演奏は、そうしたフランス人的な感覚と、ラヴェル直伝の解釈に裏付けられたもので、多彩な音色の変化と鮮やかな技巧で、各曲を幻想的に弾きわけている。
長年にわたってラヴェルを弾きこんできた確信と、作品への愛着が感じられる演奏で、70歳近くになってからのものだが、タッチに乱れもなく、ラヴェルの繊細で華麗な世界を忠実に再現している。
繊細に張りめぐらされた音の幕を、細部に至るまで鮮やかに再現する手腕に加えて、爽やかな生気溢れるリズム感とみずみずしい情感を湛えている。
特に「夜のガスパール」は見事で、右手と左手の分離がはっきりとしている「水の精」と、劇的な鐘のあらわしかたのうまい「絞首台」はことにすごい。
トータルな表現として、ラヴェルの音楽の本質をこれほど見事に捉えた演奏は少ない。まさにいぶし銀のような上品さと美しさだ。
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2008年12月02日
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ハイドンと同時代の、フランスのある批評家はこう言った。
「ハイドン氏の宗教音楽はたとえそれから言葉を除いたとしても、見事な音楽だろう」と。
ハイドンの合唱音楽は、音処理の点で特徴がある。
当時隆盛をきわめていたヘンデルのオラトリオの声楽部分の作風が、あくまでも声楽的であるのに対し、ハイドンの手法は徹底して器楽的だった。
それだけに言葉をのぞいたとしても、立派な管弦楽作品でもあるのである。
マリナーの演奏は、まさに、そうした点に重きをおいたもので、この曲の標題音楽的な性格をあまり強調せず、楽曲の構成的な美しさを存分にひき出している。
特に劇的表出、スペクタキュラーな効果を狙わず、極めて穏当な中庸を得た演奏である。
各曲の対比は均質化され、流麗な音の流れの中にハイドンが描かれていく。
オーケストラは終始一貫して古典的な格調の高さを保ち、合唱団も充実しており、決して過度な表現におちいらず、均斉のとれた歌唱をおこなっている。
独唱者も、そうしたマリナーの意図を忠実に把握しており、ことにマティスの端正なうたいかたが光っている。
通奏低音にハープシコードではなく、ピアノの前身の楽器ハンマーフリューゲルを用いているのも、当時の雰囲気を伝えていてこころよい。
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2008年12月01日
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アシュケナージは、ベートーヴェンのピアノ協奏曲全集を3度録音しているが、これは、その2度目のもので、最も普遍性が高い名演。
ベートーヴェン協奏曲全集の中でも、最も優れたディスクであろう。
アシュケナージのタッチは文字通り美しく、安心して身をまかせられる演奏だ。
繊細華麗で、かつ、スケールの大きな表現となっているところが大きな特徴である。
なんともフレッシュなベートーヴェンだ。
第1番は自然で、珠をころがすような美音は彼の独壇場だ。
第2番は落ち着いた風格を加え、第3番は遅めのテンポに大家の芸風が生きている。
第4番の円熟ぶりも見事で、豊かな音楽をいっぱいに溢れさせている。
「皇帝」では宝石のような美音ながら、メリハリの効果を与え、特にフィナーレにおけるウィーン風の8分の6拍子がこれほど生きた演奏は他にない。
メータの指揮も、力強く、また非常にしなやかで、奥行き深く、新しいロマンティシズムともいえる感触を自然に発散させている。
柔らかなウィーン・フィルの音色も素晴らしい。
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ブレンデルは、納得のゆくまで作品を研究した上で、その曲を自分のレパートリーにする人だが、シューベルトとともに、ベートーヴェンのピアノ・ソナタの分析にもすぐれている。
これは、そうした彼の徹底した研究が実を結んだもので、スタイルとしては、シューベルト的なソフトな性格をもっており、きわめて抒情的でロマンティックである。
ことに弱音の部分に魅力があり、響きの美しさとニュアンスのこまやかさはこの人ならではのものだ。
どのソナタの演奏も秀逸だが、特に第30番がきわめて美しく仕上がった演奏である。
ここではブレンデルの特徴がことごとくプラスに作用している。
第1楽章の第2主題、あのアダージョ・エスプレッシーヴォのテーマが終わった後のアルペッジョ(分散和音)や、それに続く珠を転がすようなレシタティーヴが、これほど意味深く響いたことは珍しいが、彼の高音部の音色とルバートが効いているからである。
展開部に入って弱音で第1主題が戻ってくる部分に感じた弾き方も、これこそベートーヴェンが言いたかったことなのだ、と思わせるし、その後のフォルテによる主題再現は、彼の自信に満ちたきらめくばかりの最強音によって、ベートーヴェンの切ないまでの憧れが現実の音になった場合である。
プレスティッシモの第2楽章はいたずらにテンポを速めず、音のからみを丁寧に解きほぐしてゆくので、曲の美しさがよくわかる。
第3楽章は各変奏が瞠目すべき名演だ。
曲にも演奏にも一つとして真実でないものはなく、全曲のどこをとっても音楽の心が絶えず波のようにゆれている。
ブレンデルの指の下で、ベートーヴェンの後期の作品は少しの難解さもみせず、聴く者は作曲者の心と直接結ばれるのである。
第31番はブレンデルが得意とするシューベルト的な、ソフトな表現で、きわめて抒情的かつロマンティックにまとめている。
知的にコントロールされた誇張のない表現と、美しく磨き抜かれた音色を聴くことができる。
第32番もひとつひとつの音色は珠玉のように澄んでおり、バックハウスのような剛直さとは対照的に、表情の柔らかいのが特徴だ。
力強くはじまる第1楽章では、響きのこまやかなニュアンスを大切にしながら、この曲の複雑な音の流れを見事に洗い出している。
抒情的な第2主題の音色は、ブレンデルならではの艶があり、1音1音が生きている。
第2楽章は抒情的な表現のうまい彼の美点が、よくあらわれており、静的な旋律を豊かに歌わせながら、格調の高い演奏をおこなっている。
第29番「ハンマークラヴィーア」は緻密な設計のもとに弾きあげた演奏で、あたかも音による大伽藍を思わせるようだ。
この長大な曲を、最後まで聴き手を飽きさせずに引っ張っていくあたり、大変な力量である。
ピアノ演奏法の研究者として名高いブレンデルの実力が、十全に発揮された演奏だ。
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