2007年12月03日

ナタン・ミルシテインの芸術


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ミルシテインについては私の友人が「ハイフェッツより断然上。ミルシテインに比べるとハイフェッツなんて下手くそ。」とまで言い切ったので、ここで疑問を呈したい。

筆者はミルシテインというヴァイオリニストがどうも苦手だ。

聴いてる最中はものすごくうまいと思うし、音色も非常に美しく感心することしきりなのだが、聴いてしばらく経つと、もうその感銘が残っていない。

ミルシテインは結局何を主張したかったのだろう?というわけだ。

ミルシテインは一見ザッハリヒなようでいて、実はニュアンス豊か。微妙な表情づけが素晴らしく、何よりテクニックが鮮やかである。

でも心を揺り動かされることがないのだ。同じスタイルでさらに優れたヴァイオリニストがいるような気がする。そう、ハイフェッツである。

ミルシテインはレパートリーの広いヴァイオリニストだったが、なぜか他の名ヴァイオリニストが自らの真価を問うシベリウスのヴァイオリン協奏曲を録音していない。

力強く豪快な表現が必要なシベリウスをレパートリーに入れていないところをこの人の見識とみるか、限界をみるか…。

筆者はそういうわけでミルシテインにあまり関心が湧かない。それでも上記「ナタン・ミルシティンの芸術」は充分に聴き応えがある。

どの協奏曲も磨き上げられた美しい音、冴えた技巧によって、鮮やかに曲想が描き出されている。

愛想の良い性格ではないが、その表情には洗練された豊かさがあり、格調が高い。

いずれも感傷とは距離を置いた爽やかな歌に、ミルシテインの柔軟な感性、時代と共に歩んできた感性を認めることができる。

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classicalmusic at 08:48コメント(10)トラックバック(0)ミルシテイン | ハイフェッツ 

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コメント一覧

1. Posted by アマリリス   2008年01月29日 11:56
こんにちは、私のマイナーなブログにお越しくださいまして、どうも有難うございました。何度もトラバされてるようなので何か?ところでミルシティンの見解は、ごもっともだと思います。シベリウスなどは、彼の奏法ではきついですよね。その点、コンソレーションのような曲は、彼の奏法に合いますね。たぶん、パールマンは合わないような気がします。お腹いっぱい満たしてくれるような演奏よりも私は、ナタンのような知性的なほうが、あとからずしっとくるものがあります。好みだと思いますよ。
2. Posted by 和田   2008年01月29日 12:23
アマリリスさん、コメントありがとうございます。

私のミルシテインに対する評価に共感していただきとても嬉しく思っています。

私の友人がミルシテイン命なんですよ。

コメントを参考にさせていただき、またミルシテインを聴いてみます。
3. Posted by arrau   2008年02月02日 19:26
ミルシテイン命の友人です。

私にとってハイフェッツとミルシテインの差は、演奏技術や訴求力の差というより、スタイルの差なのです。
ハイフェッツは20世紀前半という時代に自分のスタイルを完全に合致させて研ぎ澄ました演奏をしています。私にはその過度にロマンティックでアゴーギクの利いた自己主張の強い演奏が、説得力があると感じるより、表現の自由度が足らない偏った演奏で、また硬直したテクニックであると思えてしまうのです。

20世紀前半に活躍した演奏家は指揮者でもメンゲルベルクやワルターの様にロマンが過ぎる演奏家がいますが、彼らには表面のロマンティックの奥には普遍的な憧憬のような、現代の人間にも共通するメッセージがあります。反面、ハイフェッツは彼らよりはテクニック的によっぽどマシですが、結局のところ、ロマンティックな演奏を好む時代の空気をまとったタダのテクニシャンのように感じてなりません。
4. Posted by arrau   2008年02月02日 19:28
ミルシテインはその面、音楽的な演奏をするためのテクニックしか持ち合わせていませんので、人をあっと言わせるような派手な表現はしません。その分時代の注目は低かった訳ですが、逆に時代の好みに適合し過ぎていない、自然で健康的な演奏スタイルが、自由で普遍性の高い演奏を生み出します。
しかも純度の高く美しい音はハイフェッツには無い特性ですので、音楽的な演奏をするテクニックは断然ミルシテインが上、と断言してしまいたくなるのです。

掲載されている2盤の素晴らしさはご推薦の通りですが、もう2つ愛聴盤を記載させて頂きます。
どちらもEMIから出ていますが、.潺襯轡謄ぅ鵝Ε蹈轡▲凜.ぅリン名曲集−是非ヴォカリーズを聴いて下さい。その音楽の美しさに純粋に心打たれるはずです。59年に録音されたメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲−1楽章カデンツァの後7分30秒辺りからのアルペッジオの精妙な美しさは誰にも無い魅力です。
5. Posted by arrau   2008年02月02日 19:51
△CDをメンデルスゾーンの終わった後もかけっぱなしにしておいたら、チャイコフスキーの何とチャーミングなこと。是非1楽章7分過ぎからのハイフェッツとは一味違ったスーパーテクニックをご堪能下さい。
6. Posted by 和田   2008年02月02日 20:01
ハルトナック著『ニ十世紀の名ヴァイオリニスト』(白水社、松本道介訳)は、いまは知る機会のない往年の大ヴァイオリニストたちの素顔や芸風を我々に教えてくれるじつに有難い著作。ハイフェッツのページに印象的な一節がある。
「ミルスタインをオイストラフと比べることはできよう。グリュミオーはコーガンと、フランチェスカッティはスターンと(中略)。しかしハイフェッツに関しては、あらゆる比較が不可能なのである」
それほどまでに、ハイフェッツのテクニックは完璧であり、音色の輝かしさは他の追随を許さず、しかも好不調の波も僅かで、いかなるときも破綻をきたすことはなかったのである。
ハイフェッツのヴュータン「ヴァイオリン協奏曲第5番」を聴いてみてくれたまえ。凄味だけではない。音色と節回しにゾッとするような色気がある。
7. Posted by k   2013年06月10日 21:15
5 両者とも甲乙つけがたいと思います。競合するメンチャイブラームスはそれぞれ持ち味があり、(単なるアプローチの違いだと思います)あとはその曲になにを求めるかによって好き嫌いがはっきりするのでは…筆者はミルシュタインはドボコンとグラズノフから聞き出しました。非常に感激しました。またハイフェッツはブリッフとシベリウスから入りました。これもまた名演でした。いずれも愛聴盤です。むりに優劣をつける必要はないと思います
8. Posted by 和田   2013年06月10日 21:50
kさん、コメントありがとうございます。
確かに必ずしも両者に優劣をつける必要はないとはいえ、ハイフェッツはヴァイオリニストの王者、ミルシテインはその他大勢の中の1人というイメージは変わっていません。
音楽性から見れば互角でしょうが、完璧なテクニックと歌い回しで今日のヴァイオリン演奏の礎を築いた点、後世のヴァイオリニストへ与えた影響の大きさという点を鑑みると、ハイフェッツは抜きん出ていると言えるでしょう。
トスカニーニがハイフェッツを「私の知る最高のヴァイオリニスト」と絶賛したことは、まさに至言ではないでしょうか。
9. Posted by k   2013年06月11日 07:06
コメありがとうございました…僕はハイフェッツとミルシュタインをその時の自分の聞きたい気持ちによって使いわけています。全てにおいて絶好調な時はハイフェッツ・精神的に安定したいときはミルシュタイン…ただ前者のほうが多いのでハイフェッツに少しだけ傾いているかな。オケとのバランスにおいてはミルシュタインが上回ることもあるので、ミルシュタインが好きという人はその点に惹かれると思います。しかしハイフェッツから醸し出される色香は他の追従を許さないものであり(バルビローリとのサンサーンス序奏とロンドカブリチオーソがその適例です)逆にバッハのヴァイオリン協奏曲第2番における甘美な音がやりすきであるからミルシュタインの方が…との印象になるのでは?遠い学生時代に、ハイフェッツのブラームス協奏曲よりミルシュタインアパドの方が良いと友人にやりこめられたことがありますがこの一言をもってミルシュタインのほうが上とはならないというのが僕の私見です。ハイフェッツが抜きんでて秀でているという意見には9割方同感です。残りの一割は聴くときの心境によってかなと思います
10. Posted by 和田   2013年06月11日 08:42
なるほど、私もそんな意見にほぼ同感です。
たまにはミルシテインのスタイリッシュな演奏を聴きたくなる時もありますしね。
例えば、バッハの無伴奏なんかは、ミルシテインの方が圧倒的に評価が高いですが、私はハイフェッツの方を聴くことが多いです。
理由はミルシテインに情熱の迸りがあまり感じられないことで、同じスタイルなら、ハイフェッツの熱演を聴いた方が、充実します。
好みの問題もありますがね。

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早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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