2017年12月

2017年12月30日


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スークとパネンカによる「ベートーヴェン/ヴァイオリン・ソナタ」全集は、1969年のレコード・アカデミー賞に輝いた名盤。

2012年にスプラフォンからリイシューされたリマスタリング盤で、音質に磨きがかかったことで、ベートーヴェンの抒情性が更に前面に出た極めて美しい演奏を評価したい。

スークとパネンカの名コンビによるこの演奏は、素晴らしいアンサンブルを聴かせる。

スークのヴァイオリンは、すこぶる繊細で、甘美な音色をもっており、パネンカのピアノも実に安定していて品位が高い。

作曲家の音楽の構築性や哲学的な深み、あるいはドラマティックな力強さという観点から鑑賞するのであれば、彼らより優れたヴァイオリン・ソナタ集は存在する。

例えばスークとほぼ同時代に活躍したオイストラフの演奏を思い出すことができるだろうし、シェリング、ルービンシュタインの選集もあり、またグリュミオー、ハスキル盤は彼らの中では最もロマンティックな演奏かも知れない。

スークはプラハ・ヴァイオリン楽派を継承する流麗な奏法を身上としているし、パネンカもいわゆる美音家である。

2人がその音色を活かす表現に傾倒するのは当然で、いわゆる巨匠型の演奏家ではないが、力量と総合力の高さを持っている。

しかしこのソナタ集が単に美的感覚だけでは捉えられていないことは、第7番ハ短調や第9番『クロイツェル』の劇的な解釈を聴けば納得できるだろう。

また彼らには以前の美音を誇ったヴァイオリニスト達にありがちだった耽美的な古臭さは微塵もなく、むしろ抑制された現代的で新鮮なセンスで曲想を把握し、洗練された趣味と音色で歌い上げていく颯爽とした感覚が魅力で、若い人たちには好まれよう。

第5番『春』では、そうしたスークの持ち味が充分に生かされていて良い出来だし、アンサンブルも緊密で、中でも緩徐楽章でのスークの瑞々しいカンタービレにパネンカの濁りのない澄み切ったピアノの音色が溶け合って聴き手を陶酔させるような表現も巧みだ。

同じチェコ出身のこのピアニストの端正で隅々まで行き届いた潔癖ともいえるピアニズムは称賛したい。

つまり、このコンビは逞しさや情熱よりも、端正な演奏が身上なので、ベートーヴェンの抒情を歌い上げて、清楚な点ではトップ・クラスの演奏だし、ひと味違ったベートーヴェンに接することができる。

1966年から翌67年にかけてプラハのスプラフォン・ドモヴィーナ・スタジオでのセッション録音で音質は極めて良好。

スークはやはり同郷のチェンバリスト、ズザナ・ルージィチコヴァーと組んでモーツァルトのヴァイオリン・ソナタ選集も同スプラフォンからリリースしている。

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classicalmusic at 13:59コメント(0)ベートーヴェンスーク 

2017年12月28日


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ヨゼフ・スークが1970年に録音したバッハの無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ全6曲を収録した2枚組のUHQCDになり、長い間製造中止になっていた音源が日本のリマスタード盤として復活したことを評価したい。

ヴァイオリニストにとってバッハの無伴奏は避けて通れないレパートリーのひとつだが、スークは全曲演奏を一度しかレコーディングしなかったので、彼の唯一のしかも最も充実した壮年期の記録としても貴重なサンプルだ。

この時代のEMIの録音としては比較的ボリュームのあるしっかりした音質で、程好い残響の中に臨場感に富んだ濁りのない清澄なヴァイオリンの音色が収録されている。

これは新規のリマスタリング及びUHQCD化との相乗効果かもしれない。

確かに古いアート・リマスター盤と聴き比べるとかなりの音質の向上が感知される。

スークの解釈は、バッハ演奏の伝統と言える作品の精神性をしっかりとふまえたものだ。

アッカルドのようにことさらヴァイオリンのカンタービレを屈託なく謳歌するようなものではなく、ましてやシェリングのようにバッハの音楽の崇高さを世に知らしめんという高邁な使命感に衝き動かされたものでもない。

しかし彼の演奏には持ち前の美しい音色を犠牲にすることなく、ごく自然体で中庸をわきまえたシンプルさと、ポリフォニーの音楽を一挺のヴァイオリンで精緻に再現するための普遍的な方向性を示したところに特徴がある。

それゆえスケールは決して大きくないが、バロック音楽に造詣の深い彼だけあってヴィブラートの多用や恣意的な感情移入を避けてバッハの対位法をひときわクリアーに再現しようと試みていることが注目される。

それぞれの楽章の性格をしっかりとらえ、格調高いスタイルでバッハの隠されたポリフォニーを紡ぎあげていくスークの演奏には、自由な息吹きと内面的な世界の深さとが表裏一体となって息づいている。

しかも落ち着きのある輝きをもった響きが、バッハの作品の偉大さをいやがうえにも印象づけるのだ。

尚使用楽器についてライナー・ノーツでは言及されていないが、この頃のスークの使用していたヴァイオリンは1710年製のストラディヴァリウス『レスリー・テイト』なので、この録音でも彼がこの名器を弾いていることが想像される。

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classicalmusic at 15:02コメント(0)バッハスーク 

2017年12月26日


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チェコのヴァイオリンの名手ヨゼフ・スーク(1929-2011)がソロを弾いたベルリオーズの2曲のオーケストラル・ワークを収録したディスクで、どちらも充実した管弦楽曲でもある。

スークはまた室内楽においてもしばしばヴィオラのパートにまわったほど、この楽器に愛着を持っていた。

ソロでもブラームスのクラリネット・ソナタのヴィオラ版をパネンカと、そしてバッハのガンバ・ソナタをヴィオラで演奏したものをルージィチコヴァーとの協演でスプラフォンからリリースしている。

この『イタリアのハロルド』でも彼の継承するプラハ・ヴァイオリン楽派の流麗な奏法がヴィオラにも余すところなく示されている。

彼がヴァイオリンを弾く時と同様の薫り立つような音色が官能的で、この曲の文学的なストーリーを追ったものではないかも知れないが、極めて純粋な音楽的解釈だ。

フィッシャー=ディースカウの指揮者としての力量だが、カップリングされたスメターチェクと比べられては流石に分が悪いのは確かで、しかもベルリオーズの作曲技法に凝った華麗で色彩豊かなサウンドを具現するにはいまひとつ至っていないが、この大曲のツボは押さえていてチェコ・フィルも敬意を表して呼応しているというのが事実だろう。

ちなみにこの作品はベルリオーズがバイロンの長編詩『チャイルド・ハロルドの巡礼』にインスピレーションを得たものだが、原作との関連性は稀薄で、作曲者自身のイタリア留学中の体験をベースにしてファンタジーを膨らませた創作性が強く表れている。

それは彼の交響曲『幻想』と良く似ていて、結果的には彼が最も力を注いだ標題音楽の代表作のひとつになった。

パガニーニ発注説の真偽はともかくとして、ヴィオラ奏者の最も重要なレパートリーであることは間違いない。

一方『夢とカプリース』はベルリオーズが自身の歌劇『ベンヴェヌート・チェッリーニ』のテレーザのカヴァティーナをピックアップしてヴァイオリンと管弦楽のためのロマンスとして仕上げた曲だが、協奏曲を1曲も書かなかった彼にとって、『ハロルド』と共にソロ楽器を伴った稀な作品だ。

いずれにしてもソロが超絶技巧を発揮する見せ場やカデンツァはないので、いやが応でも演奏者の音楽性が問われることになる。

ここでもスークの甘美だが決して耽美的にならない抑制を効かせたカンタービレが聴きどころだ。

スメターチェク指揮するプラハ交響楽団のサポートは万全で、ベルリオーズのオーケストレーションの巧妙さを感知させながらスークのソロを引き立てている。

尚彼らはオーケストラ付のヴァイオリンのための一連の小品集を録音していて、スプラフォンからスークのロマンス集としてリリースしている。

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classicalmusic at 15:19コメント(0)ベルリオーズスーク 

2017年12月24日


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ルドルフ・ケンペが指揮したシューベルトの交響曲のレコーディングは第8番ロ短調『未完成』及び第9番ハ長調『ザ・グレイト』の2曲がある。

後者はライヴは別としてセッション録音に関して言えば、この1968年のミュンヘン・フィル以外のオーケストラとの共演ではシュターツカペレ・ドレスデンとの1950年のモノラル録音が存在する。

その間には18年の隔たりがありケンペ自身の解釈にも変化がみられるが、当ディスクが圧倒的に優位に立っているのが音質で、当時1968年のドイツCBSの録音技術の水準の高さが示されている。

広めの音響空間で再生するのであれば鮮明なサウンドが広い音場の中で開放され、ブラス・セクションの迫力も充分で臨場感に溢れている。

また分離状態も極めて良好で両翼型配置のふたつのヴァイオリン・パートも手に取るように明確に聴き分けることができる。

ケンペの解釈は飾り気こそないが、堅牢で堂々たる正面切った力強い演奏で、第2楽章でのシューベルト特有のリズミカルな伴奏に乗った歌心の表出にも不足していない。

尚この音源は数年前にSACD化もされたが、残念ながら既に生産終了している。

一方R.シュトラウスの『メタモルフォーゼン』の方は5年後1973年のシュターツカペレ・ドレスデンとの良好なステレオ録音のリマスタリング盤がワーナーからリリースされている。

室内楽的な静謐な開始と次第に高揚を迎える豊かなダイナミズムが効果的で、先ずそちらの鑑賞をお薦めしたい。

このミュンヘン・フィル盤はより熱っぽくエネルギッシュな演奏だが、曲想に伴う微妙な変化ときめ細かい表現という点では前者に一歩譲っている。

こちらの音源もやはりDSDリマスタリングされたもので、音量のボリュームが上がり高音の伸びも以前のCDに比べると改善がみられる。

ケンペが独CBSに遺した音源のオリジナルLP盤は4枚ほどあり、このCDに収録されている2曲の他にネルソン・フレイレをソロに迎えたシューマン、グリーグ、チャイコフスキーの3曲のピアノ協奏曲とリストの『死の舞踏』、ドヴォルザークの『弦楽セレナーデ』だが、纏まったセット物のCD化は企画されていない。

晩年のケンペはR.シュトラウスとベートーヴェンをEMIに、ブラームスは独バスフに、チューリヒ・トーンハレを指揮したブルックナーはスイスのエクス・リブリス(チューダーからのリリース)に、更には米リーダース・ダイジェストにもドヴォルザークの『新世界』を中心とするCD3枚分の一連のセッション録音を行った。

そのために版権の関係からこれまで単一のセット物としては纏められることがなかったが、2015年にようやっとスクリベンダムが異なったレーベルからの10枚を纏めてリリースした。

他のCBS音源もリマスタリングでの復活を期待したい。

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classicalmusic at 14:03コメント(0)ケンペシューベルト 

2017年12月22日


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3枚のいずれを聴いても素晴らしい演奏だが、中でも注目すべきはドヴォルザークの『新世界』とスラヴ舞曲集、スメタナの『モルダウ』、更にはチャイコフスキーの交響曲第4番及び『ロメオとジュリエット』などは後世に残る名演に数えられるだろう。

2曲の交響曲では曲想を故意に誇張したりデフォームを決してしない正統的な解釈の中に描き出す音響が冴え渡っている。

『ロメオとジュリエット』ではアンチェルのオーケストラへの非凡な統率力が示されているし、『モルダウ』での中間部の清澄な美しさは喩えようがない。

一方ウィーン交響楽団もサヴァリッシュ、クリップスやジュリーニなどの指揮者に鍛えられただけあって、彼らの長所でもある巧みなカンタービレや洗練された趣味でアンチェルの要求に良く呼応している。

ナチスの強制収容所に収容された家族の中では唯一の生還者で、1968年には旧ソヴィエトのプラハへの軍事介入に抵抗してカナダに亡命するという波乱万丈の人生を余儀なくされたチェコの指揮者カレル・アンチェルが、全盛期にウィーン交響楽団を振ったフィリップス音源で、幸い鮮明なステレオ録音で遺されている。

1950年にチェコ・フィルの首席指揮者に就任して以来、アンチェルはスプラフォンにかなりのセッション録音を行っていて、その殆んどがCD化されているが、チェコを去ってからはその実力を充分に発揮する機会にはそれほど恵まれず、晩年はむしろ不遇な健康状態での活動の場を強いられてレコーディングも極端に少ない。

しかし常任指揮者に就任したトロント交響楽団とも170回に及ぶ定期演奏会で着実な評価を得ていただけに65歳での死はあまりにも早かったと言うべきだろう。

この3枚は彼が戦後ウィーンに客演した充実した時期の録音で、同じチェコ出身の指揮者でも前任者クーベリックに優るとも劣らない祖国愛と、不屈の闘志や音楽への情熱をこのアルバムからも充分に感じ取ることができる。

勿論彼の解釈は偏狭的なナショナリズムとは縁のない、常に公明正大で高邁な美学が音楽に反映されていて、もっと多くのクラシック・ファンに聴かれるべき大指揮者だと思う。

尚彼のキャリアについてはスプラフォンからのDVD『我が祖国、プラハの春1968』 に詳しい。

オーストラリア・エロクエンスからのリリースで、このレーベルは版権切れになったユニヴァーサル系の古い音源をリマスタリングして廉価盤で再発しているが、初CD化や廃盤の憂き目にあって入手困難だった掘り出し物もあり、興味深い企画が注目される。

ケースのロゴはデッカになっているが、アンチェルが1958年から翌59年にかけてフィリップスに入れた音質が極めて良好なステレオ録音で、それぞれ個別に販売されていたフォンタナ・レーベルの4枚のLPを纏めている。

切れの良い明瞭な音像と臨場感はフィリップス音源に共通する特徴だ。

アンチェルのウィーンへの客演はその後さまざまな事情から途絶えてしまったので曲数は多くはないが、彼の絶頂期のプロフィールを捉えた貴重なセッションとして価値のあるセットだ。

アンチェルのスプラフォン及びそれ以外の音源については本家の他にもヴェニアスから33枚のボックス・セットもでていて、そのうち2枚は当セットとだぶっている。

オーソドックスなジュエルケースがかさばるが廉価盤では多くは望めないだろう。

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classicalmusic at 13:24コメント(0)アンチェル 

2017年12月20日


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ヘルベルト・ブロムシュテットは既にシュターツカペレ・ドレスデンとのベートーヴェン交響曲全集を完成させていて、このライプツィヒ・ゲヴァントハウスとのセットは彼がここ数年間で成し遂げた2度目の録音になる。

ブロムシュテットは現在90歳でスクロヴァチェフスキ亡き後のクラシック楽壇でも最長老だが、また現役の中では最高峰のベートーヴェン指揮者と言っても過言ではないだろう。

彼は1975年から85年までの10年間はシュターツカペレ・ドレスデンの、そして98年から2005年まではゲヴァントハウス管弦楽団のカペルマイスターに就任していたので、今回の全集も自ら鍛え上げた手兵を見事に統率した演奏がいわゆる客演とは一味も二味も異なった、細部まで練り上げられた緻密さと地に足の着いた安定感を持っている。

確かに個性を前面に出したスリルに満ちた演奏ではないが、テンポは概して快速で、その推進力に生命感が漲っている。

また管弦共にヴィブラートを抑制したピリオド奏法を採用しているために和声の進行も一層明瞭に感知できる。

ライプツィヒがまだ旧東ドイツの都市だった頃のゲヴァントハウスのコンサートでマズアによるベートーヴェンの第8番を聴いたことがある。

洒落っ気のない素朴な音色だったが強力に統率されたパワフルな響きに驚かされた。

その時にベートーヴェンのあるべき演奏の姿を知らされた思いだった。

今では楽員のグローバル化も進み、また音色も随分洗練されているが、新しいこの交響曲全集を聴いても飾り気の少ない重心の低さが如何にもゲヴァントハウスらしい。

前任者クルト・マズアとも全曲録音を行っているが、ブロムシュテット自身も長期間に亘って旧東ドイツのふたつのオーケストラを任された経験から、楽団の持っている伝統的なスタイルを熟知している。

彼はオーケストラの配置にチェロを中央に据えて第2ヴァイオリンを上手に置く両翼型を常套的に採用しているが、これはメンデルスゾーンがゲヴァントハウスのカペルマイスターだった時にその原型が形成されたようだ。

これによってベートーヴェンのオーケストレーションの妙味も明らかにされている。

音質は鮮明で分離状態も良好だが、低音部がかなり豊かに響いているのは録音会場の音響の特質かもしれない。

例えば交響曲第9番第2楽章スケルツォでのティンパニ・ソロの深く重厚な響きには圧倒される。

4人のソリストを合唱団と同列のオーケストラの後ろに配置しているのも特徴的で、声楽の突出を避けたバランス感覚も独自のものがある。

ただしテノールのエルスナーはいくらか影の薄い存在だ。

現在のゲヴァントハウスは1981年にオープンした三代目のコンサート・ホールで、ライプツィヒ歌劇場と並んで新時代を象徴するようなモダンな建築様式によるライプツィヒのクラシックの殿堂になっている。

尚このセットは横からスライドして引き出すカートン・ボックスの中に、それぞれが見開きのダブル・ジャケット4つに5枚のCDを挿入したコレクション仕様で、ブロムシュテットのスナップや演奏会場となったゲヴァントハウス大ホール内部の写真が掲載された独、英、仏語による70ページの充実したブックレットが付いている。

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classicalmusic at 12:56コメント(0)ベートーヴェンブロムシュテット 

2017年12月18日


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この4枚に収録されたデ・サーバタの演奏は、例えばブラームスの交響曲第4番第2楽章における深みのあるリリカルなカンタービレや、ベートーヴェンの『英雄』第2楽章の壮麗なしめやかさに表れている。

彼が引退後最後に公衆の前に現れたのは1957年1月のトスカニーニの葬儀の日で、当日この葬送行進曲が彼の指揮で演奏されたが、CD4でそれに先立つ1946年の同曲を鑑賞できる。

全曲を51分かけた演奏で第2楽章の17分間は最も長いが緻密な音楽設計によって弛緩のない緊張感が貫かれている。

またシベリウスでの沈潜した神秘性と熱狂、コダーイの野太さと狂乱する民族舞踏の敏捷性にも真似のできない彼独自の哲学と手法が示されていて、ベルリン・フィルも彼らの機動力をフルに稼動させて呼応しているのが聴きどころだ。

最後の『ワルキューレの騎行』の閃光が飛び交うような鮮烈なサウンドはステレオ音源で聴くことをイメージすると、その神々しさがのっぴきならないものに思われる。

モーツァルトの『レクイエム』に関してはソリスト4人が個性的なオペラ歌手であったために、過去にはこの演奏が準イタリア・オペラのように評価されたことがあった。

しかし実際にはデ・サーバタによって良く統制され、歌手達も抑制した歌唱とアンサンブルで、確かにイタリア的なモーツァルトだが決して様式から逸脱した音楽ではない。

戦中戦後のイタリアを代表する指揮者ヴィクトル・デ・サーバタ(1892-1967)は、トスカニーニ、セラフィンに続く歴代ミラノ・スカラ座の音楽監督の一人で、戦後はマリア・カラスに代表される大歌手達と共にスカラ座黄金時代を築いた巨匠であった。

残念ながら全盛期に心臓発作で引退を余儀なくされたために遺された音源は少なく、また総てが古いモノラル音源である。

録音条件とその音質の稚拙さを受け入れるならば、彼の極めて精緻でありながら振幅の広いダイナミズムとイタリア人らしいパッショネイトな指揮による、スケールの大きな表現は時代を感じさせないだけの高い音楽性の裏付けが感じられるし、それは後輩のカンテッリやジュリーニにも一脈通じるオリジナリティーと言えるだろう。

彼のオペラ及び宗教曲での名演はなんと言ってもカラス、ディ・ステファノ、ゴッビを迎えたプッチーニの『トスカ』と、シュヴァルツコップ、ドミンゲス、ディ・ステファノ、シエピとのヴェルディのレクイエムだがEMI音源なのでここには収録されていない。

このセットで唯一の声楽曲はチェトラ音源でイタリアのオペラ歌手を起用したモーツァルトのレクイエムになり、その他はオーケストラル・ワークで占められている。

勿論当時からスカラ座の音楽監督はイタリア・オペラに精通しているだけでなく、ベートーヴェンを始めとするゲルマン系の管弦楽曲にも最大限の敬意を払って積極的にレパートリーに取り入れていたので、決して彼らにとっても稀な演目ではなかった。

ライナー・ノーツによればデ・サーバタの両親は第1次世界大戦後イタリアに編入された旧オーストリア領出身で、それは彼のレパートリーにも大きく反映され、スカラ座管弦楽団を率いたベートーヴェン交響曲全曲チクルスも行っていたようだ。

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classicalmusic at 17:20コメント(0)ベートーヴェンブラームス 

2017年12月16日


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先ず、バッハが作曲した規模の大きい宗教曲を集大成したこの16枚と2013年にユニヴァーサル・イタリーからリリースされたバッハ宗教カンタータ集26枚で、カール・リヒターがアルヒーフ・レーベルに遺したバッハの宗教作品の殆んどが一気に揃うことになるので、入門者には最短コースのコレクションに成り得る筈だ。

勿論古い音源はどうしても新規のリマスタリングが欠かせないのでオールド・ファンにとっても再購入の時の有力な選択肢だろう。

ミュンヘン・バッハ管弦楽団は、バイエルン放送響、ミュンヘン・フィル、バイエルン国立管の団員などの精鋭から編成され、なによりも当代のバッハの使徒とでもいうべきリヒターに対する尊敬の念と忠誠心をもっていたと言われている。

リヒターは当時にあって、バッハについて深い学識ある研究者であるとともに、最高のチェンバロ奏者、オルガニストであり指揮者であった。

チェンバロ、オルガンなどの独奏の高次性も並外れており、しかもすぐれた即興性も聴衆を魅了した。

こうした実力ゆえのミュンヘン・バッハ管弦楽団&合唱団の結成であった。

多くのバッハ作品中、その精華が本集で、厳しくも神々しいバッハ解釈である。

1969年、日本でのこのメンバーによる公演があったが、マタイもヨハネもロ短調ミサも集中的に演奏された一大ページェントだった。

この公演自体がいまだに語り草になっているが、リヒターの厳しくも神々しいバッハ解釈を日本に知らしめた衝撃は大きかった。

一致団結しストイックとしか言いようのない敬虔、厳格な音楽づくりは、その後同様な演奏を聴くことを至難としている。

その演奏の均一性、精神的な統一感はいま聴いても非常な驚きがあるだろう。

尚最後のCD11はボーナス盤としてクリスマス・オラトリオのリハーサル及び録音状況が記録されていて、22日間に及んだ録音作業の日々を追って、次第に全曲が出来上がっていく過程を追体験できる興味深いものだ。

他に全収録曲をブルーレイ・オーディオ・ディスク1枚にハイレゾリューション・コピーしたものと、更にDVD4枚が加わっていて、カール・リヒターのバッハに対する殆んど宿命的とも言える演奏活動と共に、在りし日の彼の映像を鑑賞できる、よりコンプリートなセットになっている。

カートン・ボックスは13X14X6cmの存在感のあるしっかりしたコレクション仕様の装丁で、ディスクは作品ごとに独立した白を基調にしたジャケットに収納されている。

ライナー・ノーツではカール・シューマンによるリヒターのキャリアについてのエッセイを皮切りにマタイ受難曲、ヨハネ受難曲、クリスマス・オラトリオ、マニフィカト、ロ短調ミサのそれぞれの始めのページに異なったライターの解説を付け、それに続くドイツ語及びラテン語歌詞に英語対訳が掲載されている。

またCD、DVD、ブルーレイ・オーディオ・ディスクのトラック・リストを対応させた見出しを付けた150ページのブックレットの充実ぶりは特筆される。

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classicalmusic at 19:48コメント(0)バッハリヒター 

2017年12月15日


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イタリア弦楽四重奏団のしなやかで明るい音色と流麗な表現が面目躍如たる名演奏。

ハイドンが弦楽四重奏曲で試みた嬉遊性と芸術性の統合が、彼らの演奏によって理想的に実現されている。

取り組む曲に対する真摯かつ柔軟なアプローチと鍛え上げられたアンサンブル、そして開放感と歌心に溢れた表現が彼らの身上だろう。

まさに豊麗かつ甘美に歌い上げられたハイドンで、いかにもイタリア人好みの演奏になっている。

特に『五度』と『皇帝』の第2楽章はその最たるもので、音楽とは歌うことであると言わんばかりに、一心不乱に演奏している4人の姿が彷彿とさせられるほどだ。

端的に言えば作曲家がこれらの作品に織り込んだ高度な音楽性やテクニックを親しみ易く、しかも飛びっきり美しく聴かせることで、例えば『五度』のような短調で書かれた曲でも、彼らの表現の明るさは際立っているし、常に自然体で屈託のないカンタービレが独特の軽やかさで聴き手に幸福感をもたらしてくれる。

明快で現代性を帯び、しかもイタリアの団体らしく歌の精神に満ちていて、良い出来栄えだ。

また『ひばり』では澄み切った青空をイメージさせる清々しい清涼感が印象的だ。

そうしたことは第1楽章によく表れているが、ここでは遅めのテンポをとりのびのびと歌わせているのである。

しかしそれと同時にがっちりした構成感もあって、歌い崩しているのではなく、あくまでも古典派の様式に則った抑制を効かせた巧みなアンサンブルで曲の纏め方も文句なく上手い。

彼らは1945年結成以来1980年の解散までにモーツァルト、ベートーヴェンそしてブラームスの弦楽四重奏曲全曲録音を中心に数多くの名演奏を遺したが、ハイドンに関してはそれほど録音が多くないのでこの1枚は貴重なコレクションにもなる。

どの曲もお手のものといった感じで、流麗な仕上がりのものになっている。

この曲集では第2楽章でことのほか美しいヴァリエーションが繰り広げられる『皇帝』と更にホフシュテッター作曲の『セレナード』を含めた4曲が収録されているが、『皇帝』のみが1976年でその他の3曲が1965年の録音になる。

ハイドン演奏としての好き嫌いは別として、演奏というものの典型がここに示されているのは、何人も認めざるを得ないだろう。

かつてのフィリップス音源の音質は極めて良好で、弦楽の瑞々しさや切れの良さが明瞭に捉えられている。

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classicalmusic at 01:03コメント(0)ハイドンイタリアSQ 

2017年12月13日


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1997年にEMIからリリースされた13枚の『デニス・ブレインの芸術』は既に廃盤になって久しいが、今回のヴェニアス盤は前者を上回る曲目を収録して、36歳で夭折した彼の多彩なプロフィールを紹介している。

CD18のトラック15及び16はブレインのオルガン演奏だが、どちらも純粋なソロというわけではなくアーノルドの『大大序曲』は冗談音楽フェスティバル『ホフナング音楽祭』での演目としてオーケストラや掃除機に加わって、勿体ぶったパイプ・オルガンがごく僅かに登場する愉快なライヴである。

既に良く知られていたCD13の『水撒きホース協奏曲』と並んでブレインの他の演奏からは想像できない茶目っ気振りが示されている。

一方マスカーニの間奏曲はオペラのスコア通りバックにオルガンを使ったカラヤン、フィルハーモニアとの至ってシリアスなセッションだ。

ただし全収録曲がブレインの演奏ではなく、彼の父でもあり師でもあったオーブリー・ブレイン及び兄弟弟子アラン・シヴィルの演奏も数曲含まれている。

これは編集者のエラーではなく企画に則った、つまりブレインが最も影響を受けた父親と、もう一人の弟子シヴィルの演奏を比較するための収録と思われる。

確かに彼ら3人のホルニストには共通する奏法の特徴がある。

ブレインのソロ、協奏曲や彼が参加したアンサンブルを片っ端から掻き集めた編集だが、データの表記や演奏者名に若干の混乱をきたしている。

例えばCD19のブランデンブルク協奏曲第1番とCD20のモーツァルトのホルン協奏曲第3番は父オーブリーの演奏であることは間違いないだろう。

しかしこのセットも限定生産なのでデータを訂正した再販の可能性は期待できない。

他のヴェニアスのバジェット・ボックス同様ライナー・ノーツはなく、リマスタリングの表示もないが、音質は時代相応といったところでモノラル時代が全盛期だったブレインの演奏集としては多くを望めないし、これだけのレパートリーが一同に会したことは評価したい。

ブレインの奏法の特徴のひとつはヴィブラートをつけない直線的なロングトーンにある。

言ってみれば管楽器の最も基本的なテクニックが演奏にも徹底されているのだが、音程が比類ないほど正確で安定しているために、シンプルな表現の中に冒し難い品位が感じられ、また音楽が決して脆弱にならない。

更にペダルトーンから高音に至るまでの滑らかな音色と、全く難易度を感じさせない余裕からは、まさにホルンの貴公子と呼ぶに相応しい高貴さが醸し出されている。

おそらく彼以上に飾り気のない純粋無垢な音楽性でホルンを聴かせてくれる奏者は現在見出せないのではないだろうか。

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classicalmusic at 13:18コメント(0)モーツァルトR・シュトラウス 

2017年12月11日


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個々数年でルドルフ・ケンペのバジェット・ボックスが様々なレーベルからリリースされていて、熱心なコレクターだけでなく入門者のための選択肢は多いのだが、曲目のだぶりを考慮してコレクションする時に欠かせないのがこのセットだろう。

CDの枚数で一番多いのはヴェニアスからの20枚組だが、内容を見るとEMI系音源に集中していてテスタメント盤とも多くの曲にだぶりがある。

そのテスタメントからの12枚はリマスタリング盤で音質も良く、彼の幅広いレパートリーが収録されたコレクターにとっては欠かせない価値の高いセットだが、版権の異なるブラームスやブルックナーを含んでいない。

同系統EMIのイコン・シリーズ10枚はオペラからの抜粋を中途半端に加えたために、コレクションとしてはどっちつかずの散漫な印象があって、あくまでも二次的な選択肢でしかないだろう。

ケンペのオペラや声楽曲への手腕は疑いないので個別に全曲盤を聴くことをお薦めしたい。

こうした中でスクリベンダムの10枚は大規模なオーケストラル・ワークに絞って、他のレーベルでは聴くことのできないレパートリーでケンペの管弦楽の絶妙なミキシングや、高踏的だが常に人間味に溢れる暖かさを感じさせる演奏を堪能できるセットなのだが、ミュンヘン・フィルとのブラームスの『ハイドンの主題による変奏曲』が選曲から外されている。

解決策はドキュメンツ(メンブラン)からの10枚組の購入で、カップリングのクレンペラーのベートーヴェン・ライヴは音質が悪くそれほど魅力的ではないが、ケンペのブラームスは音質も良くコストパフォーマンスも高いので最も妥当な選択と思える。

同じスクリベンダムの3枚組もあったが既に廃盤の憂き目に遭っていてプレミアム価格を覚悟しなければならない。

しかしケンペは他のオーケストラともこの曲を録音しているので、例えばバンベルク響とのUHQCD盤やベルリン・フィルとのテスタメント盤のそれぞれが現行で有力な選択肢になる。

後者にはモノラルながら悲劇的序曲も加わっている。

音質については幸い総てが良好なステレオ録音で、リマスタリングの効果もあってワイドな音響空間と分離状態の良いオーケストラのサウンドが再生される。

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classicalmusic at 14:44コメント(0)ケンペ 

2017年12月09日


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コンヴィチュニーの演奏集でボックス化されたものには、ベルリン・クラシックス系エーデル・レーベルからの『フランツ・コンヴィチュニーの芸術』全2巻計22枚がある。

第1集は既にプレミアム価格で販売されているので、新規に購入されたい方には今回のスクリベンダム盤をお薦めしたい。

過去にリリースされたステレオ盤13枚とモノラル盤7枚を纏めたコレクター向けのリイシューになり、例によってライナー・ノーツを割愛した完全節約版になる。

彼の代表的なベートーヴェン、シューマンの交響曲全曲ステレオ録音やブルックナーの3曲の交響曲などオペラを除いたオーケストラル・ワークが網羅されたリマスター盤なので、コストパフォーマンス的にもかなりリーズナブルなセットと言えるだろう。

少なくとも1959年からは旧東独ドイツ・シャルプラッテンでもステレオ録音が開始されたようで、このセットでも59年のショスタコーヴィチだけはモノラルだが同年のベートーヴェンは幸い総てステレオ録音だ。

ちなみにここに組み込まれなかったブルックナーの第7番は、前述のエーデルからの第2巻に擬似ステレオ盤で加わっている。

このセットにはグローバル化の進んだ現在では聴けなくなってしまった旧東ドイツの質実剛健なサウンドの記録が残されている。

コンヴィチュニー円熟期の演奏活動の本拠地はまさに東側のオーケストラ(ゲヴァントハウスやシュターツカペレ・ドレスデン)で、ベルリン・フィルやウィーン・フィルのような洗練されたスター・プレイヤーの音色やテクニックを駆使したパフォーマンスとは一線を画した、簡素だがそれだけにダイレクトでしかも柔軟な力強さが随所に漲っている。

アンサンブルもコンヴィチュニーによって非常に良く統制され、骨太で堅牢な音楽が作り上げられている。

特に作品の構造やオーケストレーションの醍醐味が問われるドイツ物は彼らの最も得意とするレパートリーであった。

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classicalmusic at 14:50コメント(0)シューマンベートーヴェン 

2017年12月07日


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ヴァーツラフ・スメターチェク(1906-86)は、1942年から72年の長期間に亘ってプラハ交響楽団の首席指揮者だったが、かつてはチェコ・フィルハーモニーのオーボエ奏者だったこともあり、彼が古巣に帰っての最後の客演がこの『我が祖国』になった。

このスプラフォン音源は日本でも独自のリマスタリング盤がリリースされているが、マスター自体が極めて良質なステレオ・ディジタル録音であるためにダイレクトなサウンドが活かされたスプラフォン盤での鑑賞を先ずお薦めしたい。

確かに高音は非常に鮮明で奥行きを感知させる分離状態も良好だが中低音にいま少し厚みが欲しい。

また音量レベルがやや低くボリュームを上げて再生することが望ましいが、音量をアップしても音質に破綻はない。

ケース裏面に表記されているように、この音源はチェコ・スプラフォンが単独で行った最初のPCMディジタル録音で、エンジニア達がまだ技術的な試行錯誤を重ねていた時代と、あくまでもLPレコード用だったことを考慮すれば当時のハイテクが反映された歴史的録音であることには違いない。

スメタナの連作交響詩『我が祖国』は哀愁を帯びた親しみ易いメロディーと美しい抒情性からどうしても第2曲「モルダウ」に注意が向けられる。

スメターチェクの演奏の重心は後半のフス戦争での信徒達の果敢な戦いとチェコの栄光が高らかに歌い上げられる「ターボル」と「ブラニーク」に置かれていて、他の部分は終曲に向かって収斂していくクライマックスを築くためのエレメントのように聴こえてくる。

この作品はチェコ・フィルによってその伝統的なスピリットが受け継がれながら毎年『プラハの春音楽祭』のオープニングに常に演奏され続けてきた。

スメターチェク盤でも例外なく強い印象を残しているのは、彼らが戦後置かれた旧ソヴィエトの圧政に対する祖国愛で、オーケストラの団員達はそこに隠された強い情熱を音楽に託して表現していることがひしひしと伝わってくる。

1972年4月に東京青山タワー・ホールで世界初のPCMディジタル方式による録音が行われたが、その時の演奏はスメタナ弦楽四重奏団によるモーツァルトの2曲の弦楽四重奏曲だったので、その時点から既に日本コロムビアとチェコ・スプラフォンの共同制作が開始されていたことになる。

6年後には旧東独ドイツ・シャルプラッテンも参入していよいよオーケストラル・ワークのディジタル録音が始まるが、1980年に新機材を導入したプラハのルドルフィヌム・ドヴォルザーク・ホールでのチェコ初のディジタル録音がこの『我が祖国』だ。

しかしCDの登場までには更に2年を待たなければならなかった。

この音源がCD化されたのは再生機器の普及という事情もあって1994年のことになる。

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classicalmusic at 19:00コメント(0)スメタナ 

2017年12月05日


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オランダの古楽学者でピリオド鍵盤楽器奏者グスタフ・レオンハルト(1928-2012)の功績は、古楽器によるバロック音楽が演奏されていた当時の奏法を能う限り忠実に再現するパイオニアとして、またいわゆるピリオド・アンサンブルの基礎を築いたことである。

彼の楽理的解釈に基いた頑固なまでのオリジナリティーへの追究だけでなく、一方でその革新的で自在に模索された音楽観は、特にネーデルランドでブリュッヘンやクイケン兄弟などの多くの後継者を育てることにもなった。

バロック音楽復興黎明期に爆発的に流行したイ・ムジチ合奏団に代表されるモダン楽器での演奏とは常に一線を画した再現は、やがてヨーロッパだけでなくアメリカやカナダにも根を下ろすことになる。

広く一般に鑑賞されるようになるには時間を要したことは確かだし、その後モダン・バロックに鮮やかに取って代わるピリオド・アンサンブル隆盛期の到来は当時としては全くイメージできなかったに違いない。

オルガンは教会の中で絶えることなくその存在を維持し続けたがチェンバロに関しては、オリジナル楽器は博物館を飾る調度品に成り下がっていたし、それを修復できる専門職人も少なく、途絶えてしまったピリオド調律や奏法なども教師から教わるというよりはレオンハルト自身が模索しなければならなかったことが想像される。

そうした研究の蓄積が今日のスタンダードな古楽奏法として広く定着していることは言うまでもない。

このセットでは彼の生涯を通じて演奏されたバッハのチェンバロ、オルガン用の作品に加えて、使用楽器については明記されていないが何種類かのヒストリカル・チェンバロを弾き分けたドイツ、イギリス、フランス及びイタリアの作曲家のアルバムを纏めて、異なったそれぞれの趣味の特徴を際立たせている。

尚後半の6枚はカンタータ、協奏曲、アンサンブル集からのセレクションで、最後の1枚ではクイケン・トリオと組んだテレマンのパリ四重奏曲6曲を収録しているが、これは過去にリリースされた3枚組のテレマン室内楽作品集の後半2枚を1枚に圧縮したものだ。

録音状態は良好で収録曲目は各ジャケット裏面でしか確認できないが、20ページほどの簡易なライナー・ノーツには2007年に行われた興味深いインタビューが掲載されている。

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classicalmusic at 19:08コメント(0)レオンハルト 

2017年12月03日


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カウンター・テナーとして現在最も充実した時期を迎えているフィリップ・ジャルスキーは、バロック・オペラ全曲盤でも多くの主役を歌ってその美声に託された音楽性の豊かさと、確実なアジリタのテクニックを披露している。

今回のエラートからのヘンデル・アルバムでも期待通りのカンタービレに溢れた歌唱を堪能できる。

ピリオド演奏隆盛の近年ではカウンター・テナーも様々なタイプの歌手が活躍していて鑑賞のための選択肢も多いが、無理のない柔らかな美声を駆使して表現するジャルスキーの抒情の世界は他の追随を許さないものがある。

また彼自身がオーガナイズするピリオド・アンサンブル・アルタセルセのサポートも一際冴え渡っている。

彼らは2002年にパリのパレ・ロワイヤルでデビューを飾ったが、メンバーはそれ以前からヨーロッパを中心に演奏活動をしていた古楽奏者だけに、歌に寄り添ってある時は流麗に、またある時はドラマティックな背景を作り出す心強い共演者だ。

ヘンデルはイタリア滞在時代に会得したリリカルなメロディー・ラインとアクロバティックな超絶技巧によるナポリ派オペラの作法を踏襲して、カストラート歌手達の黄金期最後を飾るオペラで名声を得た。

その後ヘンデルは文学的要素の希薄なイタリア・オペラへの筆を追ってしまうのだが、その意味でカウンター・テナーにとってヘンデルの劇場作品は避けて通れない試金石だろう。

ナポリ出身でヘンデルのオペラも初演したファリネッリに象徴される芸術至上主義の徒花とも言われたカストラートは、磨き抜かれた美声とおよそ人間技とは思えないほどの高度なテクニックで聴衆を魅了し驚嘆させた。

そうした彼らの演奏を髣髴とさせるのがジャルスキーの歌唱で、勿論彼の演奏には歌唱を支える確実な音楽性があり、とりわけリリックなシーンでの表現力の巧さは特筆される。

ちなみに彼はファリネッリに捧げた1枚もリリースしている。

録音は今年2017年2月21日から3月2日にかけてパリのノートル=ダム・デュ・リバン教会で行われ、豊かな残響を感知させながらクリアーで分離状態、バランスともに優れた瑞々しい音質が特徴だ。

38ページほどのライナー・ノーツには曲目及び録音データの他に今回このアルバムの収録に参加したアルタセルセの20名のメンバーが明記されている。

また収録曲総てのアリアはイタリア語歌詞に英、仏、独語の対訳付。

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classicalmusic at 15:13コメント(0)ヘンデル 

2017年12月01日


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アンドレ・ナヴァラは1951年にプラハの春音楽祭で華やかなデビューを飾った後、60年代までプラハにおいて当時を代表するチェコの音楽家やチェコ・フィルなど当地のオーケストラ、アンサンブルと多くの協演をしている。

このセットに収められた5枚はナヴァラがプラハ・スプラフォンに遺した全音源で、西側の大手レコード・メーカーとの契約に恵まれなかった彼には同時代のチェリストに比較して正規録音がそれほど多くないが、実力派の彼の力量が充分に発揮された演奏集としてオールド・ファンのみならずチェロを愛する方には聴き逃せないセットだ。

仏フォンダメンタから昨年リリースされたナヴァラ協会のオフィシャル・エディションの6枚組とはカレル・アンチェル及びヨゼフ・スークと協演したCD2枚分の曲目がだぶっているが、このセットではナヴァラの室内楽への情熱とアンサンブルの腕前を堪能できるのが特徴である。

CD3の後半からCD5までがバロックから20世紀に至る作曲家のヴァイオリンとのデュエット、チェロ・ソナタやチェロのための小品に当てられている。

ヴァイオリンとのデュエット集で協演しているのがヨゼフ・スークで、CD4にコダーイ、オネゲル及びマルティヌーによる4曲が纏められているが、これらは数年前に同スプラフォンからリリースされたスーク早期レコーディング集にも収録されていた名演になる。

いずれの作品も録音が少なく、またコンサートでも滅多に採り上げられないが、オーケストラを髣髴とさせるような豊かなダイナミズムだけでなく音楽的にも特有の深みを持っている。

ソナタ集ではチェコのピアニスト、ホレチェクの伴奏でのブラームス、プロコフィエフ、ベートーヴェンが素朴ながらストレートで豪快な奏法で如何にもナヴァラらしい。

またやや音質は劣るがケー=デルヴロワ、ボッケリーニ及びラヴェルはナヴァラの数少ない室内楽録音のサンプルで、ピアノはパネンカやハーラの師でもあったフランティシェク・マクシアーンの貴重なサポートで聴くことができる。

カレル・アンチェル、チェコ・フィルとのブラームスの二重協奏曲には彼らの典型的な演奏スタイルが表れている。

スーク、ナヴァラのしなやかだが鋼のようなデュエットにアンチェルの気迫のこもったスケールの大きな演奏が聴きどころで幸い良好なステレオ録音で遺されている。

アンチェルはソヴィエトのプラハへの軍事介入に抵抗して68年にカナダに亡命し、チェコ・フィルの音楽監督も辞任してしまうので、その意味でも貴重な録音に違いない。

アンチェルとはシューマン、ブロッホ、レスピーギ及びプロコフィエフでもパッショネイトな演奏を繰り広げているが、特にブロッホの『シェロモ』では多彩なオーケストレーションがアンチェルによって絶妙に引き出されている。

総てオリジナル音源からのリマスタリングで、仏フォンダメンタに比較して音量ボリュームはやや低いが音質は柔らかく繊細に仕上げられている。

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classicalmusic at 18:40コメント(0)スークブラームス 
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classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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