2021年02月
2021年02月18日
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丁寧な復刻で評価を高めているスペクトラムがフランス国立視聴覚研究所INAの音源をリマスタリングしたディスクで、本家のオリジナル盤ではプロコフィエフとコダーイの他にはマルティヌーのチェロ・ソナタ第2番が収録されていた。
これは1964年6月20日のマレ音楽祭でのライヴ録音だが、音質も比較的良好なので何故バルトークとバッハに差し替えられたのか分からない。
リマスタリングの効果で音色に潤いが出ているが、総てモノラル録音で時代相応の音質であることは否めない。
ただし演奏の方は、いずれも当日の熱気が伝わってくるような緊張感が素晴らしい。
ハンガリーが生んだ20世紀の名チェリスト、ヤーノシュ・シュタルケル。
比類ないテクニックに裏打ちされた非常に表現力豊かな演奏で幅広いレパートリーで聴衆を魅了してきた。
ここに収録された4つの作品はまさにシュタルケルの芸術性を見事に表した傑作揃いだ。
得意としたバッハから母国ハンガリーのコダーイ、バルトーク、そして初演から10年も経たない、当時の新作ともいえる難曲プロコフィエフのチェロ・ソナタ (ロストロポーヴィチとリヒテルにより1950年公開初演されたプロコフィエフ晩年の傑作) まで充実の演奏を聴かせてくれる。
共演のジェルジ・シェベックもさすがの演奏で、最強のデュオが存在感を示した好演を聴かせる。
プロコフィエフの機知に富んだ、しかし終楽章アレグロでの劇的で華やかな曲想を、シュタルケルとシェベックの格闘するようなやり取りと、不思議な調和感で貫くテクニックの冴えで聴く者に一種のカタルシスをもたらす。
またコダーイとバルトークは他の追随を許さないほど彼らのオリジナリティーが聴きどころだ。
彼らは同郷の盟友でもあり、どちらもアメリカに移住してインディアナ大学で教鞭をとった。
この録音が行われた時代は盛んにデュエットを組んでコンサートを行っていたので、彼らの息の合った、しかし一方では丁々発止の合わせが醍醐味だろう。
ちなみにシェベックはフリッチャイとも共演しているが、現役のソロ・アルバムは現在FHRレーベルからのバッハを中心としたプログラムのライヴが1枚リリースされているのみだ。
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フルトヴェングラーのCDなら、 フルトヴェングラー鑑賞室。
2021年02月11日
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イタリア弦楽四重奏団は彼らの長いキャリアの間にドビュッシーの弦楽四重奏曲ト短調Op.10を3回、ラヴェルの同ヘ長調を2回録音している。
このCDに収められた音源はどちらも1965年にフィリップスに入れたステレオ録音で音質も極めて良好だ。
聴く前の予想では前回より角がとれたまろやかな表現になっている筈だと考えていたのだが、全く予想を裏切られた。
1956年のモノラル盤ドビュッシーを聴き直してみたが、その情熱と覇気は音楽の内面に昇華されるどころか、9年後のこのセッションでもますます外側に向かってアピールされ、しかもステレオ録音ということもあって、臨場感は旧盤を凌いでいる。
結成以来既に20年を経過していた当時でさえ、演奏は熟成という方向に向かうのではなく、いつまでも新鮮味を失っていない。
第2楽章の恐るべきピチカートの応酬も健在だ。
やはりこれがイタリア弦楽四重奏団の本来の姿なのだろう。
彼らのフランスものは原色をカンバスにぶつけたような強烈な色彩感があり、それは水彩のデリカシーではなく、圧倒的な油彩の世界に喩えられる。
勿論彼らはいたるところに歌を見出し、メロディーを浮かび上がらせる技でも一級の腕前を持っている。
そこはかとない情緒や陰影には無縁の表現だが、リズムや和声の明瞭な変化とその際立った対比を武器にしてスケールの大きい推進力を生み出して、聴き手を引き込んでやまない魅力に溢れている。
このCDは96kHz 24-BITスーパー・デジタル・トランスファー方式によって2001年にリマスタリングされたフィリップス50グレート・レコーディングス・シリーズのひとつで、鮮明で磨きのかかった音質が蘇っている。
第1ヴァイオリンがパオロ・ボルチャーニ、第2がエリーザ・ペグレッフィ、ヴィオラ、ピエロ・ファルッリ、チェロ、フランコ・ロッシで彼らはカルテット黄金期のメンバーでもある。
英、仏、独語の15ページのライナー・ノーツ付。
ちなみにラヴェルに関しては1968年のライヴ盤がアウラ・ミュージックからリリースされている。
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フルトヴェングラーのCDなら、 フルトヴェングラー鑑賞室。
2021年02月04日
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この録音が行われた1960年はいわゆる冷戦下、アメリカから見れば“鉄のカーテン”で隔てられていた“東側”の演奏家が初めてアメリカに来演した年にあたる。
とりわけリヒテルの2ヵ月にわたるツアーはセンセーションを巻き起こし、RCAによるレコーディングも並行して行われた。
シャルル・ミュンシュとボストン交響楽団のサポートによるベートーヴェンのピアノ協奏曲第1番は、明るくメリハリのあるオーケストラと、当時45歳でアメリカでのデビューを飾ったリヒテルの壮年期特有の覇気に満ちたダイナミックな表現がこの演奏の身上だろう。
ミュンシュの表現が常にそうであったように、この曲においてもベートーヴェンの音楽を内側に凝縮させていくのではなく、逆に外側に向かって発散させるような解放的な演奏が特徴だ。
それは曲自体の性格にもまたこの時期のリヒテルの演奏スタイルにも相性が良かったと思う。
双方に一期一会的な雰囲気があり、そうした意味でも独特の緊張感が伝わってきて興味深い。
ただミュンシュと異なる点は、リヒテルは決して音楽の流れに任せて即興的に弾くタイプのピアニストではなかったことだ。
このディスクに収められている2曲のピアノ・ソナタでも彼のヴィルトゥオジティを発揮した華麗な表現を聴かせてくれるが、それでいて骨太で綿密な音楽設計が明確に感知できる優れた演奏で、後年の内省的な世界を予期させるものがある。
リヒテルは深々とした呼吸で熱っぽく弾きあげた、ダイナミックな根太い演奏で、全篇に溢れる強烈なファンタジーが魅力だ。
この2曲の力強さと抒情性を、巧みに弾きわけていて見事で、全体に、極めてエネルギッシュな表現である。
彼自身はこの演奏を嫌って失敗作のように言っていたが、音楽的な造形からも、またその表現力の幅広さと強烈なダイナミズムからもベートーヴェンに相応しい曲作りで、本人であればともかくあらを探すような次元の演奏では決してない。
1960年の録音になり音質は非常にクリアーで、僅かなテープ・ヒスを無視すれば臨場感にも不足しない、充分満足のいく音響が得られている。
なお協奏曲の方はXRCDとしてもリリースされていて、こちらも選択肢のひとつになる。
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