2020年02月
2020年02月29日
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ウェストミンスター名盤シリーズからのUHQCD化されたリニューアル盤で、ウラッハ及びカンパーのアンサンブルを収録した1枚。
確かに鮮明な音質と比較的明瞭な音像が得られていて、従来盤よりもこちらをお薦めしたい。
但しモーツァルトが1951年、ブラームスが1952年のどちらもモノラル録音で、ヒスノイズも少なからず入り込んでいる。
この時代の音源としては多くを望めないことも事実だ。
それにも増して価値があるのは彼らの演奏で、頑固なまでに受け継がれたウィーンの伝統的奏法と音色への嗜好が溢れんばかりに感じられる。
ヴィエンナ・スクールはモ−ツァルトの時代にまで遡ることができるが、更には歴史的に多くの著名な音楽家を輩出したウィ−ン近隣の東欧諸都市からの影響も見逃せないだろう。
その特徴のひとつは音楽の輝かしさや力強さとは対照的なみずみずしさやしなやかな表現力を養うものだ。
それぞれの緩徐楽章に現れる揺蕩うようなカンタービレには郷愁を誘うような哀歓を漂わせている。
またそうした表現を可能にするためには楽器の音色の開拓と、演奏する曲目のテンポ設定を工夫しなければならない。
その点でもウラッハ、ウィーン・コンツェルトハウスのメンバーの解釈と奏法は受け継がれた伝統の深みを伝えて余りある。
ウラッハのクラリネットは音量のダイナミズムを巧みに制御しながら、常に滑らかな表現になるように努めているし、カンパーのヴァイオリンも線は細いが洗練された歌心が秀逸だ。
例えばモーツァルトの第3楽章メヌエットのヴァリエーションは殆どレントラーのような鄙びた素朴さを感じさせて如何にもウィーン風だ。
またブラ−ムスの第3楽章アンダンティーノは、恐らく現代では誰も採用しないような徹底した穏やかなテンポの中に、永遠の安らぎが表されている。
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フルトヴェングラーのCDなら、 フルトヴェングラー鑑賞室。
2020年02月27日
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本書は吉田秀和氏が書き下ろしたものではなく、機会あるごとに書いたバッハの作品への分析や演奏批評、レコード解説などを一冊に纏めたものである。
取り上げているサンプルは20年以上前の録音だが、現在私達がバッハを鑑賞する時の明快な手引きとして活用できる点が優れている。
これを読んでいると彼が如何に音楽の本質を捉えて語っているかが理解できる。
また決して対位法や和声の楽理に固執した偏狭な聴き方ではなく、バッハの書いたスコアが実際の音として再現されることへのほとんど無限の可能性と聴くことへの感動を伝えている。
それだけにカール・リヒターの『ブランデンブルク協奏曲』をまず解説して、それとは対照的なネヴィル・マリナーの同曲集も挙げている。
また『ゴ−ルドベルク変奏曲』に関してはグレン・グ−ルドとトレヴァ−・ピノックを推薦し、同様に『平均律』にはリヒテルとグルダの演奏が比較されている。
吉田氏のバッハ鑑賞への指標は明確で、19世紀の恣意的な表現の流れを汲む演奏はバッハには相応しくないとしている。
その中にハイフェッツの無伴奏も含まれているのは手厳しい。
しかし正確なリズムと的確なダイナミズムによる、生き生きとしたポリフォニーの再現が示される演奏には視野を大きく拡げている。
以下彼の書いた本文の一部を紹介しておく。
『私は、いつも「最高」のバッハのものばっかり好んで聴く趣味はないし、それを特に探そうと考えているものでもない。バッハには、まだ、別のバッハがいくつもある。そういう中で、リヒターのバッハと著しく違っていて、しかも、私を魅惑してやまないのは、グレン・グ−ルドのバッハである。リヒターとグ−ルドと、私は、そのどちらも捨てたくはないし、捨てる必要を少しも感じない。音楽は、それを許すのである。Gott sei Dank.(神が感謝されんことを)』
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2020年02月23日
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チェコ・スプラフォンからは数種類のお国物のアルバムがリリースされている。
いずれも第一級のチェコの演奏家が参加していて単なる郷土の祭典に終わらない奥深さがある。
第1曲目から弦楽合奏の美しさに耳を奪われる。
弦の王国と言われるだけあって、チェコは歴史的にも多くの優れた弦楽器奏者を輩出している。
彼らが培ってきた伝統的な奏法とその秘訣に裏付けられた演奏であることが納得できる。
このディスクではソロ・パートでもヴァイオリンのフデチェクやカニュカがその美音を披露するだけでない。
他の追随を許さないオリジナリティーに満ちた解釈でローカル色豊かなお家芸を味わうことができるのは、音楽を鑑賞する上でのひとつの醍醐味に違いない。
演奏者それぞれが熱烈な愛国心を持っていることは疑いない。
それが決して偏狭なナショナリズムに陥らない、高踏的な普遍性を目指しているのは、やはり彼らがインターナショナルな感性に磨きをかけることも怠らないからだろう。
セレナードに関する16曲を集めているので、多くは作品の一部をピックアップした万人向けの編集になる。
全曲を聴きたい場合はスプラフォンがここに収録された大概のレパートリーをカバーしているので、サンプラーとしても役立つだろう。
もう1枚の『チェコ珠玉の小品集』とともにお薦めしたい。
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2020年02月21日
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2008年からドイツ・グラモフォンが傘下のレーベルとのコラボで順次刊行している彼女のセット物の4巻目に当たり、この巻を含めるとCDの数だけでも27枚になる。
今回はアルゲリッチのフィリップスへの全録音が6枚のCDに収録され、曲目の上でもまたその演奏においても多彩を極めた内容が盛り込まれている。
また廉価盤化されたこれらのCDの中には、既に入手困難になっているものも含まれるのでファンにとっても朗報に違いない。
同世代のピアニストでは、レパートリーを限定してアンサンブルには殆んど手を染めないポリーニとは全く対照的な活動をしている彼女だが、それは常に外部からの刺激を求めてソロ以外のジャンルにも興味津々で積極的に取り組む才気煥発な性格を示している。
CD1のラフマニノフのピアノ協奏曲第3番とチャイコフスキーの同第1番は、前者が1982年のリッカルド・シャイー指揮、ベルリン・ドイツ交響楽団、後者がキリル・コンドラシン、バイエルン放送交響楽団との協演で、どちらもライヴ特有の緊張感と熱気がいやがうえにも会場の雰囲気を盛り上げている。
またCD2サン=サーンスの『動物の謝肉祭』は、彼女としては際物的なレパートリーだが、協演者達がすこぶる充実していて、この手の曲のキャスティングとしては豪華そのものだ。
因みにヴァイオリンはギドン・クレーメル、チェロがミッシャ・マイスキー、連弾の相手はネルソン・フレイレという顔ぶれだ。
CD3でのマイスキーとのシューベルトの『アルぺジョーネ・ソナタ』も真摯なデュエットが好ましい。
一方バルトークの『2台のピアノと打楽器のためのソナタ』はCD5でコヴァセヴィチと入れているが、同曲のオーケストラ版はCD6のフレイレとのデュオで聴き比べができる。
更にフレイレとはCD4でラフマニノフ、ラヴェル、ルトスラフスキーの作品での白熱の連弾を披露している。
30ページほどのブックレットには簡易なライナー・ノーツの他に、初出時のジャケット写真と曲目及び録音データ、数葉のスナップが掲載されている。
録音状態はいずれもフィリップスらしい切れの良い鮮明な音質が特徴で、時代的なハンディは感じさせない。
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2020年02月18日
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前古典派のホルン協奏曲集と題されたこのアルバムは、実際にはバロックから古典派初期に作曲された作品が5曲収録されている。
ホルンはバッハもブランデンブルク協奏曲第1番で大活躍させているように、金管楽器の中でも早くからソロ楽器として重要な役割を果たしてきただけあって、その作品の数も多い。
ここではペーター・ダムの器用さと柔軟な奏法が発揮された生き生きとした表現が聴きどころだ。
1984年のエテルナ音源でベルリン・クラシックス・レーベルからリリースされたものだが、99年にディジタル・リマスタリングされ音質は極めて良好。
ダムは長期間に亘ってシュターツカペレ・ドレスデンの首席ホルニストだったことは周知の通りだが、オーケストラの一員としての活動の他にもバロックから現代に至る幅広いソロ作品のレパートリーをものしていて、幸いそれぞれの時代の作品をほぼまんべんなく録音している。
シカゴ響の首席でホルンの神様とも言われたデイル・クレヴェンジャーよりもむしろ多くのCDをリリースしている事実は旧東ドイツの器楽奏者としては例外的な活動と言えなくもない。
ただ当時の東独は外貨獲得のために西側でのコンサートやレコード売り込みのために優秀なアーティストを積極的に使ったという事情もあっただろう。
このことに関してはDVDの『クラシック音楽と冷戦』に詳しいのでそちらに譲ることにする。
ダムはこの協奏曲集でホルン、ディスカント・ホルン、ポスト・ホルン及び狩のホルンの少なくとも4種類を吹く八面六臂の活躍だ。
特に最後のベーアの作品ではポスト・ホルンと狩のホルンを持ち替えで演奏していて、ポスト・ホルンのオクターヴのたったふたつだけの音を使ったユーモラスな曲想が実に快活な雰囲気を醸し出している。
バロック音楽に造詣の深いハルトムート・ヘンヒェン指揮、カール・フィリップ・エマヌエル・バッハ室内管弦楽団との演奏で、彼らはベルリン国立歌劇場管弦楽団のメンバーによって構成されている。
尚2曲目のヴァルト・ホルン(森のホルン)は通常のホルンで代用しているようだ。
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2020年02月16日
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大バッハの末っ子ヨハン・クリスティアン・バッハは、幼いモーツァルトに多大な影響を及ぼしたことで逆に顧みられるようになった音楽家だ。
当時はその単純明快なイタリア風の作風でロンドンの大衆に絶大な人気を博した作曲家だった。
彼の作品16は『旋律楽器による伴奏付のキーボードのための6曲ソナタ集』で、特に楽器の指定はされていないので演奏者の選択に委ねられるが、ここでは当時の音色を再現すべく、普段は滅多に聴くことがないピリオド楽器が使われているところに特徴がある。
この録音はハンガリーを代表する古楽器奏者ミクローシュ・シュパーニとベネデク・チャーログが1999年に行ったセッションで、タンジェント・ピアノとトラヴェルソという楽器編成では殆んど唯一の貴重なサンプルでもある。
モーツァルトにも同様のソナタが存在するように、こうしたソナタではヴァイオリンやフルートなどのメロディー楽器はあくまでも伴奏にまわり、鍵盤楽器に彩りを添える役割を果たしている。
全曲ともに簡易な2楽章形式で作曲されていて、もはやバロックの複雑さからは解き放たれた軽快なギャラント様式は、古典派志向を確実に予見していて興味深い。
演奏者シュパーニとチャーログはどちらもブダペスト出身で、ヨーロッパの古楽畑では既にベテラン奏者になる。
この2人はやはりヒストリカル楽器やそのコピーを使って大バッハのソナタ集や『夜の響き』と題されたCDを意欲的にリリースしている。
彼らのポリシーはそのピリオドの音響をできる限り忠実に再現するということに集約されるだろう。
それは現代人の耳に心地良いか否かに係わらず、当時の人々が実際に聴いていたであろう音楽を目指しているために、大らかで奥ゆかしい響きの中に意外な新鮮さが感じられるのも事実だ。
シュパーニが弾くタンジェント・ピアノは18世紀に流行した鍵盤楽器で、音色はどちらかと言えばチェンバロに近いが、タッチによって微妙なダイナミクスの表現も可能で、また音色を変化させるレジスターも付いている。
シュパーニは古楽器のコレクターとしても知られているが、彼がこの録音に使用したのはイタリアの製作家バルダッサーレ・パストーリ製のコピーで、一方トラヴェルソ奏者チャーログはベルギーの名工G.A.ロッテンブルグの1745年モデルを使用している。
ピッチは現代より半音低いa'=415Hzのスタンダード・バロック・ピッチ採用。
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2020年02月12日
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リッカルド・ムーティのオペラ全曲録音のシリーズでは、2017年になってワーナーからヴェルディの11曲のオペラを纏めたDVD付28枚のバジェット・ボックスがリリースされた。
このソニー盤はその後の彼のオペラ上演の総決算とも言えるライヴ録音による9曲のオペラ全曲盤とオーケストラル・ワークのセッションを加えた28枚のセットになる。
ムーティの劇場作品への深い理解と若い頃から絶えず持ち続けたオペラに対する強い情熱、とりわけイタリア・オペラ蘇生への使命感を示している。
彼は過去の歌手達によって美声や超絶技巧誇示のために、原形を留めないくらい歪められてしまった作品の本来の姿を復元することに腐心した。
それゆえ劇中での個々のシーンの突出を避け、歌による表現と文学的ストーリーの展開に最大限の整合性を求め、総合芸術としての価値の蘇生を試みた。
それは奇しくも大歌手が綺羅星の如く現れて、その美声を競ったオペラ黄金時代の終焉の時期でもあった。
ムーティは歌手達を舞台上のスターとしてではなく、敢然と自分の持ち駒として扱っている。
その点が彼の前の時代のオペラ全曲録音と決定的に異なっている。
またそれまでの集客を優先した定番オペラの上演を見直し、知られざる名曲の発掘にも余念がない。
オーケストラル・ワークで興味深いのは、スカラ座フィルハーモニーとの2枚のヴェルディ序曲集、プッチーニ、カタラーニ、ポンキェッリなどのイタリア・オペラの作曲家による管弦楽曲集で、ムーティがスカラ座音楽監督時代に築き上げたコラボで彼らが最も得意とする曲目を採り上げている。
2月8日に亡くなったソプラノのミレッラ・フレーニを迎えたマルトゥッチの『思い出の歌』も滅多に上演されないが、後のマーラーを予感させる比類のない美しさがある。
またムーティの学生時代の恩師であり、良き助言者だったニーノ・ロータの作品集も2枚ほどあり、母国の作曲家の作品に対する深い敬意と愛着も感じられる。
スカラ座管弦楽団を劇場付属のオーケストラから独立させて、独自の演奏活動を行えるようにしたのは前任者アバドだったが、その後のインターナショナルなトゥルネーや新しいレパートリーの開拓には目を見張るものがある。
何故かそれぞれのCDを1枚ずつジュエルケースに入れた集合体になっているため、ボックス・サイズは縦15X横30X高さ15cmと枚数の割にはかなり大きくなっている。
ブックレットには総てのジャケット写真と曲目及び録音その他のデータのみが掲載されていて、事実上ライナー・ノーツはない。
また歌詞対訳も省略されているがムーティのソニーへのコンプリート・エディションがリーズナブルな価格で手に入るのが嬉しい。
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2020年02月09日
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リスト生誕200周年記念としてリリースされたセット物のひとつで、カーネギー・ホールのライヴも含めてホロヴィッツの遺した録音からリストの作品のみを拾い上げて4枚のCDにまとめられている。
録音年代は多岐にわたるが、CD4枚はそれぞれ、1)初期スタジオ録音、2)カーネギー・ホールでのモノラル・ライヴ 3)CBSスタジオ録音およびヒストリック・リターン以後のライヴ 4)後期録音と明確にグルーピングされており、ほぼクロノロジカルにその演奏の変遷をたどっていくことが出来る。
初出音源は無いが、『ソナタロ短調』と『ハンガリー狂詩曲第6番変ニ長調』は2種類、『忘れられたワルツ第1番』は4種類収録されている。
彼の演奏は他のピアニストと比較するのが殆んど無意味と思われるほど個性的で、それぞれの曲自体がパーフェクトなホロヴィッツ・ショウのレパートリーとして磨き上げられている。
結果的に彼にとって、こうした作品は自分のコンサートに奉仕させるエレメントという印象すら与える。
尚3枚目の後半からは歴史的セッションで、1930年から51年にかけてのモノラル録音ながら若き日の彼の妙技を堪能することができる。
彼は恐るべきヴィルトゥオーソであるばかりでなく、ピアノの音響が聴衆に与える効果も熟知していて、驚異的に広いダイナミクスを駆使した独自の奏法で、リストの音楽の華麗さからデモーニッシュなおぞましさまでを最大限引き出している。
彼はいかなる曲においても敢然と自分の領域に持ち込んで研ぎ澄まし、有無を言わせない説得力で聴き手に迫ってくる。
実際このセットに取り上げられた数曲は、ホロヴィッツ自身が少なからず手を入れた編曲になる。
しかし他の作曲家の作品はともかくとして、リストのピアノ曲に関しては、それが作曲者によって書きとめられたものであるにせよ、即興性が大いに活かされていることも事実だろう。
そうした意味ではホロヴィッツのアレンジも非常に気の利いた趣向であるには違いない。
解説は英、独、仏語でジャケットとライナー・ノーツが完全に綴じ込まれたブック仕様のため、CDが取り出しづらい装丁だが、廉価盤としての価値は高い。
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2020年02月07日
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この演奏は、1970年の生誕200年を記念して企画されたベートーヴェン全集の1枚として録音されたもの。
2曲とも三者の気負いの無い真摯な演奏と、この上なく流麗な表現が特徴的だ。
こうしたトリオでは個性の強い三人の演奏家がどこまで協調して音楽的理想に近づけるかということがアンサンブルの鍵になる。
ここでは絶頂期だったクラリネットのカール・ライスターも含めて、彼らが合わせる技量にも傑出していたことを見事に証明している。
ケンプのピアノが要になってトリオを完璧に支えている『大公』は、更にシェリングの知性とフルニエの高貴とが相俟って、絶妙な呼吸が醸し出す穏やかで清澄な響きに満たされた逸品だ。
また音楽的には明晰でありながら驚くほど幅広い表現力を披露していて、ベートーヴェンの哲学的な深遠さも汲み尽くした解釈は聴き逃せない。
このようなトリオは一流のソリストが集まっただけではたやすく実現できるものではない。
巨匠たちのまさに夢の共演だが、中でもシェリングの厳しくも美しいヴァイオリンに惹かれる。
2曲目の『街の歌』ではライスターのみが30代前半で3人の中では一番若手だが、正確無比な技巧に加えて誠実でむしろ控えめな表現が他の二人の奏者にも良く調和している。
通常クラリネットを伴っては滅多に取り上げられることがないだけに貴重な録音でもある。
尚ケンプ、シェリングそしてフルニエは1970年にこの曲集を6曲ほどグラモフォンに録音している。
残念ながら現在市販されているのはここに収められた『大公』と別の1枚にカップリングされた『幽霊』のみだ。
他の曲も気品に満ちた奥行きの深い演奏で全曲復活が望まれる。
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2020年02月05日
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2009年に刊行されたナイーヴ・クラシック・コレクション・シリーズの第1巻を飾るボックス・セット。
既にリリースされたCDの廉価盤化だが23X14cmのボックスの中に2枚のCDと文庫本程度の仏、英語によるライナー・ノーツが収納されているコレクション仕様になっている。
当巻はピエール・アンタイのチェンバロ演奏によるJ.S.バッハの作品集で、1枚目はゴールドベルク変奏曲BWV.988、2枚目がチェンバロ協奏曲第3番ニ長調BWV.1054、同第1番ニ短調BWV.1052及び三重協奏曲イ短調BWV.1044で、その間を縫うようにしてプレリュードとフーガBWV.880と892が収録されている。
使用チェンバロはミヒャエル・ミートケの二段鍵盤のコピーでピッチはソロ曲がa=415、協奏曲はa=400。
ミートケのチェンバロはバッハがケーテンの宮廷楽長時代に同楽団用に購入したもので、ブランデンブルグ協奏曲第5番のチェンバロ・パートはこの楽器のために書かれたとされている。
アンタイの演奏は彼の師グスタフ・レオンハルトの真摯で厳格な対位法の再現を踏襲しているものの、テンポは速く、より自由闊達でモダンな表現が特徴的だ。
ゴールドベルク変奏曲では軽妙なタッチと気の利いた独特のセンスが楽器の音色の美しさも手伝って、この大曲を決して飽きさせることが無い。
一方協奏曲集は溌剌としたテンポの設定と歯切れの良いリズム感が従来の古楽のイメージを払拭するほど快活な演奏だ。
尚オーケストラ、ル・コンセール・フランセーは、わずか6名の小編成で日本人ではヴァイオリンの寺神戸亮とチェロの鈴木秀美が参加している。
トラヴェルソ・ソロは兄弟のマルク・アンタイが担当。
古楽の世界ではベルギーのクイケン三兄弟と並んでフランスではアンタイ三兄弟がリーダー・シップを取っている。
彼らも既に単独あるいは合同で多くのCDをリリースしているが更にこれからの活躍が期待される。
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2020年02月03日
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ヒラリー・ハーンは1997年にCDデビュー(ソニー)、そのデビュー盤がバッハの無伴奏作品(ソナタ第3番、パルティータ第2番&第3番)だった。
このデッカからリリースされた『ヒラリー・ハーン・プレイズ・バッハ』をもって、実に20年の時を経て『無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ』全曲が完成することになる。
デビューからの約20年間でヒラリー・ハ−ンの音楽性は深化の一途を辿った。
レパートリーを広げ、ヴァイオリン協奏曲の王道的な作品を発表しながら、現代作品に至るまで広く取り上げる現代屈指のヴァイオリニストになった。
2003年にドイツ・グラモフォンに移籍した後は、グラミー賞2度受賞(ソニー時代にも1回受賞)を果たすなど、更に磨きの掛かった技術と音楽性で人々を魅了してきた。
今回デッカから発表されるバッハ・アルバムは、これまで歩んできたおよそ20年という歳月を振り返りながら初心に立ち戻り、新たな世界への一歩を力強く踏み出さんとする確かな意思を感じ取れる、研ぎ澄まされた音色に満たされている。
前述のようにヒラリー・ハ−ンは18歳の時にバッハの無伴奏3曲でディスク・デビューを飾り、その後残された3曲は録音を先送りしていた。
20年ぶりの解釈の変化を知るためにデビュー盤を聴き直してみたが、当時の颯爽としたフレッシュなイメージを残しつつ更に洗練味を増した、潔癖とも言うべき、非の打ちどころのないほどの完璧主義的スタイルを創り上げている。
その分幾らか覇気は後退しているが、これは曲目の性格に由来するものかも知れない。
つまり長丁場のシャコンヌを含むパルティータ第2番や大規模なフ−ガを持つソナタ第3番は既に録音済みなので、ここではむしろヴァイオリンを流麗に歌わせながら、ポリフォニーの綾を精緻に紡ぎだすことへの接点を究極的に追い求めた奏法を開拓しているのが聴きどころだろう。
それぞれの作品の解釈はデビュー当時と大差はなく、恣意的な表現はできる限り避けてバッハの音楽が聴き手に直接伝わるように演奏している。
それゆえ個性的な無伴奏を期待した人には当て外れかも知れない。
あくまでもオ−ソドックスの道を踏み外すことなく、その上に自己のスタイルを築いていくのは安易な道を選択しないハ−ンの矜持だろう。
その意味でもここに完結したバッハの無伴奏全曲は彼女の到達し得たひとつの境地を示していると言える。
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