2009年03月14日
「エリーゼのために」〜ケンプ/ベートーヴェン:ピアノ小曲集
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ケンプ向きの曲が収められている。つまり集中力とエネルギーをあまり必要とせず、歌謡性と抒情性が際立っている作品。こういうところでケンプは持ち味を発揮する。
「エリーゼのために」をなんの気負いも感じさせず、ごく自然に歌いあげて聴き手を説得してしまうのは見事。
スケールの大きさこそないが、独特の味わいがあって耳を傾けさせる。
ベートーヴェンのピアノ曲のうちで、いちばん地味で小じんまりとし、聴き手に強くアピールするような演奏効果をあげるのが難しい曲が並んでいる。
そうした曲にあっては、無理に面白く聴かせようと小細工をしたりせず、正攻法で風格豊かに弾きこなす巨匠の演奏のみが、曲の真の聴き応えを教えてくれる。
その意味で、ケンプの演奏が最高である。
ケンプは、もともと技巧の冴えを誇るピアニストではなく、また演奏法もむろん旧世代のそれで、たとえば特別繊細な弱音効果を駆使して感覚鋭い音楽を聴かせたりはしないが、なによりも曲に対する愛と尊敬をもって、フレーズのひとつひとつを、大切に心をこめて弾いてゆく。
しかもベートーヴェンを繰り返し弾き込んだ豊富な演奏体験と研究・考察から、ベートーヴェンのピアノ音楽のなんたるかを知りつくし、自分の確固たる演奏様式を確立している。
ベートーヴェンの小曲集が、安定した古典的様式を得て、素直で愛らしく、しかも凛とした気品をもった音楽となるのである。
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