2008年12月07日
ブッシュSQのシューベルト「死と乙女」
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シューベルトがこの弦楽四重奏曲を作曲したのは、自分が不治の病にかかったのを知ったときだった。
どうしてこんな目に会わねばならないのか、彼は底知れない絶望にとらわれ、憤怒と苦悩の入りまじった激しい思いを、この曲の冒頭でぶちまける。
しかし一方で、苛酷な現実と折り合い、自分をなだめながら、狭い選択肢のなかで生きて行く道を見つけていかねばならない。
この曲のそんな手探りに最も近いのがブッシュ四重奏団の演奏だ。
身もよじる絶望と悲しみのなかで、藁にもすがるようにわずかな希望を見いだそうとするシューベルトのけなげさは、今にも切れそうな細い綱の上を渡ってゆく危うさを示し、いつ墜落するかというスリルをはらみ、胸を痛くさせられる。
希望は、はかなければはかないほど、いっそうそれにすがりつきたくなるのが人情。
人が人生に対していちばん真剣になるのはそのときだ。その心理にもっとも突き入ったのがブッシュの演奏だ。
当時の流行としてポルタメント奏法も多いが、それは明るい甘さを出すよりも、悲しく溢れた涙をぬぐうかのようである。
このような個性の強い演奏法には向き不向きがでることは事実だが、ぴたりとはまった時には無類の絶品と化する。それが、この「死と乙女」である。
世の中にはこの名曲のCDは無数に出ているが、その中でこの演奏ほど「死」の恐ろしさ、悲しさを感じさせてくれるものは断じてない。
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