2008年04月15日
リヒターのバッハ:カンタータ集
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カンタータもまた、リヒターが遺したバッハ演奏の重要なレパートリーだが、現代楽器を使い、伝統を踏まえながら前時代のロマンティックな感情移入を避け、曲の本質に迫っていったリヒターのバッハ像は、20世紀のバッハ演奏のひとつの頂点を作り上げた。
彼はあくまでもドイツ的思考の上に立った"倫理としてのバッハ"を築きあげており、各カンタータはこれ以上の彫琢はないと思えるほど細密な配慮と考証のもとにひとつに結ばれている。
リヒターらしい厳格なバッハ像が描かれている点ではどの作品も変わりなく、1曲1曲の作品ではF=ディースカウやヘフリガーをはじめ、リヒターのバッハ演奏に欠くことのできないすぐれた独唱者たちの歌唱を聴くことができる。
ことにBWV.140は独唱者のすばらしさで光る理想的な名演だ。
リヒターの最晩年、1978年に録音された演奏で、円熟の高みをきわめたこの人のバッハ観が、見事にあらわされている。
実に緻密な音楽づくりで、この曲を一分の隙もない格調の高い作品として再現しており、内面的な掘り下げかたも深く、オーケストラ、合唱団ともに、リヒターの要求によくこたえている。
リヒターは人間の精神の脆弱さを衝き、叱咤し、バッハを通じて人々が神に近づけるよう全ての力をバッハに捧げた指揮者だったが、このカンタータの録音を始めた頃から、苛烈なまでの求道的精神から転じて、人間的なあたたか味のある、またロマンティックな傾斜を見せている。
今のバロック音楽演奏はオリジナル楽器全盛だが、我々はもう一度リヒターの遺した偉業をふり返り、彼の真摯なメッセージを新しく受け取るべきだろう。
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