2008年08月24日
テンシュテット引退直前のマーラー・ライヴ
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病気のため現役を退くことを余儀なくされたテンシュテットが、引退直前に残したライヴ。
テンシュテットは1970年代から80年代にかけて録音したマーラーでも、過剰な感情移入を排し、ひたすら作品の本質に迫る卓越したアプローチを見せていたが、病魔のため今度はいつ指揮できるかわからない状況のなか、ここではまるで何かにとり憑かれたような、いっそう圧倒的な演奏を聴かせている。
マーラーがこの曲を作曲したときと同じような心境に追い詰められたテンシュテットの大仰ではない、真に深い苦しみが刻印された第6番、難解な作品の全貌を解き明かし、一貫した論理によってまとめあげた第7番といずれもこの指揮者ならではの名演である。
「悲劇的」では、感情の制御と意識の集中の見事な均衡が両端楽章での演奏を、名優、名脇役が出揃った見事な演出の名舞台を見るような気持ちで聴かせる。
スケルツォでのグロテスクなものと愛らしいものとの頻繁な転換に対応した見事な表情変化は、テンシュテットならではの至芸だ。
情熱的燃焼が、マーラーの感情と形式に見事に重なり合いながら、スコアの指示から逸脱しないところに彼の近代性がある。
「夜の歌」は、この作品がこれほど甘美な旋律に満ちた作品であることを、改めて発見させてくれるような演奏である。
テンシュテットのマーラー像は、人間臭く、あたたかく、耳に快い。
ここには心にしみ入るような情緒が素直に表されており、それが聴き手を魅惑せずにはおかない。
マーラーの中にある感傷が、これほど純粋に表現された演奏は珍しい。
ロンドン・フィルの響きは実にまろやか。
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