2008年03月17日
クレンペラーの「魔笛」
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クレンペラー80歳直前の1964年の録音。
クレンペラーのモーツァルト/オペラ第1作で、続いて「ドン・ジョヴァンニ」、「フィガロ」、「コシ」が録音されている。
なお資料によればポップは当盤がデビュー盤であった。
またヤノヴィッツもデビュー当時の最初期の録音となる。
3人の侍女にシュヴァルツコップ、ルートヴィヒ、ヘフゲンという豪華メンバーでも話題を集めた。
数多いクレンペラーのモーツァルト中でも、これは際立って優れた演奏である。
台詞をすべて省略した演奏だが、それはクレンペラーが絶対音楽としての純潔さを志向していることを物語っている。
モーツァルトが晩年に達した精神の深みが、ここで、見事に突っ込んで表現されている。
重点は陽気で自堕落なパパゲーノの世界からタミーノの克己、ザラストロの博愛の方に相当傾いているが、このくらい深々と演奏されると、それが、また良いのである。
一般に、クレンペラーの録音では、木管が、はっきりと聴きとれる。
モーツァルトが木管の扱いに天才的な手腕をみせた「魔笛」のような作品ではそれがことに効果的で、夜の女王の第1アリアにおけるバセットホルンの響きなど、ポップの初々しい名唱と相俟って、心に迫る。
ポップはこの録音に歯の麻酔をかけたまま臨んだのだそうだが、このアリアにおける母の悲しみの情感豊かな表現は、今もって、凌駕されていない。
クレンペラーは序曲からして、雄大な風格とスケールをもって威風堂々と表現する。
豊かな響き、重厚なディナーミク、信念に満ちた画然たる表情。
クレンペラーの意図は、ドラマの成りゆきやジングシュピールの枠をはるかに超えて、ひたすらにモーツァルトの音楽そのものだけをいかに立派に響かせるかにある。
この剛直できびしい表現が「魔笛」のすべてではないが、そこに豊かで生き生きとした血と肉を与えたのは、充実したキャストによる見事な歌で、ひとつの完成した世界を生み出している。
クレンペラーの遺したモーツァルト・オペラ全曲盤の中では最も優れた、傾聴に値する名演である。
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