2020年10月
2020年10月31日
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以前LP盤3枚でリリースされたオーケストラル・ワーク集で、長い間入手困難だった音源をエロクエンスがCD化した2枚組。
シュミット=イッセルシュテットは生涯にそれなりの量の音源を遺しているが、不運にもステレオ時代の大手レコード・メーカーには僅かなレパートリーしかセッション録音できなかった。
このCDセットも1枚目は1953年のモノラル録音で、ドヴォルザークの交響曲第7番は同年春にハンブルク放送交響楽団との2回目の演奏旅行の際ロンドンのキングスウェイ・ホールで演奏したものになる。
劇的なほど感動を与えるドヴォルザークの録音集で、どれも才能あふれる交響曲指揮者としてシュミット=イッセルシュテットが戦後に活躍していた時期の録音だ。
彼は律儀な解釈で知られている典型的なドイツの指揮者だが、ここで聴かせる情熱的で柔軟な統率は、決して堅物の音楽家ではないことを示している。
2枚目は1963年の歴としたステレオ録音で、ドヴォルザークの弦楽のためのセレナード及び管楽器アンサンブルのためのセレナードの2曲が収録されている。
こちらは流石に楽器の音色を生かした瑞々しい解釈が堪能できる貴重な音源だろう。
北ドイツ放送交響楽団はブラームスを得意としていたが、彼から強い影響を受けたドヴォルザークの作品だけに面目躍如の演奏だ。
ハンス・シュミット=イッセルシュテット(1900-1973)は終戦直後の1945年にロンドンのBBC交響楽団を模範としたハンブルク放送交響楽団を設立し、音楽監督も務めた。
ダルムシュタット、ハンブルク、ベルリンでオペラ指揮者として始まった音楽人生だったが、後に交響曲指揮者として円熟した晩年を過ごした。
本盤によって新世代の音楽愛好家の方々にもこの指揮者の名前を知っていただけることだろう。
このディスクでは1枚目と2枚目ではオーケストラの名称が変わっているが、実際には北ドイツ放送交響楽団は前者と同一楽団で、再編成後に北ドイツ放送(NDR)の名を掲げている。
尚現在ではNDRエルプフィルハーモニー管弦楽団と再び改称しているので、オールド・ファンにとってはいくらかややこしい。
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フルトヴェングラーのCDなら、 フルトヴェングラー鑑賞室。
2020年10月28日
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カラヤンに匹敵するほどの才能を持ちながら白血病で48歳の若さで逝った名指揮者フリッチャイ。
オペラにも造詣の深かったフリッチャイは、ヨーロッパの名だたるオペラ・ハウスで成功をおさめたが、ドイツ・グラモフォンのコンプリート・レコーディング集の第2巻に12曲の全曲録音が収録されている。
その中でモーツァルトは『後宮』『魔笛』『ドン・ジョヴァンニ』『イドメネオ』と『フィガロの結婚』で、それぞれが起承転結を良く心得た溌溂とした解釈が現在聴いても強い説得力があり、音楽も洗練されていてモーツァルトの美観を改めて体験できる。
筋肉質の引き締まった演奏で、これほど高貴でドラマティックでスリリングな『フィガロ』は聴いたことがない。
それでいてモーツァルト特有の洗練された優雅さと透明感にも不足していない。
ときにはテンポを揺らし、情感たっぷりに歌わせる。
オーケストラと歌手のバランスが自然で聴きやすいのは、歌手を自由に歌わせることで解放感が生まれているからだろう。
ちなみにカール・ベームは第4幕のマルチェッリーナとドン・バジリオの長いアリアを敢えて採用しているが、フリッチャイは芝居の流れの軽快さを維持するために、この2曲は上演習慣に従って割愛している。
1960年の初期ステレオ録音だが、シンプルな音像とクリアーな音質で聴き易い。
カラヤン、ベームがアナログ・ステレオ時代に好んで使ったベルリン、イエス・キリスト教会での収録だけにその芳醇な響きがじつに魅力的。
尚レチタティーヴォ・セッコのチェンバロは右側に置かれている。
タイトル・ロールのフィガロはキャストの中では唯一のイタリア人レナート・カペッキで、絶妙な語り口で根っからの劇場人として芸達者なところを披露している。
伯爵役はフリッチャイにその才能を見出されたフィッシャー=ディースカウで、ベーム盤でも高貴さと好色さを巧みに表現しているが、ここでは更に若々しさが漲っいる。
ケルビーノのヘルタ・テッパーは、この世間知らずの奔放な少年役にはやや謹厳的に聞こえる。
女声陣ではやはり伯爵夫人のシュターダーとスザンナのゼーフリートの方が適役と言えるだろう。
ベルリン放送交響楽団も融通性のある気の利いたサボートも好演。
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フルトヴェングラーのCDなら、 フルトヴェングラー鑑賞室。
2020年10月25日
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音響に独自のポリシーを掲げてオリジナル録音によるさまざまなメディアをリリースしている独タチェット・レーベルからの1枚。
このディスクはブルーレイ・オーディオのためのサラウンド・システムのチューニング・ディスクとしては殆んど唯一で、そのサウンドの特長を自分のシステムに最大限活かすべく調整できるように工夫されている。
3部分に分かれていて、先ず第1部では音楽ではない音響や効果音を聴く、興味深い『スナック』がおかれている。
ピアノの音像がスピーカーの間を目まぐるしく動くトラック1。トラック2はダイナマイトの炸裂音、続いてトラック3はヘリコプターの飛来、更にトラック4にサッカー・スタジアムの観衆の声援が収録されている。
この部分は丁度サッカー選手が競技場での試合中に聞こえる観客席からの波打つようなどよめきやゴールを決めた時の怒号が臨場感を高めていて秀逸。
第2部はクラシックの名曲を使ったサラウンド効果のデモンストレーションで、ここにタチェットの音響に対する独特のポリシーが表れていて面白い。
鑑賞者をオーケストラがぐるりと取り囲んだ形での演奏になり、実際のコンサートでは有り得ない聞こえ方だ。
それを不自然と言ってしまえばそれまでだが、オーディオは元来虚構の音響世界であり、個人的にはこうした再生方法を認めるのであれば、それだけ鑑賞の楽しみも倍増するだろうと思う。
例えばサンプルの1曲バッハの『マタイ受難曲』ではオルガンが正面に位置してその左右に管弦楽、鑑賞者の耳の左に第1コーラス、右に第2コーラスという配置になっている。
第3部はテスト・セクションで、オーディオ機器のバランス調整に役立てることができる。
ここに収録されている多くのサンプル曲をそれぞれの方向からモノラルで流して、リスニング・ルームの形や大きさ、あるいは材質などによってスピーカーの位置や音量ボリュームを矯正することができるように工夫されている。
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2020年10月21日
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以前デッカ・レーベルからリリースされたグランディ・ヴォーチ・シリーズの復刻盤。
オリジナルのアリア集はエレーデ指揮、サンタ・チェチーリア音楽院とのモノラル録音で、その他はオペラ全曲盤からのピックアップになる。
特に彼の舞台での当たり役だったヴェルディのオペラのキャラクターではバス歌手の模範になるような究極的な歌唱芸術を堪能することができる。
一方でマイヤベーヤの『ユグノー教徒』で長く引き伸ばす低いCの音は、シエピにとってはご愛嬌なのかも知れないが、筆者が初めてLPで聴いた学生時代には仰天したものだ。
指揮者アルベルト・エレーデは欧米のオペラ畑を専門に歩んだ人で、歌手の声を生かすことにかけては天下一品の腕を持っていた。
それがイタリア人指揮者の伝統的なスタイルでもあり、オーケストラが歌にぴったりと寄り添うように、しかし決して歌を妨げないように伴奏していくことが要求される。
またこうした技に手慣れたサンタ・チェチーリア音楽院管弦楽団も秀逸。
指揮者が歌手を将棋の持ち駒のように使いこなし、原典以外は排除する現代の感覚とは一味違った味わいがある。
チェーザレ・シエピ(1923-2010)がフルトヴェングラーに理想的なドン・ジョヴァンニ歌いとして、その美声と演技を認められたことは周知のとおりだ。
彼は典型的なイタリアのバスで、明るく柔軟な発声と深々とした豊かな声量を武器に、磨き上げられた高貴なカンタービレを駆使して、苦悩に苛まれ、また宿命に葛藤する主人公、いわゆるバッソ・セリオの役柄を得意とした。
彼はまたオペラだけでなく、歌曲や宗教曲、更にはミュージカルからポピュラー・ソングにも精通していたために、こうしたレパートリーの録音も少なからず遺している。
1941年デビュー以来89年まで公式の舞台に立ち、そのスタイリッシュで知的な歌唱は晩年まで衰えをみせなかった。
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2020年10月16日
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品格ある解釈でドイツ音楽の演奏を中心に圧倒的な人気と敬意を集めるヘンリク・シェリング[1918-1988]。
南西ドイツ放送(SWR)のアーカイヴより、放送用にセッション録音された協奏曲CD5枚分が一挙登場した。
しかも、かつてバーデン=バーデンのモーツァルト録音集でCD化されたK.216以外は全て初発売という嬉しい内容だ。
さらに、オリジナルマスターテープより今回のリリースのために全て新たにマスタリングが行われており、シェリング本来の艶のある響きを楽しむことが出来る。
収録されたレパートリーは、バッハ、モーツァルト、ベートーヴェン、ブラームスといった彼が最も評価されたスタンダードな名曲に加え、スクロヴァチェフスキと共に深い共感を持って臨んだ同郷ポーランドのシマノフスキや、晩年に岩城宏之と共演したシベリウスなど。
巨匠の深い音楽性と幅広い表現力を満喫できる、ファン垂涎のボックスである。
戦後のドイツ放送局が制作したラジオ放送用音源は、モノラル録音でも音質はかなり手堅く、裏切られることはまずない。
この南西ドイツ放送局SWRのシェリング協奏曲集も同様で、予想していた以上の音質とリマスタリング効果が得られているし、1970年代以降の録音はステレオというのも嬉しいところだ。
確かに5枚組CDのうちステレオ録音はシューマン、モーツァルト偽作のニ長調、シベリウス及びシマノフスキの4曲のみだが、他のモノラル録音も充分に鑑賞に堪える仕上がりになっている。
1960年代初頭までの音源は、オーケストラがややこもり気味で、またブラームスでは第3楽章に一瞬音飛びが聞かれる。
それでもシェリングのソロは明瞭で、彼の張りのある艶やかな音色は最良に生かされている。
ただしこのセットは彼のSWRへの網羅的な演奏集ではない。
何故小出しにするのか分からないが、既にリリース済みの2枚とは曲目が異なっているのは有り難い。
シェリングのレバートリーに関してはドイツの三大B、つまりバッハ、ベートーヴェン、ブラームスが生涯に亘って演奏し続けた骨子になっている。
この協奏曲集でも3人の作曲家のそれぞれの協奏曲を堪能することができるし、また後に大手レコード・メーカーに入れ直した演奏と比較するのも一興だろう。
例えばバッハはその後の無伴奏全曲録音に至る過渡期的な解釈で、その間シェリング自身もかなり研鑽を積んだことが想像される。
また母国ポーランドのシマノフスキの第2番はヤン・クレンツ、バンベルク交響楽団と録音したのが1972年なので、こちらのスクロヴァチェフスキとの共演の方が後の録音(1978年)ということになる。
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2020年10月13日
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クリスティーネ・ショルンスハイムの楽器の響きに対する感性をバッハの平均律に最大限活かした秀演。
彼女の音楽学者としての学理的な研究はともかくとして、いや実際良い意味でおよそ学者らしくない演奏なのだが、何よりも先ず響きとして美しい平均律だ。
彼女はレジスターを巧みに替えてさまざまな音響効果の可能性を試みて、この長大な曲集に華やかな彩りを添えている。
また和音をアルペッジョにしたり、テンポを若干揺らして遊び心も感じられるフレキシブルな表現が随所に聴かれる。
しかしそれは弾き崩しやレジスターの乱用ではなく、あくまでもバロックの様式に則った再現と言えるだろう。
むしろ対位法の究極の姿という、しかつめらしい作曲技法を最後まで退屈させることなく、心地良く聴かせてくれる演奏だ。
既に彼女はハイドンのピアノ・ソナタ全曲集でも明らかにしているように、使用楽器の選択には細心の注意を払っている。
それは当時の作曲家がイメージした音の再現に他ならないが、今回この録音のために使われたチェンバロはヨハネス(ヤン)・ルッカースが1624年に製作した二段鍵盤を持つオリジナル楽器で、現在ではフランス、コルマール市のウンターリンデン博物館所蔵になる。
このセットのジャケットの内側とCDにも写真が印刷されているので参考にされたい。
ライナー・ノーツにはこのチェンバロを修復したクリストファー・クラーク氏のコメントも掲載されている。
それによるとこの楽器は過去数回手が加えられているが、ルッカース特有の暗めで気品があり、立ち上がりの良い響きは健在でバッハの対位法作品の演奏には非常に適している。
尚ピッチはa'=392。
演奏内容、録音状態から言っても破格の値段で、初めてバッハの平均律を聴いてみたい方のファースト・チョイスとしてもお勧めしたい。
録音は2010年及び2011年。
4枚のCDが内側のみプラスティックの折りたたみ式のジャケットに収納されていて綴じ込みの英、独語ライナー・ノーツ付。
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2020年10月07日
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ポリーニの演奏スタイルに変化があらわれはじめた1980年代後半の録音。
以前の輝かしいタッチで高い緊張を維持しながらヴォルトゥオーゾ・スタイルに、この頃から微妙な変化があらわれ、こまやかな陰影が宿るようになった。
シューマンの協奏曲は勇壮なダイナミズムが支配していて、その力強さが圧倒的な演奏だが、遅めのテンポのなかそうした繊細な表現が大きくものをいっている。
緩徐楽章の香り立つようなニュアンスもこの曲にふさわしく、フィナーレで反復されるフレーズも決して機械的に陥ることなく豊かな音楽が息づいている。
ここでもポリーニは作曲家特有の抒情性を陰影深く仕上げるのではなく、むしろ総ての音に光を当ててあくまでも明快なピアニズムの中に音楽を造形していく手法をとっている。
それだけに濃厚なリリシズムを求める人にとっては合わないかも知れないが、例えば終楽章の歓喜に満ちた燦然とした表現は聴き逃せない。
ところで、ポリーニの演奏のレパートリーは他のピアニストに比べてそれほど広くはない。
その理由は彼が商業ペースに乗らず、自分の納得のいく音楽作りに時間をかけてひたすらマイペースで取り組むからに他ならないが、その限られた曲目の中でも重要な分野が現代音楽だ。
12音技法で作曲されたシェーンベルクのピアノ協奏曲は情感豊かに歌い上げた名演だ。
しかも恐ろしく切れの良いメカニズムで弾き切ったこの録音は、彼と指揮者アバドの理知的な表現能力と音楽性を最大限に進展させた稀にみる集中力を持った演奏だ。
またここではアバドのこの作曲家への深い共感に裏打ちされた見事な指揮も成功の大きな要因となっていて、ベルリン・フィルのアンサンブルの巧さも特筆に値する。
どちらも1989年のデジタル録音で、比較的全体的な音のバランスが良く、雑味が払拭された澄んだ音色が特徴だ。
特にシェーンベルクのように打楽器の音色や各パートの横の動きに注意が集中する曲種には効果的だ。
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2020年10月05日
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新ウィーン楽派の管弦楽曲を1枚のディスクに収録する場合、どういう選曲があり得るか。
例えばシェーンベルクのop.16、ベルクのop.6、ヴェーベルンのop.6といった、無調表現主義時代の作品群を並べるのは、最もオーソドックスな路線と言えよう。
ところでラトルのディスクでは、ベルクの曲をop.6を入れるかわりに『ルル組曲』を入れている。
これだと、ベルクの曲だけちょっと異質で、しかもこの曲だけがやや長大で、比重が大きくなる。
これは、外側から見れば、シェーンベルクから、セリー音楽と前衛主義の教師だったヴェーベルンを経て、今やポスト・モダン的で世紀末的雰囲気を最も色濃く残したベルクへと、重点を大きく移してきていることを反映していよう。
また内側から見れば、そうした時代の流れにあって、ラトルの表現が、知的なものよりむしろ、感覚的な凄みのあるものへとこれらの音楽の性格を変質させているということでもある。
ラトルの表現は、現代音楽を完全に自分のものとできる若い世代だけあって、ツボにはまったものだ。
旋律の歌わせ方もテンポの動かし方もリズムの切れも、オーケストラの色彩も、自在で、かつ自然に聞こえる。
そしてこの曲のむせかえるような官能性、頽廃、極限的な美を冒頭から見事に音響化している。
このような演奏は多分これ(1990年録音)までになかったのではないだろうか。
例えば第1曲71小節前のゲネラル・パウゼは、ラトルの演奏では大きな呼吸のなかで捉えられており、その「間」が濃密な官能を湛えだす。
オージェの声も柔らかく演奏の性格とマッチしている。
しかし、ラトルの演奏には、獲得されたものがあると同時に、失われたものもあると言えないだろうか。
面白いのは、第5曲のルルの死の叫びへ向けての演出だが、ラトルは官能的な波がこれ以上できないほど高められた末にそのカタルシスとしての死がやってくるように聞こえる。
ラトルの演奏では現在的な死とエロスから解放するというように思えるが、当時のベルク受容の意味を考えさせてくれる。
シェーンベルクのop.16、ヴェーベルンのop.6も分析的なアプローチながら、リジッドな統一感がない一方、どこかに素朴さも残っていて、しかもオーケストラと一所懸命に音楽をつくっていくという姿勢が心地よい緊張感を生んでいる。
ラトルがバーミンガム市交響楽団との共同作業でマーラーとともに、得意の演目であった新ウィーン楽派だが、その新感覚がベルリン・フィルの常任の椅子を得る原動力になったのだろう。
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2020年10月02日
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コンドラシン、モスクワ・フィルによるショスタコーヴィチ交響曲全集は本家メロディア盤が既に製造中止になっている。
法外なプレミアム価格を覚悟するか、個別売りで見つける以外にコレクションする方法がないのが残念だ。
ウラニアのリイシュー盤も再販の予定はないようで、いずれこのディスクも入手困難になるだろう。
ここに収録された3曲はいずれも当時のソヴィエト当局から睨まれたいわくつきの作品である。
大作の交響曲第4番はショスタコーヴィチ自身が初演撤回をした後、1965年にコンドラシンによって初演されているし、第9番はジダーノフ批判に曝されて汚名を着せられた。
また併録されたバス・ソロとコーラス付のカンタータ風バラード『ステンカ・ラージンの処刑』も隠された体制批判という印象を与える。
全曲音質にも恵まれたステレオ録音なので、コンドラシン・ファンには欠かせないコレクションに違いない。
今後これらのブルーレイ・オーディオ・ディスクなどの高音質盤が企画されることを期待したい。
亡命前のコンドラシンはモスクワ・フィルとショスタコーヴィチ交響曲全集を完成させた。
ムラヴィンスキーが第13番『バビ・ヤール』の初演を辞退してからは、その後の多くの作品の初演を飾った作曲家の最も良き理解者による演奏として価値の高い全集だ。
このディスクではムラヴィンスキー、レニングラード・フィルの恐るべき推進力とは異なった解釈で、ショスタコーヴィチの精緻なオーケストレーションと生々しいサウンドが忠実かつ明瞭に再現されている。
ムラヴィンスキーは反体制的な作品の演奏には消極的だったことが想像されるが、第13番では当局の検閲や初演への圧力で、目まぐるしいメンバーの交代があり、コンドラシンの全集でも歌詞を変更した改訂版での演奏を余儀なくされた。
『ステンカ・ラージンの処刑』もストーリーからすればかなり際どい内容を持っている。
逮捕されたコサックの首領ステパン・ラージン、彼はやはり反体制の象徴でもあるわけだが、その公開処刑の場面を劇的に描いた作品で、民衆は当初曳き回された彼に唾を吐きかけるが、次第にこの処刑に懐疑的になる。
秘密裡に亡命の機会を探っていたコンドラシンの下でタイトルロールを歌っているのが『バビ・ヤール』初演の筋金入りのバス歌手ヴィタリー・グロマツキーというのも決して奇遇とは言えない。
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