2007年12月18日
夭逝の天才ピアニスト〜ディヌ・リパッティ
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私の最も愛好するピアニストがディヌ・リパッティである。
1950年、33歳で白血病に没したルーマニア生まれの天才。
リパッティの残した録音は多くはない。
彼の演奏の魅力は、その演奏が完全に知的に、そしてもちろん技術的にコントロールされたものであり、しかもそこから純粋な音楽表現が立ち現れるところにある。
その根底にあるのは、表現の清潔さと音楽への溢れんばかりの愛と献身。
そして力は精神力。
作品にこびりついているさまざまな解釈を洗い落した新鮮な表現は実に見事だ。
録音時期が古いため、音質の点で多少物足りない思いがするが、それをものともせずに、底光りする輝きをもって聴き手に迫ってくるのが、リパッティの音楽。
音楽そのものは実にクリアーだ。
微妙で繊細な息づかいのなかから、豊かな詩情がほのかに漂ってくる。
ここに収められている作品の様式は極めて多彩だが、彼にとって演奏することは、あくまでも自己の解放であったのだろう。
そしてそこに開かれる世界は実にナイーヴで、至福感すら帯びている。
バッハのパルティータ第1番とコラール「来たれ、異教徒の救い主よ」は、最晩年のリパッティの愛奏曲だったが、これらの詩情豊かな彼の歌に耳を傾けていると、わずか33歳でこの世を去ってゆかなければならなかったリパッティの心情に心が疼く。
なんと哀しい美しさなのだろう。
このところ哀しい美しさを感じさせてくれる演奏家がめっきり減っているので、哀惜の念は強まるばかりだ。
バッハのコラール「イエスよ、わたしは主の名を呼ぶ」と「シチリアーナ」は誇張ではなく、涙なしには聴くことが出来ない。
このピアニストが人間としても多くの人々から愛された理由が、この演奏を通してよく理解できる。
リパッティの音楽を聴いていると、短い生涯ではあったが結局やるべきことはやったのだ、という思いを強くする。
小曲といえどもリパッティはとても大切なものとして演奏しているから、決して軽く聴くわけにはいかない。
ここで立ち現れるヒューマンな音楽との幸せな関係は、今私達が見失いがちな、だからこそ無上に貴いものである。
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