2016年05月18日
プライ&ビアンコーニのシューベルト3大歌曲集
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ドイツ・リートを得意としたヘルマン・プライが、その最円熟期に録音したこれらのディスクは定評がある。
《冬の旅》はこの人にとって3度目の録音だけあって、その表現方法は以前よりもさらに練れており、今までのものと比べて今回のプライは冷静に作品を見つめ、かつてよりも深く旅人の心を歌い出している。
この演奏の大きな特色は、それまでにない冷静な目で作品を見つめていることで、プライの円熟ぶりがうかがえる。
F=ディースカウよりも、よりロマンティックな表現で、主人公の若者を、あたたかく見守るようにして歌い上げているのが特徴だ。
また年齢的な声の衰えを感じさせないどころか、かえって自由さを獲得している。
使用楽譜もクリティカル・ヴァージョンによっている。
南ニース生まれの若いピアニスト、ビアンコーニもしっかりとした弾きぶりだ。
ここには失意の青年への暖かい愛情が基本線にある。
《美しき水車小屋の娘》は、1985年に録音されたディスクで、プライにとって3度目の録音にあたる。
プライの声は、相変わらず若く艶やかさを失わず、以前の2回の録音と比べても、声の豊かさにはいささかの遜色もない。
内向的なF=ディースカウの歌唱に比べると、プライはこみあげる思いを外に表出していくタイプだ。
その明朗で新鮮な歌声はこの人ならではのもので、ひとりの青年の甘く悲しい恋愛物語を、実に率直に表現している。
前回の1973年の録音の時よりも、さらに淡々とした運びかたで、聴き手を自然と作品の中に引き込んでゆくような不思議な魅力がある。
《冬の旅》はバリトン、《水車小屋》はテノールで聴くのがいいという定説が出来上っているようだが、プライのいちずな若者そのものの歌は、まさにこの歌曲集の主人公そのものだ。
ビアンコーニのピアノも《冬の旅》の時よりさらにシューベルトらしいナイーヴな世界を描き出している。
以前は感興のおもむくまま、のびやかに歌い上げることの多かったプライだが、1984年に録音されたこの《白鳥の歌》の演奏は、内面を深く見据えた姿勢をとり、外面的な効果をねらわず、じっくりと豊かな音楽をつくりあげている。
若々しく美しい声は以前と同じだが、プライが今回もなお若々しさを失わず、これほどの年輪の豊かさを加えたのは喜ばしく、さらに人間的な味わいの加わった歌唱だ。
ここでは、かつての彼にみられた情感に溺れる傾向もなく、行き過ぎた表現もなく、素直な感動をもたらしてくれる。
特にレルシュタープの詩による歌曲がすぐれており、「すみれ」と「遠い地にて」は名唱。
ハイネの詩による曲では「アトラス」と「影法師」が素晴らしい。
ビアンコーニの伴奏も若いが、みずみずしい演奏。
録音は歌曲の録音の模範ともいえるきわめて鮮明な音質が素晴らしく、プライの艶やかな声が見事に収められている。
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