2008年04月05日
ボレットの弾くリストの真髄(巡礼の年)
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リストは、ボレットのレパートリーの核となっている作曲家で、それだけに、リストの音楽に対する研究と情熱は恐るべきものだ。
これも、そうした彼の姿勢がよくあらわれた演奏で、悠然と弾き流しながらも、きわめて彫りの深い表現となっている。
ボレットは、驚嘆すべきテクニックで、ひとつひとつの曲を、心をこめてひきあげている。
ボレットは「スイス」の示す本質的にはきわめて孤独な詩情に深く立ち入り、そこに込められた表現を本質的に解釈しきっている。
また、その演奏はラテン的な明晰さとともに、きわめてデリケートなバランス感覚をもつもので、その均衡のとり方は一貫して見事だ。
いかなる場合でも響きに対する配慮を決して失わず、響きからつぎの響きへと、ファンタジーを飛翔させる。
全9曲、興味を持続させて飽きさせない。
ことに〈ウィリアム・テルの聖堂〉〈泉のほとりで〉〈夕立〉などを聴いていると、それらの曲の標題の内容が、眼前に浮かんでくるような、実に巧妙な表現で、素敵だ。
ボレットの演奏には、「イタリア」のロマンティックな情念を完全に楽譜からくみ取っているという自信と、表現を作るうえでの余裕すら感じられる。
ボレットの演奏は、とても70歳とは思えないほど、音楽に張りと艶と若さがあり、まことに新鮮だ。輝かしい音色も、大変魅力的である。
「ダンテを読んで」はたくましく激しい表現で、ここでボレットが聴かせる壮大な演奏は、さすが《リスト弾き》の名に恥じないものだ。
サーカス的に書かれていないリストの作品から、そのエッセンスを見事に引き出した名演といえよう。
*ベヒシュタインのEW280を使用。
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