2008年02月22日
ウィルヘルム・バックハウス/最後の演奏会
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1969年6月26日と28日の両日、バックハウスは南オーストリアのケルンテン音楽祭に招かれ、リサイタルを開いた。
ニ日目の演奏途中、急に具合が悪くなり、最後の曲目であるベートーヴェンのピアノ・ソナタ第18番のフィナーレを弾けなくなってしまった。
しばらく楽屋で休んだ彼は、ベートーヴェンの代わりにシューマンの「夕べに」と「なぜに」、シューベルトの即興曲変イ長調D.935-2を弾き終え、そのまま病院に運ばれたが、7日後の7月5日、心不全のため、ケルンテンのフィアラで85歳の生涯を閉じたのである。
この、バックハウスの最後の演奏会は幸い録音されている。
ここに聴く巨匠の音楽は、何と強靭で確固としたものであることだろう。
「ワルトシュタイン」の清涼な美しさ、シューベルトの3曲の率直な味わい深い表現など、まさしく晩年のバックハウスのものである。
ベートーヴェンのソナタ第18番は精彩がなく、演奏は中断されるが、シューマンの小曲2曲の枯れた、だがみずみずしい抒情の美しさなど、辞世の歌というにふさわしい絶品であり、その深い瞑想と寂寥感において他に比肩しうるピアニストはいない。
単なる記録という意味を越えた、音楽とは何かを考えさせられる演奏である。
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