2008年02月13日

未完に終わったギレリスのベートーヴェン/ピアノ・ソナタ集


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ギレリス後期のレコーディング活動は、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ全集がメインとなった。

残念なことに、彼の突然の死によって、全集の完成はあと5曲を残して未完になってしまったものの、録音された27曲の演奏内容はどれも充実したものばかり。

ゆったりとした歌が魅力で、これらの名曲を手中にした自信のようなものがあり、未完ではあっても、今日のベートーヴェン演奏の最高の指針といえよう。

かつての「鋼鉄の腕をもつピアニスト」も、すっかり角がとれて、福徳円満な巨匠に円熟している。

聴きものはやはり後期のピアノ・ソナタ。

「ハンマー・クラヴィーア」は驚くほど高い透明度を持った演奏。

あたかも作品の構造そのものが自らの意志で音楽として鳴り響くという趣だが、これは知と情が作品の特質に従ったバランスを見せるということで、完璧に音楽的な演奏といえる。

余分な感情の動きや情緒のひだがまとわりつくということもない。

そしてギレリスのいわば構造的演奏は第4楽章のフーガでその真価を十全に発揮している。

ひとつの規範となる現代的解釈の名演。

第30番と第31番は1985年10月に急逝したギレリスが残した文字通り最後の録音。

いずれも流麗な演奏で、年齢からは考えられないほどみずみずしい響きだ。

特に第31番は出色の出来で、フィナーレのフーガの前に置かれているアダージョ・マ・ノン・トロッポは、もの悲しい淋しさをしずしずと歌いあげ、弛緩した趣が全くなくてさすが。

ここにはギレリスが到達した最後の境地が示されている。

しかもこの2曲からは、強い精神集中の向こうに、より開かれた世界をうかがい知ることができる。

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コメント一覧

1. Posted by Kasshini   2014年09月01日 14:11
最近、youtubeで、ポリフォニーを浮かびあがらせるグールド、レコ芸人気1位のポリーニ、生前ベートーヴェン最高の解釈者と称えられたバックハウス、今でもドイツでは人気が高い、ケンプ、シュナーベルと聴いて一番印象的だったのが、このギレリスの演奏でした。嘆きの歌で朗々と歌い上げ、心に響きます。透明感、緻密さ、繊細さ、力強さ、歌、雄大さ、すべてが最高に統合されているように感じました。
和田さんのお気に入りは誰でしょうか。
また、ヴァインガルトナーの編曲はどう思われますか。個人的には、アダージョがベートーヴェンの作品から考えると、後世のロマン派世代の歌わせ方。使用していない楽器がどうかなと思いつつ、よく編曲できているなと感じました。第九のスケールに近づくとともに、第九以上に弦楽四重奏曲第13,14番に近接する作品であることに気付きました。ゆえに第九、ミサ・ソレムニス以上の自信作ではないかとも思えるようになりました。
2. Posted by 和田   2014年09月01日 16:00
以上挙げられた以外のピアニストでは、エリー・ナイも私のお気に入りですが、わが国では不当に低く評価されてはいないでしょうか。
彼女のベートーヴェン演奏は、バックハウスやケンプとは比較にならぬほどの狢嵯畢瓩鉢犒桧姚瓩鮟犬瓩討い泙靴拭
ドイツ・ピアニズムの精神性を狄仰瓩亮仝気砲泙嚢發瓩燭里ナイの演奏であり、ドイツ的な精神文化の最も美しきものとしてのベートーヴェンの、最もドイツ的な演奏は、バックハウスでもケンプでも、ハンゼン、E・フィッシャーでもなく、爛團▲里僚神瓩鳩桧Δ気譴織┘蝓次Ε淵い力寝擦巴里襪海箸できます。
ことにベートーヴェンの後期ソナタ群の中で、最も形而上的な内容をもつ作品109をナイはまったく別の視点から捉え、この終楽章が到達した至福の彼岸は、ベートーヴェンの精神の本質を具現したものと言えます。
ベートーヴェンの「精神美の本質」を、最もドイツ的な語法を用いて演奏したナイの録音は永遠に伝えられるべきものです。

ワインガルトナーの「ハンマークラヴィーア」のオーケストレーションは、2管編成にピッコロ、コントラファゴットまで加えた凝りに凝った音楽で、いかにもワインガルトナーのベートーヴェンへの敬意と愛情に満ちたものと言えるでしょう。
実はこの編曲、近年再評価が著しく、あの準=メルクルも取り上げているほどで、編曲芸術の堂々たる傑作だと思います。

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Profile

classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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