2009年03月12日

ミルシテインのチャイコフスキー&メンデルスゾーン&ブラームス:ヴァイオリン協奏曲


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チャイコフスキーが名演だ。

すっきりとした淡白な表現だが、強弱のニュアンスがまことに豊富であり、歌と情感に満ち、節回しの微妙な色合いや個性もよく出ている。

チャイコフスキーのセンチメンタリズムからは程遠いが、およそヴァイオリニスティックな美しさという点では他に比べるものがない。

第1楽章の程良いメランコリーの表出とリズミックな展開、第2楽章のソフィスティケートされた抒情、そして第3楽章のまさしく手に汗を握る完璧なヴィルトゥオジティ。

アバドのキリリと引き締まった伴奏と相俟って、これは最もスタイリッシュなチャイコフスキーだ。

特に第2楽章は静けさのうちにも心のこもった表情が豊かで、何より音色が美しい。

アバドの指揮もリズミカルでさわやかだ。第2楽章のウィーン・フィルの夢見るような木管が陶酔的。

メンデルスゾーンも独特の気品ある美しさを発散しており、洗練された技巧と音色が光っている。

ミルシテインの特徴であるこの上ない自発性、曲の形式感に対する知的なアプローチ、清潔で暖かみのある音色、正確無比なアーティキュレーション、ずば抜けたリズム感が生み出す躍動感、そういったものが一体になってメンデルスゾーンの世界を見事に描き出している。

ミルシテインは切れ味鋭いテクニックの持ち主だが、それを誇示することなくひたすら音楽表現に生かすタイプのヴァイオリニストだった。

このブラームスの演奏にもそうした芸風が端的に現れている。

毅然として聴衆に媚びず、力強い響きによって弾き進めるブラームスはこの曲の表現のひとつの理想と言えるだろう。

しかも、音楽の佇まいはつねに清澄である。

そしてなにより、ここで共演しているヨッフム指揮のウィーン・フィルが見事というほかない。

ブラームスの協奏曲でオーケストラが単なる伴奏役にとどまらないのは言うまでもない。

ここではソロと同等、時によってはそれ以上に発言するオーケストラの芳しいばかりの表現にも心惹かれる。

聴き込めば聴き込むほどに味わいが増す類の名演である。

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早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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