2008年12月10日
バレンボイムのモーツァルト:後期ピアノ協奏曲集
この記事をお読みになる前に、人気ブログランキングへワンクリックお願いします。
バレンボイムは同じく弾き振りでイギリス室内管弦楽団と全集を完成していたが、ほぼ20年後に録音されたこの後期ピアノ協奏曲集の演奏は、やはり一段と充実している。
若々しくモーツァルトに挑んだ旧盤と違って、ここでのバレンボイムは円熟した表現を細部まで懐深くしなやかに、強い意志をもって徹底している。
しかも、ニュアンス豊かな演奏は、決して細部に偏ることなく、確かな統一感と明快な構成感を失うことがない。
いま指揮者と独奏を兼ねて古典派のピアノ協奏曲を演奏したとき、バレンボイムほどに縦横に振る舞える音楽家はほかにいない。
ビデオで彼の演奏を視聴するとよく判るが、指揮者として各楽員の気持ちをよく汲めるほかに、ピアニストとしての表現を通してますます彼らを発奮させ、共演の喜びを掻き立てる技と音楽に優れているからである。
ここでも自在にテンポや表情を動かして、心憎いまでの読みと余裕を聴かせる。
バレンボイムの明確でやや硬質のタッチは、旋律にもリズム型にも常にすっきりした輪郭を与えている。
彼の解釈は強い意志を反映しているが、決して一本調子にならず、細かい感情の変化を伴っている。
円熟期にあることを実感させるバレンボイムのピアニズムは、凝縮された表現の緻密さとしなやかに広がる抒情の喜びを併せ持ち、モーツァルトの世界をかつてない豊かさで歌い上げている。
ベルリン・フィルの表現力が大きいこともバレンボイムの解釈にふさわしく、このオーケストラの威力が遺憾なく発揮されている。
ところで、クラシック音楽情報ならこちらがオススメです。
人気ブログランキング
フルトヴェングラーのCDなら、 フルトヴェングラー鑑賞室。