2008年05月01日
クレンペラーのバッハ:マタイ受難曲
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大学生のころ、私はこのCDを何度も聴き、バッハのすばらしさに、身も心も酔いしれる思いを味わった。
特に、ある女がイエスに香油を注ぎかけたというレチタティーヴォからアルトの悔恨のアリアに至るあたりや、「備えせよ」のバス・アリアから最後の大らかな合唱に入るあたりは、正直のところ、涙なくしては聴くことができなかった。
クレンペラーはこの受難の物語の中から、人間の普遍的な愛情の襞にまで入り込んで、すべての人物が人間の愚かしい行動を是認しなければならない苦しさを描き出していく。
これはクレンペラーならではの世界だろう。
全体に遅めのテンポ設定が主流をなしているが、彼にとってこのテンポは不可欠なものに違いない。
雄渾な音楽づくりの中にも、クレンペラーの老巧な棒さばきと、張りつめた緊張感とが身近に伝わってきて、テンポ設定ひとつにしても、やや遅めにとり、コラールも重厚に、コラールフェルマータも、様式からはみ出さない限度においてテヌートを加えるなど、細心の注意が行きわたっている。
1961年の録音だけにシュヴァルツコップもF=ディースカウの声もまだ瑞々しい。
ルートヴィヒのアルトも沈痛だ。
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