2021年10月

2021年10月29日


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この2枚組CDの1枚目はヴォルフのイタリア歌曲集で、1959年のモノラル録音だが、当時既に59歳のエルナ・ベルガーと30歳のヘルマン・プライが共演したレアな音源だ。

エレクトローラからLPでリリースされて以来初のCD化になる。

ベルガーはコロラトゥーラの大家として『ナクソス』のツェルビネッタや『魔笛』の夜の女王でその驚異的な歌唱を披露していたのが思い出される。

このヴォルフは全盛期のシュヴァルツコップに比較すればややスタイルの古さがあるにしても、あくまでも大先輩ベルガーの存在があってシュヴァルツコップの芸術が開花したことが理解できる。

一方プライはフレッシュで開放的な歌声が魅力だが、それほど深みのある歌唱とは言えないのが残念だ。

尚ピアノのギュンター・ヴァイセンボーンは終曲で鮮やかなコ−ダを弾き切っていて秀逸。

この部分はジェラルド・ムーアに言わせれば、一流のピアニストでも懸命に練習しなければならず、本番では口から火を吹くような勢いで弾くのだそうだ。

2枚目は2人の歌曲集になっていて、なかでもベルガーのシューマン『女の愛と生涯』での声を巧みに制御した表現力は、彼女のオペラだけではなく芸術歌曲への造詣の深さを感じさせる。

むしろヴォルフよりこちらの方がベルガーの良さが表れているように思う。

プライはどの作曲家の作品でも、声の若々しさを別にすればいくらか粗削りで発声に力みが感じられる。

レーヴェの『詩人トム』にはフィッシャー=ディースカウ、イェルク・デムスの情景が目の前に浮かび上がるような素晴らしい演奏があり、それに比べるとずいぶん聴き劣りしてしまう。

ミヒャエル・ラウハイゼンの伴奏もそれほど気の利いたものではない。

ドイツ・リート・ファンでもよほどのマニアでなければ手を出さないセットに違いない。

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classicalmusic at 01:24コメント(0)シューマン 

2021年10月26日


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オーストラリア・エロクエンスは好事家でなければ手を出さないような過去の音源を次々に復活させているが、最近ではバジェット・ボックスのリリースにも熱心だ。

2組のオイゲン・ヨッフムに続いてラファエル・クーベリックのマーキュリーとデッカ音源がそれぞれに纏められて既出で好評だ。

今回はマルケヴィッチのフィリップス及びドイツ・グラモフォンへのレコーディング集が前者26枚、後者21枚でリリースされた。

ワーナーからはイコン・シリーズで18枚が出ているので、この3種類のボックスを揃えるとマルケヴィッチの代表的な音源が揃うことになる。

特にこのフィリップス・レガシーは1959年から1968年にかけての総てがステレオ録音になり、リマスタリングの効果もあって音質は極めて良好だ。

マルケヴィッチの怜悧でシャープな感性を表出させた目の醒めるような演奏は、現在でもその価値を失っていない。

尚ヴェルディの『レクイエム』ステレオ・テイクを始め初CD化の音源も多数含まれている。

マルケヴィッチの演奏の特色は20世紀の新作への先鋭的な解釈とその再現の厳格さ、彫琢するような彫りの深い表現にあるが、意外にフランスの舞台作品でも多くのレパートリーを持っていた。

それは彼が若い頃、パリを本拠地にしていたディアギレフ率いるバレエ・リュスとの豊富なコラボで培ったドビュッシーやラヴェルなどのラテン的感性が活かされているからだろう。

またベルリオーズでも流石にそのオーケストレーションの妙味を体験させてくれる。

問題は価格設定で、小売り先によって値段の開きが大きいことだ。

ヨーロッパでは筆者が購入したアマゾン・ドイツ約120ユーロ程度(16000円弱)で最も妥当な価格で販売している。

それほど売れ筋の商品でもないし、また入手困難な音源を集めた限定盤なので廃盤になってしまえばプレミアム価格で取引されることになる。

残念ながらミドル・プライスのボックスになっていることは否めない。

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classicalmusic at 12:49コメント(0)マルケヴィチ 

2021年10月24日


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バッハの鍵盤音楽のための楽譜を完璧に揃えたいのであれば、ベーレンライターのハードカバーのシリーズか、ウィーン原典版を一冊ずつ購入するかだが、前者はコレクション仕様だし後者を揃えるのは高くつく。

このヘンレー版に関しては、自筆譜の写真や詳細な解説は割愛されているが、楽譜自体は新バッハ全集に準ずる内容なのでベーレンライターやウィーン原典版と同様の信頼のおける校訂がなされている。

しかもここにはバッハの代表的なチェンバロ・ソロのための作品『イタリア協奏曲』『フランス風序曲』『ゴールドベルク変奏曲』に加えて『4曲のデュエット』が組み込まれている。

欲を言えば『半音階的幻想曲とフーガ』を入れて欲しかったが、コストパフォーマンス的にもお奨めできる。

バッハの自筆譜と異なる点は指使いの番号が振ってあることで、これはむしろ学習者にとっては有り難い。

これらの作品は基本的に二段鍵盤のチェンバロを想定して書かれているので、ピアノやシングル・マニュアルのチェンバロで弾く時には指の交通整理が必要になってくる。

例えば同じ鍵盤を両手の指で打鍵する場合はどちらか一方を省くか、あるいは叩く位置をずらせて両手で弾くことも考えられる。

これはその状況に応じて工夫しなければならないが、指使いの番号はそのヒントを与えてくれる。

装飾音はバッハのクラヴィーア・ビューヒラインから、記号に対応する奏法が掲載されているので、それをそのまま使うことによってバッハの求めていた装飾音を再現することができるだろう。

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classicalmusic at 00:02コメント(0)バッハ 

2021年10月21日


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これまでにEMI系の録音集19枚がワーナーからリリースされ、ドイツ・グラモフォンからも70枚のオペラを中心とすコンプリート・ヴォーカル・ワーク集が纏められ、唯一残されていた協奏曲やアンサンブルを含むオーケストラル・ワークの集大成が今回成就した。

勿論ベームは旧フィリップスやデッカにも音源を遺していて、それは38枚+ブルーレイオーディオでユニヴァーサルから別途リリースされている。

ライヴは別としても、これによって彼の仕事の最も重要な部分がカバーされ、彼の芸術が網羅的に俯瞰されることになる。

このセットは67枚のCDに以前単独で出ていたベルリン・フィルとのモーツァルト交響曲全集のブルーレイオーディオを再度加えたボックスで、仕様はラファエル・クーベリック全集に準ずる大きさになっている。

ジャケットはオリジナル・デザインを使用。

曲目に関しては初出音源はなく、ライナーノーツにも新規リマスターの表示はないので従来のマスターを使った収録と思われるが、音質は良好だ。

カール・ベームは14歳ほど年下のカラヤンに比較してレコーディング量がかなり少ない。

1997年に刊行された最初のベートーヴェン・エディションにも交響曲全曲はカラヤン、ベルリン・フィルの録音が採用された。

当時帝王と呼ばれたカラヤンのディスクは超売れ筋だったので、致し方なかったのかも知れないが、指揮に何のはったりもなく、音楽にこれ見よがしのアピールもないベームからは、愚直なまでにひたすら作品に真摯に向かい、常に音楽の原点に立ち返る潔い姿勢が感じられる。

それが言ってみれば彼の個性であり、彼の音楽が長く愛される理由だろう。

尚最後の3枚はボーナス・ディスクで、CD65がベルリン・フィルとのシューベルトの交響曲『ザ・グレート』のリハーサル風景、CD66は彼が語るモーツァルトの音楽について及びウィーン・フィルとのリレーションシップ、そしてCD67はベーム自身の音楽的な人生観とキャリアを語っている。

ライナーノーツの巻末にはアルファベット順による作曲家別のCD索引が掲載されている。

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classicalmusic at 21:08コメント(0)ベーム 

2021年10月17日


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ワーグナー指揮者としてすっかり名声を確立した感のある巨匠ダニエル・バレンボイムだが、バイロイトで上演される主要10作品を収めた本全集は現代を代表するワーグナー指揮者バレンボイムの能力がフルに生かされた名演といえよう。

オペラやオーケストラ・コンサート、コンチェルト、室内楽、ピアノ・ソロや歌曲伴奏に至るまで、膨大できわめて多岐に渡る演奏経験と、豊富に蓄積されたノウハウの数々により、オペラでも素晴らしい手腕を発揮するバレンボイム。

バイロイトでの約20年の実績に加え、音楽監督を務めるベルリン州立歌劇場での約20年のさまざまな実務経験は、バレンボイムのオペラ運営能力を飛躍的に向上させており、現代にふさわしい高度な機能性を欠かすこと無く、十分な深みとロマンティシズムを備えた歌唱を実現することにも成功している。

10の作品は『マイスタージンガー』『ラインの黄金』『ワルキューレ』『ジークフリート』『神々の黄昏』の5作品がバイロイトでのライヴ録音、『さまよえるオランダ人』『タンホイザー』『ローエングリン』の3作品がベルリン州立歌劇場でのセッション録音、『トリスタンとイゾルデ』『パルジファル』の2作品がベルリン・フィルとのセッション録音となっている。

バレンボイム独自のグラマラスな音楽作りと、現代的な機能美の混在した演奏として、たいへん聴きごたえがある。

近年は歌手が小粒になり、ワーグナー特有のアクは希薄になった印象は否めない。

また、指揮者も独自の個性を主張するあまり、ワーグナー本来の姿を見失いがちな傾向が見られる。

そうしたなかで、ワーグナーを聴いた充実感を筆者にもっとも感じさせてくれたのが、バレンボイムだった。

1980年代から90年代にかけて、バイロイトで首席指揮者待遇を受けたのがバレンボイムである。

1981年にジャン=ピエール・ポネルの新演出《トリスタンとイゾルデ》でデビューしたバレンボイムは1988年のハリー・クプファーの《ニーベルングの指環》、93年のハイナー・ミュラーの《トリスタンとイゾルデ》、96年のヴォルフガング・ワーグナーの《ニュルンベルクのマイスタージンガー》など、のべ161公演を指揮して音楽面から音楽祭の屋台骨をささえた。

この公演数は音楽祭史上で抜きん出たものである。

《トリスタン》でみせる大きな音楽のうねり、《リング》の壮大なスケールなど、フルトヴェングラーの精神を引継ぎ、そこに現代の息吹をそそいだバレンボイムの面目躍如たるところ。

80年代には感情移入の激しさのあまり、音楽が空中分解する危険もあったが、90年頃から真の円熟の域に入り、ヴァルトラウト・マイヤー、ジョン・トムリンソンなど「バレンボイム・ファミリー」ともいうべき名歌手とともにワーグナーの高水準の上演を実現している。

92年にはベルリン州立歌劇場の音楽総監督に就任し、そこでクプファーとともにワーグナー主要10作品を順次舞台にかけた。

2002年の春には同一指揮者・演出家による10作品の連続上演という史上初の試みも成し遂げられた。

本シリーズはその間の1989年のベルリン・フィルとの『パルジファル』によって開始され、2001年にベルリン州立歌劇場で収録された『さまよえるオランダ人』で締めくくられており、しかもすべてがドイツにおけるデジタル・レコーディングという音の条件の良さもポイントである。

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classicalmusic at 08:51コメント(0)ワーグナーバレンボイム 

2021年10月15日


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バッハの鍵盤音楽の入門曲と言えば、15曲ずつのインヴェンションとシンフォニアだが、既に異なる版の楽譜を持っている方にもお勧めしたいのが、ウィーン原典版の赤表紙だ。

バッハの自筆譜に忠実で、楽譜として最も信頼がおけるし、運指も妥当な表示でチェンバロ演奏にもそのまま応用できる。

最近はあまり見かけなくなったが、版によってはテンポの指示があったり、スラーがいたるところにつけられていたり、およそバッハの書いたものとは思えない楽譜が横行していた。

初めてこの曲集にトライするのであれば、この版以外には考えられない。

装飾音に関してはどの版もクラヴィーア・ビューヒラインのバッハ自身の奏法を掲載するようになったが、ピアノ教師の中にはいまだに古典派以降の装飾法を教えている先生も少なくない。

この楽譜の運指の表記に従って練習を進めていくのが理想的で、古楽の奏法にも馴染むことができる。

ただしシンフォニアの第3番、第7番、第14番などでは、バッハの書いた通りに弾くにはそれなりの工夫がいる。

勿論参考として巻末に解決策も掲載されているが、演奏者の手の大きさの個人差などで、自分で指使いを開拓しなければならない曲もある筈だ。

そうした経験は更に高度なテクニックを要する平均律や組曲などに必ず役立つ。

いずれにしてもバッハは最高の教材は最高の芸術作品でなければならないと言ったが、この楽譜からは単に基礎的な演奏技術だけでなく、対位法と楽曲の展開の基礎を学ぶことができる。

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classicalmusic at 11:12コメント(0)バッハ 

2021年10月14日


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極上の高音質ブルーレイオーディオ盤により、このディスクのプロデューサーであるジョン・カルショウの「現在望みうる最上の《指環》をレコードで再現したい」という執念のようなものが一層強く感じられる名盤だ。

ワーグナーの巨大な4連作《ニーベルングの指環》のステレオ全曲録音は、ショルティ/ウィーン・フィルの顔合わせによって始められた。

そのレコーディングは1958年9月の《ラインの黄金》に始まり、《ジークフリート》(62)、《神々の黄昏》(64)を経て、1965年の《ワルキューレ》に至るというものであった。

それは、たんに壮大なスケールをもった記念碑的なプロダクションということだけではなく、その後予想もつかなかったような数にのぼる《指環》の全曲盤が登場しているにもかかわらず、総合的に鑑みてこのショルティ盤を超えるものがいまだにないという点において、重要な存在をなしてきている。

そこでショルティは、ウィーン・フィルという伝統的なオーケストラの本質的なものを決して損なうことなく、完全に近代的なアンサンブルに仕立てあげ、ワーグナーの音楽のスタイルを緻密で雄大に展開しえている。

ショルティの精妙な演出と、スケールの大きな、ダイナミックな表現もさることながら、録音効果がまことに抜群で、全曲を飽きさせずに聴かせてくれる。

ロンドン、キング、ヴィントガッセン、ニルソンらをはじめとする歌手たちのすべてが、その時点における最もすぐれた、しかも適切な人々であることはいうまでもない。

すべてにおいて理想的な条件が追究されているということは、レコーディングにおけるひとつの黄金時代であったからこそ可能であったといえなくもない。

ショルティの直情径行のダイナミックな音楽作りは、ドイツの伝統的なものとは一線を画すが、その描写的音楽作りは、耳で聴くドラマとしての聴き易さを生み出しており、更には、プロデューサーのJ・カルショウの聴覚上の演出も一助となっている。

このレコード史上最初の《指環》全曲はイギリスの雑誌が読者投票をもとに選出した20世紀の名盤ベストテンの第1位に選ばれていたが、それは演奏だけでなく、録音、そしてとても採算が合うとは考えられなかった大作がベスト・セラーを記録し、その後のレコード界に及ぼした波及的効果などを考慮されてのことではないだろうか。

ショルティとウィーン・フィル、画期的ともいえる録音もすばらしいが、また今振り返ると、ニルソンとヴィントガッセンが全盛期を迎え、ヴォータンのホッターが最盛期を過ぎつつあるという絶好のタイミングで録音が行なわれたのも幸いだった。

ワーグナー・ファンはもちろん、ワーグナーに興味が乏しい人々にとっても、こればかりは、無視することのできないものであるといってもよかろう。

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classicalmusic at 19:33コメント(2)ワーグナーショルティ 

2021年10月13日


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1960年前後にカラヤンがウィーン国立歌劇場の芸術長だったとき、シーズンの目玉は《ニーベルングの指環》の通し上演だった。

しかし当時のデッカはそれらの上演とほぼ同じ歌手陣とオーケストラを起用しながら、指揮だけはカラヤンではなく、ショルティに任せてしまった。

それをどう思っていたのか、ウィーンを辞めたカラヤンは間もなくザルツブルク・イースターを創始、1967〜70年に上演に並行してクラモフォンに「指環」セッション録音を行なうことにした。

歌手陣もショルティ盤とは異なるが、特色は何よりもベルリン・フィルを起用したことで、精緻かつ重厚な響きが聴ける。

カラヤンの透徹した意志が全4部作を支配し、精妙緻密で洗練された響きの美しさから生まれる抒情性に覆われた、他に類を見ないユニークな「指環」だ。

しかもカラヤンの手腕の恐るべき点は、ゲルマン音楽の伝統的な心理のうねりと巨大なダイナミズムをも盛り込んでいることだ。

その意志は歌手のひとりひとりにまで徹底し、絶妙の心理描写を全員が成し遂げているのである。

「ラインの黄金」は音楽自体のもつ一種の若々しい覇気と、壮大なドラマの発端としての可能性を秘めた率直さが、カラヤンの明快で壮麗な表現の中に見事にとらえられている。

フィッシャー=ディースカウのヴォータンは若々しい知能犯的な性格が面白い。

シリーズ第1弾の「ワルキューレ」は完成度のうえで多少の不満はあるものの、このうえなく精妙で美しい。

従来のワーグナー演奏から余計な脂肪分を取り去ろうとしたカラヤンの意図は、ここでもはっきりと表れている。

「ジークフリート」は完成度のうえで最も素晴らしい出来映えといえる。

精妙で透明なリリシズムの中に、ワーグナーの音楽の新しい姿と生命を発見しようとするカラヤンの意図は、ここでその頂点をきわめた。

旧来のロマンティックな情緒過剰な表現とは無縁の室内楽的透明さをもつ抒情的な美のきわみがある。

「神々のたそがれ」はカラヤンの「指環」の最後を飾るもので、「ワルキューレ」から比べるとその意図も一段と徹底し、ベルリン・フィルの演奏にも、より雄弁な呼吸がうかがわれる。

歌い手の出来にやや不揃いな面があり、「ジークフリート」ほどの完成度はないものの、その中ではみずみずしい情感にあふれ、しかも力強い緊張も兼ね備えたデルネシュのブリュンヒルデは素晴らしい。

古い音源ながら新規の24bit/96kHzリマスタリングも良好で、ブルーレイ・オーディオの長所が良く出ていて、音場がより立体的になり、歌声とそれぞれの楽器の音像もかなり明瞭に聴くことができる。

低音から高音までのオーケストラのサウンドの拡がりも充分で、CDで初めてリリースされた時の音質より格段に向上している。

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classicalmusic at 12:48コメント(0)ワーグナーカラヤン 

2021年10月11日


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フルトヴェングラーによるワーグナーの楽劇「ニーベルングの指環」の録音としては、本演奏(1953年のいわゆるローマ盤)と1950年に録音されたミラノ・スカラ座歌劇場管弦楽団ほかとの演奏(いわゆるミラノ盤)の2点が掲げられる。

このうち、ミラノ盤については、演奏としては極めてドラマティックで壮絶な名演であり、フラグスタートがブリュンヒルデ役をつとめるなど歌手陣は豪華でもあり、先般のキングインターナショナルによるSACD化によって音質が改善された。

これに対して、本ローマ盤は、オリジナルマスターテープがミラノ盤よりも比較的良好であるとともに、歌手陣も錚々たる顔ぶれが揃っていること、そしてオーケストラが、フルトヴェングラーの下で何度も演奏を行っていたイタリア放送交響楽団(RAIローマ交響楽団)であることなど、ミラノ盤と比較するとよりよい条件が揃っている。

従って遺された2つの録音を総体として評価すれば、本ローマ盤をフルトヴェングラーによる楽劇「ニーベルングの指環」の代表盤とするのにいささかも躊躇するものではない。

本ローマ盤は、これまで様々なレーベルによってリマスタリングやLPからの板おこしなどが繰り返し行われてきたが、ミラノ盤よりは良好な音質とは言え、必ずしも満足できる音質とは言い難いものであった。

しかしながら、今から約10年前、遂にEMIがSACD化に踏み切ったのは歴史的な快挙であり、これまでの高音質化の取り組みの究極の到達点とも言えた。

ところがレーベルがワーナーになり、製造工程が改善されたためか、更に素晴らしい音質に蘇ったと言える。

もちろん最新録音のようにはいっていないが、各歌手陣の歌唱も比較的鮮明に聴き取ることができるようになったと言えるし、それ以上に、これまでは団子のような音塊に成り下がっていたオーケストラ演奏が見違えるようなクリアな音質に生まれ変わったことにより、フルトヴェングラーの至芸を大いに満喫することが可能になった意義は極めて大きいと言わざるを得ない。

それにしても、フルトヴェングラーによる楽劇「ニーベルングの指環」の全曲演奏を、このような良好な音質で聴ける日が訪れるとはいまだかつて夢想だにもしなかったところであり、筆者としても長年の渇きを癒すものとして深い感慨を覚えたところだ。

演奏内容は、言わずと知れた不朽の超名演だ。

既に他界されたかつて影響力のあった某音楽評論家が、フルトヴェングラーによるワーグナー演奏をスケールが小さいなどと酷評していたようであるが、氏は一体何を聴いてそのような判断を下していたのであろうか。

本演奏の悠揚迫らぬ確かな歩みと同時に、テンポの振幅を効果的に駆使した圧倒的なドラマ性、そして各登場人物の深層心理に鋭く切り込んでいくような彫りの深い深遠な音楽は、ワーグナーの壮麗かつドラマティックな音楽を完璧に音化し尽くしており、神々しささえ感じさせるほどの崇高さを誇っていると言えるところだ。

これに対し、史上最高のワーグナー指揮者と評されてきたクナッパーツブッシュによる3種のバイロイト・ライヴの高音質化の取り組み(1957年盤のSACD化など)もなされてきたが、思うように音質の劇的改善が望めなかったことから、もう間違いなく、フルトヴェングラーのローマSACD盤こそがワーグナーの楽劇「ニーベルングの指環」の全曲演奏史上最高の名演の玉座を勝ち取ったと十分に考えられると言っても過言ではあるまい。

歌手陣も、さすがは巨匠フルトヴェングラーがキャスティングしただけあって豪華の極みであり、ジークフリート役のルートヴィヒ・ズートハウス、ブリュンヒルデ役のマルタ・メードル、ローゲ役やジークムント役のヴォルフガング・ヴィントガッセン、そしてミーメ役のユリウス・パツァークなど、フルトヴェングラーの渾身の指揮とともに、これ以上は求め得ないような最高の歌唱を披露しているのが素晴らしい。

イタリア放送交響楽団も、フルトヴェングラーの確かな統率の下、ドイツ風の重厚な名演奏を繰り広げているのを高く評価したい。

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classicalmusic at 17:35コメント(0)ワーグナーフルトヴェングラー 

2021年10月09日


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1973年の録音をハイブリッドSACD化したもので、SACDで聴けばより鮮烈な音質で鑑賞できる。

このディスクの特徴はソロのヘルマン・バウマンを始めとしてウィーン・コンツェントゥス・ムジクスの全員がピリオド楽器を使用し、ピリオド奏法で演奏していることで、モーツッァルトの時代に聴かれたであろうサウンドと音楽的な趣味が再現されている。

指揮するアーノンクールはオーケストラにある程度の抑制をかけながら、ロココ風の軽快な音楽を心掛けている。

彼らはバロック音楽蘇生の黎明期に貢献した最初期のピリオド・アンサンブルで、その意味では老舗の風格を持っている。

弦楽器は総てガット弦を使い、ヴィブラートをかけない、よりストレート弾き方はそれまでのモーツァルトの音楽からはイメージできない響きがあった。

一方ホルンはバルブ機能のない、管を巻いただけのナチュラル・ホルンで、伝統的には領主たちが狩りの時に森林で合図を送っていたものだ。

しかし楽曲に応用するには倍音とベルに手を入れて調節するゲシュトップ奏法に加えて、微妙な圧力の相違を唇の変化でスケールを創るという至難の業が要求される。

倍音だけでは高音になると平均律とは振動数の差が生じるために、調子外れに聴こえてくるので、こうした現象をコントロールしながら、音楽性を保つのは容易ではない。

しかしバウマンの表現は流石に巧い。

また倍音が豊富だと勢い音が割れやすいが、うまく使えば彼のように野趣豊かで力強い演奏効果が得られる。

その高音の透明感、まるで歌をうたっているかのような自然な演奏、そしてオーケストラ埋もれない個性を繰り広げており、現在に至るまで、この演奏を凌ぐ盤は存在していない。

ちなみにバウマンは、この録音の十年後にモダン・フレンチホルンを使った同曲集を、ピンカス・ズーカーマン指揮、セント・ポール室内管弦楽団とも録音している。

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classicalmusic at 13:43コメント(0)モーツァルトアーノンクール 

2021年10月05日


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ベームは晩年にウィーン・フィルの気の置けないメンバーとモーツァルトの管楽器のための協奏曲や室内楽を集中的に録音した。

この7枚組のセットには編曲物のフルート協奏曲第2番ニ長調を除いた管楽器が加わる総ての協奏曲と室内楽のための代表的なセレナーデ及びディヴェルティメントが収められている。

尚このうちセレナーデ第6番『セレナータ・ノットゥルナ』、同第7番『ハフナー』、同第9番『ポストホルン』と同第10番『グラン・パルティータ』の4曲に関してはベルリン・フィルとの協演になる。

協奏曲の独奏者はそれぞれがウィーン・フィルの首席奏者を務めたメンバーばかりで、総てオーケストラの団員でカバーしてしまうところにウィーン・フィルの実力が窺われる。

元来ベームはモーツァルトを得意としていたが、また彼らに対する注文の煩さ、細部への要求の頑固さなどでも良く知られていた。

全曲を通じて中庸の美を頑固なまでにわきまえ、整然とした秩序の中に表現された演奏集で、遊びを許さないベームの生真面目な性格が良く表れている。

しかし彼らには強い仲間意識があって、とりわけ指揮者、ソリスト、オーケストラが家庭的な和やかさ、親密さで演奏を楽しんでいる雰囲気さえ伝わってくるのも特徴的だ。

ここに収められた協奏曲集の中でもフルートのヴェルナー・トリップ、オーボエのゲルハルト・トゥレチェク、クラリネットのアルフレート・プリンツ、ファゴットのディトマー・ツェーマン、そしてホルンのギュンター・ヘーグナーが、各自会心の出来と言うべき自由闊達でしかもウィーン流にこだわった見事な演奏を披露している。

特に4曲のホルン協奏曲はヘーグナーがソロにウィンナー・ホルンを使用した数少ない録音になる。

音が割れやすい上に音色が渋く、奏法が難しいウィンナー・ホルンは、しかし彼のような名人の手にかかると如何にもモーツァルトに相応しい情緒と趣を醸し出してくれる。

特有のくすんだ音色の魅力もさることながら、控えめながら上品で巧みな表現が秀逸だ。

セレナーデでは、第13番『アイネ・クライネ・ナハト・ムジーク』1曲目のト長調のように、ごくポピュラーなレパートリーにおいてもウィーン・フィルの自然発生的な歌心の流出はやや抑えられて、洗練された音楽性と古典派特有の形式美の表出のほうが勝っている。

こうした解釈が聴き古された名曲にかえって新鮮な印象を与えているのは指揮者の力量の示すところだろう。

一方『ポストホルン』ではモーツァルトの多彩でシンフォニックなオーケストレーションを遺憾なく再現した精緻で、しかも力強い指揮ぶりが冴えている。

また当時のベルリン・フィルのスター・プレイヤー達、ジェイムズ・ゴールウェイやローター・コッホのソロの美しさと巧妙なアンサンブルが花を添えた魅力に溢れる演奏だ。

尚メヌエットで活躍するポストホルンのソロはホルスト・アイヒラーが担当している。

1970年から79年にかけての録音で、音質は極めて良好。尚この7枚組のボックス・セットはSHM−CD仕様の日本盤でも再リリースされている。

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classicalmusic at 09:04コメント(0)モーツァルトベーム 
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早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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