2008年05月01日
ポリーニのリスト:ピアノ・ソナタ
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ポリーニ初にして唯一のリスト・アルバムは、このピアニストの本領が十二分に発揮された圧倒的な名演である。
ポリーニはブレンデル同様、リストを名人芸や過大なロマンティシズムから解放したピアニストである。
演奏は、鍛え抜かれた音の構築物と呼ぶにふさわしい。
間然するところのないコントロールという点でクールな凄さをもっており、聴いていて苦しくなるほどに凝縮した音の世界をつくり出している。
ポリーニは虚飾を捨て、楽曲本体のみを見据えながら、明らかに熱いエネルギーを注いで演奏している。
余分な思い入れを一切入れない潔さで弾き通されたこのリストは、名演中の名演だ。
強靭で自在なテクニックと桁はずれの集中力をもってこの大作に臨んだポリーニは、凄まじい緊迫感やドラマティックな表情の起伏を実現させると同時に、すこぶるキメ細やかで精妙な表現力をも示し、最も理想に接近したこの作品の再現を可能たらしめている。
難曲中の難曲として知られるソナタだが、ポリーニは、その超凡な技に少しも角立てることがない。
むしろ、精妙な弱音での表現や音色の美しく多様な表現力が大変に雄弁に生かされており、それだけに演奏のしなやかな切れ味がいっそう印象に残る。
しかも、その透徹した表現は、常に美しくひき締まった緊張感をたたえており、深く澄んだ歌を秘めている。
スケールの大きさや豊かさは、単に超絶技巧と大音量からではなく、音色やタッチの精妙を極めた使い分けから生ずることを、この演奏ほど効果的に教えてくれるものはあるまい。
ポリーニの演奏は、前人未踏の境地に至ったリストの実像に迫るにはこれしかないことを教える説得力がある。
名手が全存在を賭けて世に問うた名演である。
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