2008年01月03日
アルゲリッチのシューマン:クライスレリアーナ&子供の情景
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アルゲリッチのシューマンを聴く悦びは、フレーズのそこかしこから枯れることなく汲み出されてくる、驚くべき多彩なニュアンスの妙味に心ときめかせ、ときに奔放な気まぐれだとの思いに駆られながらも、その奔放さに秘められたあまりにも自由闊達な即興とみずみずしい感性に彩られた限りなく愛おしい情感にほだされて、知と情のバランスを絶えず情の方へ崩してゆきそうな危うい領域で、綱渡り的なアクロバットに自ら巻き込まれてゆくときの、墜落してゆくような幻惑にも似た快感にほかならない。
それは《クライスレリアーナ》のような理性と狂奔と抒情の渦巻くさなかの名技性のなかでは、完全無欠の姿となって湧き起こってくる。
粒立ちのよいタッチが招き寄せる感覚的な満足を遠心力としながらも、同時に芯の強い音楽作りがもたらすところの、絶えず曲の中心へと引き寄せる求心性を感じさせながら、両方向へと引きちぎられるような痛みと快感を併せ持った絶頂感を伴って、アルゲリッチの演奏は聴き手の耳へと迫ってくる。
それは、一見他愛もない《子供の情景》の音楽のなかで、むしろいっそう顕著となり、部分の微細なデフォルメを常に施しながら、それをそうとは感じさせない、秘技とも言うべき独特の術策によって聴き手を虜にする。
してやられたと気づきつつも、それから逃れられないことを知った人間は、やがてアルゲリッチの演奏に憂き身をやつすことになろう。
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