2008年02月11日
リヒターのバッハ:音楽の捧げもの
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1963年の録音にもかかわらず、いまだにこれを超えるディスクは出ていない。
この曲の平凡な演奏は"寄せ集め"的印象を強めるが、この演奏は晩年のバッハが到達したポリフォニーの世界を一種の緊張感をもって再現している。
ピリオド楽器による演奏が興隆する以前に、決定的な評価を得ていたバッハは、かっちりとした響きと切れのいいリズムが大きな特徴である。
チェンバロ独奏、3人の弦楽器奏者、フルートとヴァイオリンと通奏低音など、小編成で演奏した《音楽の捧げもの》においても、各奏者がリヒターの意図を汲み、独特な緊張感が保たれており、指揮者として、カール・リヒターの名がひときわ大きくクレジットされていることが納得できる仕上がりになっている。
かつては、アプローチの峻厳さが取り沙汰されることが多かったものの、豊かに語りかけてくるニコレのフルートや盤石の通奏低音が印象的であり、今なお色褪せることがない名演が収録されている。
古楽器が復活され、その演奏がかなり広まってきたことには、それなりの意義はある。
しかし、それは、近代楽器によるバッハなどの演奏を否定できるものではないし、それによっては決して超えることができない世界があるということを、このリヒターらによる《音楽の捧げもの》が立証してくれる。
ニコレのフルート、リヒターのチェンバロをはじめとする通奏低音、マイネッケのヴィオラなどによって、そこに築かれた音楽の深さや大きさは忘れられていた"人間"の存在を、音楽家たちに思い起こさせてくれるに違いない。
特に「トリオ・ソナタ」は忘れ難い風格がある。
我々が求めるべきものは、数百年前ではなく、1960年代前半にさえあったのである。
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