2008年11月18日
トスカニーニ&NBC響のベートーヴェン:交響曲全集
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演奏はすでに語りつくされた名演揃いで、現在の様式感覚とは異なった一面もあるが、そうした問題を超越してトスカニーニの偉大な芸術性に改めて感嘆させられる。
この指揮者の情熱と意志力、そして明晰な歌謡性が総合された独自のスタイルは、余人の追随を許さない。
かつてトスカニーニの指揮は、アメリカを中心に現代の演奏様式に非常な影響を及ぼしたが、ベートーヴェンの交響曲全集は、彼の芸術を代表する名演揃いである。
しかしトスカニーニの演奏は、現代の音楽学的な研究の観点から眺めると、もはや過ぎ去った時代の表現という感がないわけではない。
かつて楽譜に忠実といわれた解釈も、現在の眼で見るとそうではなく、かなりロマン的で主観的な表情や解釈をまじえている。
しかし彼の場合は、音楽が凄いほどの生命力をもっていることを、いまも高く評価せねばなるまい。
現在、トスカニーニの演奏は楽譜に忠実という意味ではなく、視点を変えて受容されることが必要な時代といえる。
これらの演奏にみなぎる極度の緊張力とカンタービレの魅力、ドイツの伝統にしばられない率直な表情などが、改めて評価されてよいのである。
ここには明快な歌と灼熱の生命力をもった音楽があるが、現在の演奏では、ベートーヴェンに必要な意志的な力が、トスカニーニほど端的に示されることが、なくなってしまった。
したがってトスカニーニの演奏は、現在では新しい意味を感じさせる。
特に第3,5,7,9番の奇数ナンバーの曲は、作品の特色が攻撃的にあらわされて、聴き手の精神を高揚させずにはおかない。
なかでも第9番の解釈には、耳を洗われるような清新さがある。
やはり、これらの9曲は、ひとつの時代を画した演奏といえるだろう。
現代のベートーヴェンを語る上で、どうしても聴きのがせない珠玉の集成である。
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