2018年07月

2018年07月19日


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このセットでは先ずバレエ組曲『三角帽子』をデ・ブルゴス、デ・ロス・アンへレス、フィルハーモニア管弦楽団の名演で聴けるのが嬉しい。

彼らの演奏にはラテン気質特有の明るさが漲っていて、デ・ファリャがこの曲に盛り込んだエキゾチックな曲想を遺憾なく表現している。

指揮者フリューベック・デ・ブルゴスは以前コンサートで何回か聴いたことがあり、その折にやはりデ・ファリャの作品も幾つか取り上げていた。

彼は既にこの作曲家のオーケストラル・ワーク集を完成させていて、言ってみればデ・ファリャは彼にとっては十八番のひとつだ。

デ・ブルゴスのファミリーはドイツ系だが、スペイン生まれのスペイン育ちだけあって、特にこの組曲の終曲「ホタ」の盛り上げ方、血の騒ぐような民族音楽的な燃焼度の高さは流石だ。

またカタルーニャ出身の名ソプラノ、ヴィクトリア・デ・ロス・アンへレスもこの頃全盛期で、情熱的なだけでなく仄かな妖艶さとチャーミングさを併せ持っている。

こうした民族色を前面に出した曲でも決して品格を失うことがない歌唱は万全だ。

このセットには幸い彼女の歌う『恋は魔術師』、『七つのスペイン民謡』、『プシケ』、『コルドバのソネット』も収録されているが、その表現の自然さ、ニュアンスの巧みさ、真似のできない歌いまわしや高音の美しさなどが堪能できる。

2曲目はカルロ・マリア・ジュリーニ指揮、上記のメンバーによるもうひとつの組曲『恋は魔術師』で、これもまたフラメンコを取り入れたアンダルシア風の曲趣が支配的だが、ジュリーニはデ・ブルゴスとは全く異なったアプローチで曲作りをしている。

冷静な譜読みできめ細かいダイナミクスの変化とオーケストレーションの特徴を丁寧に再現して民族的な熱狂は後退している。

中でも『火祭りの踊り』は映画『カーネギー・ホール』でのルービンシュタインのピアノ演奏で名声を上げた曲だが、ジュリーニはしっかりしたテンポ設定でむやみに走らず、緻密な音響設計を試みているようだ。

尚このセットではその他に『ハープシコードと五つの楽器の為の協奏曲』がゴンサロ・ソリアーノのハープシコード、ミシェル・デボストのフルート演奏で収められている。

20世紀に生きたデ・ファリャの新古典主義的な傾向を示す作品として興味深い。

録音は総て1960年代のものだが、音質は極めて良好。

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classicalmusic at 04:24コメント(0)ジュリーニ 

2018年07月16日


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往年の名ソプラノ、ヴィクトリア・デ・ロス・アンへレスをクリュイタンス、ミュンシュ及びプレートルがサポートしたフランスの作曲家の4つの作品を収録したアルバムで、昨年プラガ・ディジタルスからハイブリッドSACD盤としてリリースされた。

彼女の声には特有の陰翳があってそれ自体魅力的な美声だが、また天性の閃きを感じさせる驚くべき表現力がこれらの作品の核心を捉えている。

ドビュッシーの『選ばれし乙女』では清楚で可憐な歌唱が超現実的な雰囲気の中に表現されていて、それは彼女の遺した名唱メリザンドに共通している。

一方フォーレの『レクイエム』ではおよそ宗教曲には縁がないと思われる色香までも漂わせている。

筆者はこのレクイエムをこれだけ甘美に歌った歌手を知らない。

そこには死という避けて通れない宿命が、恐怖を抱かせる現象ではなくあたかも母親の胸の中に再び抱かれるような安らぎとして歌われている。

父を亡くしたフォーレ自身にもそうした思いがあったのだろう。

クリュイタンスの指揮はこの作品のもう一人のソロ、フィッシャー=ディースカウと共に極めて精緻なオーケストレーションの再現で天上的な、しかし人間性に溢れた温もりの中にフォーレの世界を描き出している。

音質は時代相応と言ったところだが、リマスタリングの効果で解像度が増して従来盤より臨場感を高めている。

彼女のエスプリと情熱の発露になっているのがラヴェルの2曲で、カンタービレとレチタティーヴォ風の語り口調が絶妙な対比の中に置かれ、詩と音楽の自然で理想的な融合を感じさせる。

ここではまた背景を演出するプレートル、パリ音楽院の気の利いた軽妙洒脱なオーケストラが彼女の歌唱を一層引き立てている。

このディスクのミステリーが『シェエラザード』で、2曲目からクロード・モントゥーのオブリガート・フルートが加わるが、ここでは何故かモノラル音源が使われていてシルキーなモントゥーの音色も曇ってしまっているのが惜しまれるが、オリジナル音源は歴としたステレオ録音だ。

それに反して『5つのギリシャ民謡』は音質も格段に良くSACD化によって、紺碧の空と澄み切った海を髣髴とさせる彼女の屈託のない才気煥発な歌唱が冴え渡っている。

ジェラルド・ムーアが引退表明をしたコンサートの時、伴奏者としての立場から最も優れた歌手として呼んだのがシュヴァルツコップ、フィッシャー=ディースカウと彼女だった。

ムーアもそれだけ彼女の歌唱の高い芸術性を評価していたことになる。

他の二人がゲルマン系の作品の大御所だったのに対してデ・ロス・アンへレスは驚異的なレパートリーを誇っていて、その演奏活動はお国物のサルスエラやスペイン歌曲、イタリア、フランス・オペラからドイツ物まで全くボーダーラインを感じさせなかったし、またコンサートのアンコールではギターを持ち出して弾き歌いする気さくな性格も持っていた。

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classicalmusic at 23:53コメント(0)フォーレクリュイタンス 

2018年07月15日


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尽きることのない奔流を感じさせる名演。

演奏家としては最晩年にあったアルトゥール・ルービンシュタインのリーダーシップがフルニエ、シェリングとの自由闊達な表現と阿吽の呼吸とも言うべき絶妙な合わせを成功させた演奏である。

ルービンシュタイン最晩年の滋味あふれるピアノが、清新なシェリングのヴァイオリン、甘やかなフルニエのチェロに寄り添い、ドイツ・ロマン派の最高峰のピアノ三重奏曲6曲に極上の名演を成し遂げている。

音楽家の質自体が高くなっているが故にかえって演奏が小粒に見えてくる現代にあって、こうしたレジェンドスターの大家3人が単なる一時的な協演ではなく本格的に取り組む企画は将来にも滅多に望めるものではないだろう。

個性的な三者それぞれの歌い口の上手さに加えて、巧みな旋律の受け渡しや時にはオーケストラを髣髴とさせるような豪快さなど、アンサンブルの総てのテクニックとその醍醐味が示されている。

ここで表現されているのは中庸の美や老境の渋さというようなものではなく、意外かも知れないが奔放かつドラマティックなブラームス、シューベルト及びシューマンで、それが彼らの円熟期に録音されたことも幸いだった。

いずれにしてもトリオの主導権を握っているのが常にルービンシュタインであることも注目される。

ブラームスとシューマンが1972年、シューベルトが74年にジュネーヴのヴィクトリア・ホールで収録された音源で、ルービンシュタイン85歳から87歳にかけてのトリオだが、その演奏からは枯淡の境地も懐古趣味も感じられない。

特にシューベルトでは朗々として未来に向かって進むような逞しい若々しさに満ちている一方で、成熟したアンサンブル特有の比類ない合わせ技にも不足していない。

シェリングとフルニエはケンプと組んだベートーヴェンのピアノ三重奏曲集でこの時代の決定盤と言うに相応しい録音を遺している。

またルービンシュタインとシェリングはベートーヴェン及びブラームスのヴァイオリン・ソナタ集でも素晴らしいデュエットがある。

こうした気心の知れたソリスト同士が創造する音楽には我を抑制した協調性が滲み出ているのも事実だが、ブラームスでの厳格で隙のない対位法の再現にも彼らの技量が冴えているし、シューマンでは彼の複雑な心理描写よりも、むしろ清冽で瑞々しい曲想が前面に出ている。

CD3枚分の音源がひとつのセットに纏められたのはこの日本盤だけだが、50年にもなろうとする古い音源にも拘らずリマスタリングされた音質は極めて鮮明で、ホールの豊かな音響の中での三者間の位置関係や個性的な音色が良く捉えられている。

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classicalmusic at 00:21コメント(0)シューベルトルービンシュタイン 

2018年07月12日


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5年前にユニヴァーサル・イタリーからリリースされたカール・リヒター、ミュンヘン・バッハ管弦楽団によるバッハの宗教カンタータ集は彼が録音した全75曲をバジェット価格で纏めた画期的な企画だったが、今回音質をグレードアップさせた2枚のブルーレイ・オーディオに圧縮されて本家からの再発になった。

ディスクの形態では進歩型の優れた音質を誇るメディアにリニューアルされたことを歓迎したい。

こちらも全曲歌詞対訳付だが僅か2枚に75曲を収録したところも魅力で、昨年リリースされた2曲の受難曲、ロ短調ミサ、クリスマス・オラトリオ及びマニフィカトを全曲収録したブルーレイ1枚とDVD4枚を伴ったセットと合わせると、ライヴは別としてリヒターがステレオ録音したバッハの宗教曲が高音質ディスクで網羅されることになる。

レギュラー・フォーマット盤と聴き比べてみたが第1曲目からその音質の違いは明らかに感知できる。

先ず低音から高音までのバランスが改善され一部の音域の突出がなくなり、鮮明な音像が得られると共に、全オーケストラとコーラスが総奏の時にひとつの音の塊りになることが避けられている。

これはDSDリマスタリングの精緻さとブルーレイ盤の収容能力の余裕から来るものだろう。

雑味も払拭されてよりクリアーな音質が得られている。

専用機器の普及状況に合わせてのコンビネーションだと思うが、最近ブルーレイ・オーディオ盤と従来のCDを抱き合わせにしてリリースするケースが増えている。

これはコレクションのだぶりとマテリアルの節約のために賛成できないので、今回の企画は評価したい。

ハードカバーのディジタル・パック仕様で厚みは2.8cmほどあり、綴じ込みのブックレットは255ページで、全曲歌詞英語対訳付で前回より見易い上質紙に余裕を持ったスペースで掲載されている。

最後に曲名アルファベット順の索引が付いていて、ディスク・ナンバー、トラック、トラック・リスティング及びテキストのページが明記され鑑賞の便宜が図られている。

イメージ欄の写真の通りややレトロ調でシックなデザインは、スクリーンに映し出されるトラック・リストのバックにも共通しているが装丁自体はしっかりしている。

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classicalmusic at 14:39コメント(0)バッハリヒター 

2018年07月10日


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ポール・デュカスは、遺された作品がごく少ないので音楽史の上でも同時代の他の作曲家の中に埋没しがちで、際物扱いされることが多いが、彼の曲を注意深く聴いていくと独自の音楽語法を持っていたことが理解できる。

その代表作が交響詩『魔法使いの弟子』だ。

この曲はゲーテの詩にインスピレーションを受けて音楽化された作品で、ウォルト・ディズニーが1940年に制作した、クラシック音楽をベースにした一連のアニメーション映画『ファンタジア』の中に組み込まれた。

実際にはストコフスキーによる編曲版を使っていて、動画ではミッキー・マウスが魔法使いの弟子を演じているために、それ以来この曲は一挙に大衆化したが、デュカスの原曲も現在に至るまで根強い人気がある。

オーケストレーションが精緻で、幻想的で巧みな情景描写だけでなく、登場人物の心理描写も見事で、こうした彼の手法は同時代のリヒャルト・シュトラウスにも通じるものがあるし、ラヴェルにも影響を与えたことは確実だ。

演奏はミシェル・プラッソン指揮、トゥールーズ・カピトル管弦楽団で、1995年の録音で演奏内容、音質ともに高水準でお勧めできる。

デュカスがこの種の作品を多く残さなかったのは残念だが、このセットでは30代の大作、交響曲ハ長調をジャン・マルティノン指揮、フランス国立放送管弦楽団の演奏で聴くことができる。

1972年のセッションで、マルティノンは当時ドビュッシー、ラヴェル、オネゲル、イベールなどの自国の作曲家の作品に精力的に取り組んでいた時期でもあり、その情熱がこのセッションにも感じられるし、オーケストラもよく統率され、彼らのフランスものに対する強みを充分に発揮している。

急、緩、急の三楽章構成はセザール・フランクの交響曲から着想を得たと言われているが、オーケストレーションの色彩感や軽快で屈託の無い曲想はサン・サーンスからの影響だろう。

哲学的な深みはないが、疾走するような爽快感に魅力がある。

このディスクには同じメンバーでオペラ『アリアーヌと青髭』から第三幕への序奏も加わっている。

その他の曲としてはピアノ・ソナタ変ホ短調をジョン・オグドンのピアノで、また詩人ピエル・ド・ロンサールの生誕400年を機会に作曲された、彼のソネットに基づく短い歌曲『アムール』はカウンター・テナー、フィリップ・ジャルスキ、ジェローム・デュクロの演奏で、またホルンとピアノのための『ヴィラネル』はデニス・ブレイン、ジェラルド・ムーアの名演を入れて欲しかったが、ここではマイケル・トンプソン、フィリップ・フォークのものが収録されている。

尚廉価盤の宿命でライナー・ノーツは最小限の解説に止めてあって充分とは言えない。

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classicalmusic at 00:14コメント(0)マルティノン 

2018年07月08日


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首席指揮者時代のブロムシュテット、シュターツカペレ・ドレスデンによるモーツァルト協奏曲集で、1973年にルカ教会で収録されたやや古い音源だが、新規のリマスタリングとUHQCD化によって鮮やかな音質が甦っている。

このディスクに収録された3曲の協奏曲とフルートと管弦楽のためのアンダンテのソロ・パートはいずれもシュターツカペレの首席奏者だ。

優れたオーケストラでは団員一人一人が一家言持ったソリストであり、気張らないコンサートでは著名な演奏家を外部から呼ばなくても仲間内でソロをカバーできるものである。

そうしたインティメイトな雰囲気の中で行われたセッションが当アルバムだ。

ヨハネス・ヴァルターのフルートを実際に聴いたことはないが、最近聴いた現在のシュターツカペレ・ドレスデンのフルート奏者の音色がこの録音と極めて似ていることに驚いた。

彼らはグローバル化が進んで個性を失いつつあるヨーロッパのオーケストラの中でも、かなり頑固なスタイルと音色を維持している。

ヴァルターは名人芸を聞こえよがしにアピールするタイプではないし、音色は輝かしくも耽美的でもないので、目の醒めるようなテクニックや甘美なソロを望む人には期待外れだろう。

しかしヴァルターの奏法が彼らの典型であることは認めざるを得ない。

クルト・マーンのオーボエもやや太く硬質な音色だが真摯な演奏にブロムシュテットのメリハリのあるサポートがひときわ精彩を加えている。

モーツァルトが音楽の基本とも言われるのは、彼の作品には他のあらゆる作曲家の作品に応用できる普遍的な音楽の表現力やテクニックの基本が要求されるからだ。

とは言え、彼ら全員がモーツァルトのオペラ上演でも鍛えられたゼンパーオーパーのオーケストラであることも無視できない。

シュターツカペレ・ドレスデンはやはりブロムシュテットの指揮で首席ホルン奏者ペーター・ダムとモーツァルトのホルン協奏曲を中心とする数多くの協演を残している。

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classicalmusic at 00:12コメント(0)モーツァルトブロムシュテット 

2018年07月06日


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ワーナー20世紀クラシックス・シリーズの2枚組セットで、このレスピーギ編ではムーティ、フィラデルフィアのコンビによる『ローマ三部作』を圧倒的な名演としてお薦めしたい。

この演奏についてのレビューは既にシングル盤の方に投稿したので、興味のある方はそちらを参考にされたい。

その他の曲目はシェリーの詩によるメゾ・ソプラノとオーケストラのためのふたつの歌曲『日没』と『ラ・センシティーヴァ』が収められている。

前者はクリスティーネ・ライスのソロでアントニオ・パッパーノ指揮、サンタ・チェチーリア国立アカデミー管弦楽団、後者はジャネット・ベイカーのソロ、リチャード・ヒッコクス指揮、シティ・オヴ・ロンドン・シンフォニアの演奏で、欲を言えばベイカーのイタリア語の発音がいまひとつ不明瞭なのが残念だ。

他のオーケストラル・ワークとしては『鳥』及び『ボッティチェッリ三部作』をネヴィル・マリナー指揮、アカデミー室内の優れた演奏で聴くことができる。

前者はラモーを始めとするバロック時代の作曲家のクラヴサンやリュートのための作品からのアレンジで、四種類の鳥の鳴き声や姿態を描写している。

後者はルネサンスの巨匠の絵画『春』、『東方の三賢人の礼拝』そして『ヴィーナスの誕生』を音楽でイメージしたものとして興味深い。

『春』では軽快なルネサンスの舞踏曲を取り入れた清々しい花の季節の雰囲気をマリナーは小気味良いリズムと鮮やかな弦楽で描き、『三賢人』では東洋風のエレメントと教会旋法の扱いにも手馴れている。

また終曲では漣に乗って静かに進む貝殻の上の神々しいばかりのヴィーナスの姿を映像のように仕上げている。

レスピーギは20世紀きっての標題音楽の大家であり、あらゆる事象を音楽に写し取った作曲家だった。

しかもそれは聴くものにとって常に平明であり、難解な理論を振りかざすこともなかった。

また彼は古い音楽を独自の手法で蘇らせ、昔ながらの親しみ易い曲趣を随所に取り入れた。

彼は真の意味でのクラシック音楽の大衆化を願っていたと思うし、その最も効果的な方法を駆使して創られたのがこうした作品である筈だ。

それは絵画や映画などのジャンルとも密接に結び付いた、伝統的でありながらも新しい時代の標題音楽への試みと言えるのではないだろうか。

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classicalmusic at 00:03コメント(0)レスピーギムーティ 

2018年07月04日


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この2枚組のUHQCDにはジャン・マルティノン指揮、フランス国立放送管弦楽団によるドビュッシーのオーケストラル・ワーク集が収録されていて、それらは現在に至るまでSACD化を含む再販を繰り返している名盤の誉れの高いものだ。

それは丁度クリュイタンスがラヴェルで遺した業績にも比べられるものだが、惜しむらくはクリュイタンスのドビュッシーは音源が少なく、その渇を癒して余りあるのがマルティノンが精力的に録音した一連のドビュッシーになる。

彼が首席指揮者としては最後のピリオドになるフランス国立放送管弦楽団は、非常に洗練された暖色系の音色と個性的なソロでこの時代のフランスのオーケストラの典型でもあった。

ここでも『牧神の午後への前奏曲』では首席奏者アラン・マリオンのフルートでその一端を窺い知ることができる。

ワーナーから8枚のバジェット・ボックスでリリースされたマルティノンのラヴェル及びドビュッシー録音集と聴き比べてみたが、明らかに音質の違いが感知できる。

先ず音が出る前のヒス・ノイズまでくっきりと拾っているのに驚いた。

アナログ録音時代の徒花で致し方ないが、現在のノイズ除去を良しとしないリマスタリングのポリシーは評価されるべきだろう。

また低音から高音までのバランスが改善されて、特に総奏部分での響きがよりクリアーになり、ボリュームを上げても音質に破綻が生じない。

彼らの演奏によるドビュッシーの音源はCD4枚分が存在するので、是非残りの2枚もUHQCD化を期待したい。

注目すべきは当時録音を担当したバランス・エンジニア、ポール・ヴァヴァシュールで、彼が決して精彩を欠いた曖昧模糊としたサウンドを望んでいたのではなかったことが納得できる。

確かにオフマイク気味に採った独特の空気感はドビュッシーの管弦楽曲にはとりわけ効果的で、楽器の定位や臨場感より、オーケストラが混然とミックスされたホール全体の陰翳豊かな音場から立ち昇る光彩や繊細な線を描く手法は彼の音響哲学を実践したものだ。

ヴァヴァシュールは当時のフランスのオーケストラでなければ表現できないような特質を最大限に捉えることに成功したが、皮肉にも同時期のEMIの録音技術が他のメーカーより大幅に遅れをとったこともあり、彼の手法がEMIの中音域の薄っぺらな音質と同時進行せざるを得なかったのは不幸な事実だ。

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classicalmusic at 00:39コメント(0)ドビュッシーマルティノン 

2018年07月02日


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ワルター・バリリ(1921.6.16〜)はウィーン生まれのヴァイオリニストで、ウィーン音楽院に学んだ後、1936年ミュンヘンでデビューした。

1938年にウィーン・フィルに入団し、1940年にはコンサートマスターに就任、1943年には自らの名を冠した四重奏団を組織した。

当時、ウィーンにはコンツェルトハウス協会に所属するウィーン・コンツェルトハウス四重奏団、ムジークフェラインで定期演奏会を行ったシュナイダーハン四重奏団、と同じウィーン・フィルを母体とする2つの名団体が演奏活動を行っていた。

しかし、バリリ四重奏団は結成以来、なぜかメンバーの離脱や急死などの不運が重なり、1951年6月に一時活動の停止を余儀なくされた。

ところが、同じ年にシュナイダーハン四重奏団を主宰するヴォルフガング・シュナイダーハンがソリストに転身することになり、リーダーを失ったシュナイダーハン四重奏団の他の3人にバリリが加わる形で、1951年8月新たなバリリ四重奏団が生まれた。

バリリ氏は1996年の来日時のインタビューでこの時の運命的とも言えるタイミングの良さについて「なるようになるものだ」と語っていた。

ちょうど同じ頃、レコード界ではLPレコードの開発という革命が起き、戦後景気に湧くアメリカではレコード会社が次々に設立された。

1949年、ニューヨークで設立されたクラシック音楽専門レーベル「ウエストミンスター」もその一つ。

ウエストミンスターは米ドルの強さを背景に、ウィーンに出張録音を行い、バリリ四重奏団やウィーン・コンツェルトハウス四重奏団と数多くのLPレコードを制作した。

ウエストミンスター・レーベルは1954年に日本盤も発売されるようになり、彼らの室内楽演奏は日本でも多くのファンを獲得して、1957年12月、バリリ四重奏団の初来日公演は熱狂的に迎えられた。

ところが1959年、バリリは右ひじを故障し、カルテットの活動を断念、新生バリリ四重奏団も約9年でその幕を下ろすこととなった。

このセットには、バリリ四重奏団の米ウエストミンスターへの録音がまとめられており、LPレコード初期に彗星のように現れては消えて行った、名団体の芸術の粋をじっくりと楽しむことができる。

中でも、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲全集は、LP初期に、ブダペストSQのそれと人気を二分したバリリSQの名盤である。

精密な機能的側面を追求するブダペストに対し、バリリはヒューマンな情緒性を大切にする点で一線を画した。

ベートーヴェンの特に後期の弦楽四重奏曲は、特に専門家でなくても至難であることはある程度想像できる。

しかし、だからといってひたすら苦行のように、あるいはいたずらに精密さばかりを求められても聴く方にとってはちょっと困るが、その点、このバリリSQの演奏は非常に楽しくて、ほっとする。

奥行きのある内容を多くの言葉を費やして語ることなら、できなくはないかもしれないが、それを優しい表情で、それとはなしに語るのは必ずしも簡単ではない。

また、スケールの大きさとデリカシーとを雄弁の限りを尽して語ることなら、できなくはないかもしれないが、それを柔軟性をもって簡潔に語るのは必ずしも簡単ではない。

ベートーヴェンの弦楽四重奏曲全集におけるバリリSQの演奏は、そのような難事を立派にやり遂げた内容と言えよう。

ここにおけるバリリSQの4人は、強い緊張感を貫きながらも身のこなしは軽やか、決して肩をいからせぬ優美な輪郭で、ベートーヴェンの各曲の全体像をスムーズに描き出していく。

もちろん、ウィーン風の優雅なスタイルであり、味付けはかなり濃厚な方なので続けて飲用するとやや飽きるかもしれないが、折に触れて取り出せばその都度に新たな感動に浸ることが出来る。

同じウィーンのスタイルとはいっても、コンツェルトハウスSQとはまた違うし、アルバン・ベルクSQとはもっと違いが顕著である。

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classicalmusic at 00:49コメント(0)ベートーヴェンモーツァルト 
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Profile

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早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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