2007年12月21日
バックハウスのベートーヴェン:ピアノ・ソナタ全集
この記事をお読みになる前に、人気ブログランキングへワンクリックお願いします。
バックハウスの正確無比なテクニックが発揮された、風格豊かできわめてスケールの大きい古典的な価値を持つ名演である。
バックハウスの弾くベートーヴェンは、神経質なところが少しもなく、重厚で骨太、およそ物に動じない風格があり、雄大さを表出している点がさすが。
聴き手に"洗練"をイメージさせるような演奏ではない。何が起ころうとも決して動ずることがなさそうな、そんな骨太の表情が演奏全体を貫いている。
ちょっと聴いたところでは、素朴で武骨な印象を与えるかもしれない。だが、聴き進むにつれ、素朴さの中に底流している人間的な温かさに気づき、惹かれるようになる。
それがバックハウスのベートーヴェンなのだ。
やや冷淡とも思えるほどさらりと弾いている曲もあるが、それでいて、いかにもこれらの曲を長年弾きこんできた、老熟したうまみのうかがえる演奏だ。
器用で小回りがきくピアニストは多いが、悠揚迫らぬ大人の風格のあるピアニストは、近年めっきり少なくなってしまった。
そういう意味で、このバックハウス盤の人気は、今後長く持続するのではあるまいか。
バックハウスは、ベートーヴェンの音楽の肉声を伝えてくれる。
人間が音楽をすることには、伝統も歴史も異にする私たちにすら強く訴えかける、何ものかがあることを強い説得力ともって語りかけてくるのである。
このような演奏を聴くとき、演奏解釈の歴史やテクニックの開発の歴史を越えて、音楽というものが持ちうる力について真に考えさせられるのだ。
80歳前後の演奏にもかかわらず、技巧の衰えもなく、随所に枯淡の境地といったものがにじみ出た名演である。
ところで、クラシック音楽情報ならこちらがオススメです。
人気ブログランキング
フルトヴェングラーのCDなら、 フルトヴェングラー鑑賞室。