2021年08月

2021年08月25日


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20世紀を代表するロシアの作曲家ロディオン・シチェドリン(1932-)の作品集になり、最初の2曲は1964年にメロディアによってモスクワでセッション録音されたものだが、比較的鮮明でワイドな音場のステレオ録音であることが特長だ。

オーケストラはコンドラシンの手兵モスクワ・フィルハーモニーで、彼らの代表的なレコーディングといえば、間違いなくショスタコーヴィチの交響曲全集とマーラーの同選集だが、幸いそれ以外にもメロディアには貴重な音源が残っている。

それがこのディスクとスクリャービン及びハチャトゥリアンをカップリングした2枚で、現在いずれも製造中止の憂き目に遭っている。

ただしここに収録された交響的組曲及び管弦楽のための協奏曲第1番『お茶目なチャストゥーシュカ』はヴェニアスからの9枚組のCD8に復活している。

亡命前のコンドラシンのレパートリーを知るための数少ないサンプルでもあり、幸い音質にも恵まれているので、将来SACDなどの高音質化での復活を望みたいところだ。

シチェドリンは自作のオペラ『愛だけでなく』から、交響的組曲として6つの楽章からなるオーケストラル・ワークに編曲している。

管弦楽のための協奏曲でも現代作曲家らしく鮮烈なオーケストレーションと、この時代のソヴィエトでは珍しくユーモラスな感性が反映されているのが印象的だが、コンドラシンのコミカルな作品に対する軽妙な解釈としても興味深い。

歯切れの良い絶妙なリズム感で手際よく纏める手腕は、彼がボリショイ劇場時代に上演した多くの舞台作品から会得した統率力なのだろう。

モスクワ・フィルはコンドラシンによって鍛えられた楽団だけに両者の間には馴れ合いは感じられず、常に特有の緊張感が保たれている。

それはムラヴィンスキーとレニングラード・フィルの関係に一脈通じるものがあるが、レパートリーに関してはムラヴィンスキーより遥かに柔軟で、積極的に同時代の作曲家の作品を採り上げている。

尚コンドラシンが参加していないディスク後半の2曲は『ディオニュシオスのフレスコ画』と『ストラダーニヤ』で、前者はフルート、クラリネット、イングリッシュホルン、ファゴット、ホルンにヴィオラ、チェロ、チェレスタとグロッケンシュピールが加わる9つの楽器のための室内楽作品。

アレクサンデル・ラザレフ指揮、ボリショイ劇場ソリスト・アンサンブルによる1984年の録音。

最後は1976年に収録された、オペラ『愛だけでなく』からピアノ伴奏付ソプラノのためのアリアになり、イリーナ・アルキポーヴァのソロ、ピアノはシチェドリン自身が弾いている。

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classicalmusic at 12:26コメント(0)コンドラシン 

2021年08月18日


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『ラ・ファヴォリータ』は美しいアリアが全曲中にちりばめられた秀作オペラだが、それだけに歌手に頼った作品でもある。

名だたる名歌手を揃えなければ、この曲の声の醍醐味を味わうことができない。

その意味で主役レオノーラにシミオナート、アルフォンソにバスティアニーニはまさにうってつけだが、フェルナンドのジャンニ・ポッジが適役とは言えない。

ポッジの声は屈託のないテノーレ・リリコで、高音も無理なく出すことができるが、悲劇的な雰囲気を表現しきれていない。

おそらく同じドニゼッティでも『愛の妙薬』のネモリーノや『連帯の娘』のトニオなどコミカルな役には最適と思われるが、このオペラでは、特に終幕の危機感を緩めてしまっている。

確かに彼は大音声のハイCも楽々歌うことができたから、1950-60年代のスカラ座では人気者だった。

シミオナートの歌唱が模範的なだけに惜しい。

それはまたエレーデの指揮にも原因がある。

彼は声を生かすことにかけては、第一級の腕を持っているが、オーケストラの統率ではいまひとつ緊張感に欠けている。

逆に言えば歌手の質に頼った指揮者と言えるだろう。

不世出のヴェルディ・バリトン、バスティアニーニのドニゼッティのレパートリーとしても貴重な録音になっている。

彼の代表的なドニゼッティ・オペラと言えばレナータ・スコット、ディ・ステファノと組んだ『ルチア』だが、ライヴでは『ポリウト』のセヴェーロが遺されているくらいだ。

録音は1955年で初期のステレオ録音としては悪くないが、オーケストラの総奏にコーラス、ソロが重なる部分ではやや音質が割れ気味になる。

フィレンツェでの上演演目に合わせたセッションのひとつで、このシリーズには同じエレーデの指揮、バスティアニーニのフィガロ、シミオナートのロジーナでロッシーニの『セヴィリアの理髪師』やガヴァッツェーニの指揮にデル・モナコやチェルクェッティが加わるポンキェッリの『ラ・ジョコンダ』などがある。

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classicalmusic at 17:12コメント(0)ドニゼッティ 

2021年08月12日


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1953年ハンブルクにおいてバスティアニーニはプッチーニ3部作のひとつ『外套』のミケーレ役を歌った。

彼がこの役柄をレパートリーに加えたのはこの時が初めてだったが、これ以外にセッションは勿論、ライヴにも残された録音が見当たらないので、その後もこのオペラを歌う機会には恵まれなかったようだ。

このディスクはその折にハンブルクで収録されたラジオ放送用のモノラル・ソースから制作されたらしく音質は決して悪くはない。

当然モノラル音源になるが、ライヴ特有の雑音や拍手は全くないので、おそらく同地でバスティアニーニのデビュー公演があった時のセッションと思われる。

メンバーは流しの歌手役のルイジ・アルヴァを除いてイタリア勢で固めている。

しかしアルヴァとバスティアニーニ以外は二流どまりの歌手で、演技としての歌唱という意味でもいまひとつというのが正直な感想だ。

シチリア出身のサルヴァトーレ・プーマはドラマティックな声を持っているが、いくらか融通の利かないところがあって表現も一辺倒だ。

トリエステのソプラノ、ノーラ・デ・ローザもこうしたキャラクターの心理や表情の変化を歌い出すには非力のそしりを免れないだろう。

コルドーネの指揮は職人的だが、そつなくこのオペラのドラマ性を描いているのは評価できる。

言ってみれば彼らはバスティアニーニを引き立てるために揃えられたスタッフという印象だ。

勿論彼のこの曲の唯一の音源でもあり、ファンであれば聴き逃せないコレクションに成り得るだろう。

録音当時のバスティアニーニは32才で、若い妻に裏切られた初老の男の愛憎をリアルに理解することはなかっただろう。

おそらく彼は非常にインスピレーションに優れていて、主人公ミケーレの旋律をどのように歌えばキャラクターの心理や作品のテーマを最も効果的に表現できるのか知悉していたのではないだろうか。

特に終盤で歌われるモノローグ「Nulla!...Silenzio!」は、若い頃から性格的な役柄に優れていたバスティアニーニの声と表現力が、ミケーレのおぞましい殺意に収斂していく心理を抉り出していて秀逸だ。

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classicalmusic at 14:27コメント(0)プッチーニ 

2021年08月08日


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このライヴもモーツァルト生誕200年のザルツブルク音楽祭から収録されたものだが、その2年前の1954年の同曲のフルトヴェングラーによるライヴと比較して、ミトロプーロス盤はドラマがよりリアリスティックに描かれている。

フルトヴェングラーの振った『ドン・ジョヴァンニ』は日本風に言えば古典的な歌舞伎に喩えられるかもしれない。

勿論ドラマティックな手法は超一流だが、ミトロプーロスのそれはより新派的で、それぞれの登場人物のキャラクターの扱いも更に細かい。

DVDにもなったフルトヴェングラーの54年の舞台のキャストと多くは重複するが、ミトロプーロスは、テンポの変動を抑さえ気味にしながらも、終盤に向けてに黒い情念を燃え滾らせていて、カロリーの高さには変わりがないものの、ミトロプーロスらしさが光る演奏になっている。

歌手との呼吸などを聴くと、METに何度も登板しているだけに、フルトヴェングラーよりは技術的なオペラ的手腕に長けているとも言えるところであり、4年後に世を去ったこの鬼才の晩年を代表する名盤となっている。

また歌手陣の一部がリフレッシュされているのも特徴だ。

フルトヴェングラー盤でのドン・オッターヴィオ役のアントン・デルモータは貴族然とした青年を演じたが、こちらのレオポルド・シモノーは当時40歳で、全盛期の若々しい歌唱を聴くことができる。

彼はカナダ人だが良く計算された表現でのイタリア風のベルカントを満喫させてくれる。

ツェルリーナはフルヴェン盤ではベテランの大歌手で既に54歳だったエルナ・ベルガーから36歳のリタ・シュトライヒに若返りした。

レポレッロはオットー・エーデルマンからブッフォ役では右に出る者がいないとされたフェルナンド・コレナに替わっている。

彼らがミトロプーロスによって見事に統制され、しかし一方で個性的な演技をする面白さはこのライブの聴きどころだろう。

ちなみにこの年はバックハウスやハスキルが協奏曲を演奏し素晴らしい音源を残すなど非常に豪華なものだった。

おそらく1956年もフルトヴェングラーが存命だったら、おそらく指揮台に立っていただろう。

音質は当時のモノラル・ライヴ録音としては時代相応と言ったところで、鑑賞に不都合はない。

尚同じ音源はオルフェオ・シリーズとは別個にソニーからもリリースされている。

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classicalmusic at 11:49コメント(0)モーツァルトミトロプーロス 

2021年08月03日


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1957年の録音だが、逸早くステレオ・レコーディングを取り入れたデッカのオペラ全曲盤シリーズのひとつで、かなりクリアーな音質が得られている。

キャスティングは当時デッカと契約していた歌唱力、人気共に絶頂にあったオールスター・キャストで、絢爛たる声の饗宴という意味でも現在では望めないようなセッションになっている。

ラ・ジョコンダは当時の新星ドラマティック・ソプラノ、アニタ・チェルクェッティで、しかも彼女が参加した唯一のセッション録音だ。

チェルクェッティはその翌年、マリア・カラスがローマ歌劇場で歌った『ノルマ』で第1幕を終えたところで突然キャンセルしたために、第2幕以降を歌い継いで実力を認められている。

レパートリーは16曲ほど持っていて、ライヴ録音全曲盤は13セットがリリースされているが、彼女自身はわずか29歳で健康上の理由で引退してしまった。

やや硬質だが輪郭のくっきりした声質は、ドラマティックな役柄に相応しい。

『ラ・ジョコンダ』の名盤と言えば、やはりマリア・カラス、ジャンニ・ポッジ、パオロ・シルヴェーリ、ジュリオ・ネーリがヴォットーの指揮で録音した1952年のEMI盤が捨てがたい魅力を持っている。

但しモノラル録音で今一つこのオペラの色彩感や舞台を髣髴とさせる臨場感に欠けている。

またエンツォ・グリマルドを歌うポッジは、確かにライヴで聴けばその大音声に驚いただろうが、CDで鑑賞すると緊張感に欠けて聞こえる。

そうした点で、こちらはデル・モナコのいやがうえにも白熱した緊張感を創り上げる劇的な歌唱に加えて、バスティアニーニの狡猾で性格的なバルナバ、重厚なシエピの演じる悪役アルヴィーゼ、更に熟練のシミオナートのラウラが加わって、暗いストーリーに豪華な花を添えている。

フィレンツェ五月祭管弦楽団を指揮するジャナンドレア・ガヴァッツェーニも流石にイタリア・オペラを知り尽くした人だけに、要所要所を効果的に表現しながら、歌手たちを思いきり歌わせている。

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Profile

classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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