2008年12月05日
フルトヴェングラー/ルツェルン「第9」1954
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フルトヴェングラーの「第9」とくれば、バイロイトのライヴにとどめを刺すというのが、大方の見方だ。
感動にみちた劇的な演奏で、たしかにこれに比肩しうる演奏はまれだ。
しかしこのルツェルンのライヴも捨てがたい。バイロイトのそれよりも音楽的に深く、純粋で、フルトヴェングラーの演奏でも特筆すべきものといえる。
造形的にも無理がなく、この名指揮者の最晩年に到達した至高の境地を遺憾なく示している。
その清澄な心境と思索的な趣は、まさに余人の追随を許さない。
フルトヴェングラーは心にわだかまる鬱然とした情念を気高い精神に変貌させてゆくのを得意とする指揮者だった。
その彼も晩年にはラテン的な明澄さと造形感を模索しはじめる。
この「第9」はそうした晩年の傾向を示す典型な録音で、ライヴであるにもかかわらず、明晰な枠組みと透明なひびきを特徴とし、ひとつひとつの星がくっきりと見える澄み渡った夜空が開け出ている。
あるいは表現的な抑制に賛否両論が出るかもしれないが、この浄化された、高雅な音楽世界は、バイロイトの演奏よりもさらに深い境地にあるとも感じられる。
第3楽章も淡々としながら、強い説得力をもち、終楽章の優秀な独唱陣、気力にみちた合唱の鮮烈な表情もすばらしい。
その神秘的な奥行と清澄な広がりは、フルトヴェングラーが達しようとした最後の境地だったかもしれない。
SACDによる高音質も非常に良好で、フルトヴェングラーのディスクでも最も高く評価したいもののひとつである。
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コメント一覧
1. Posted by テレーゼ 2008年12月05日 08:54
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とても素晴らしい情報をありがとうございます。
まずは聴かなくては!と思いました。
とても素晴らしい情報をありがとうございます。
まずは聴かなくては!と思いました。
2. Posted by 和田 2008年12月05日 08:58
フルトヴェングラーの第9というと、バイロイト盤だけがよく知られてますが、ルツェルン盤にはこの大指揮者の最後の境地が示されています。ぜひ一聴下さい。