2022年03月07日

無心なバーンスタインの心から投影されてくるベートーヴェンの《ミサ・ソレムニス》は、民族国境をこえて、まさしく世界をひとつに結ぶ力をもっている


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活動の拠点をヨーロッパに移したバーンスタインが定期的に指揮台に立ったオーケストラのひとつであるアムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団との初顔合わせ録音だった。

個人的なことだが、ウィーンを中心にヨーロッパで活躍するようになったバーンスタインの円熟を最初に教えてくれたのが、この1978年にライヴ録音された《ミサ・ソレムニス》だった。

このオーケストラやウィーン・フィルといった確固とした個性を持つ楽団との共演を通して、バーンスタイン最円熟期の芸風は確立されていた。

このベートーヴェンでも、それ以前の彼と大きく印象が異なることが実感される。

バーンスタインによる《ミサ・ソレムニス》は、ニューヨーク・フィルとの1960年録音もあるが、当曲がベートーヴェンの最高傑作であることを実感させてくれる稀有の名演である。

この曲はヒマラヤ高峰のような至高かつ峻厳な趣をたたえている。

しかしバーンスタインの演奏はニューヨーク・フィル時代の彼には珍しく柔和な表情を示し、ヒューマンなあたたかみに満ちている。

何の理屈もなく、ただひたすら聴き込まされてしまうような熱演を行なっているのがバーンスタインである。

作品に対する深い共感はオーケストラの伝統的な表現イディオムと一体になり、真に感動的な瞬間を生み出している。

劇的に高揚した場面でも決して上滑りになることなく、宗教的な感動に根差した深い表現が実現される。

演奏会の雰囲気をそのまま収めているだけに、その緊張感には独特のものがあり、バーンスタインの率直でひたむきな情熱といったものが、聴き手にひしひしと伝わってくる。

いかにもバーンスタインらしい作品への共感度が、ライヴ録音によって一段と強く表出され、きわめて劇的で集中力の高い演奏となっている。

バーンスタインらしい、そしてライヴならではの集中力や熱気とともに、作品への共感が少しも力づくになることなく、しなやかに懐深く歌われている。

白熱した昂揚と真摯な沈潜がつくる劇的な表現の幅も驚くほど大きいが、それが決して作為的なものにならず、オーケストラと合唱、独唱者たちが渾然一体となって、ベートーヴェンがこの大作にこめた感動を高らかに歌い上げている。

まさに合唱、オーケストラ、独唱が、聴衆を含めて一体となって、ベートーヴェンの音楽に没入しているかのような感じを受ける。

それら全てが友愛の精神に貫かれ、しかも格調の高さを失っていない。

繊細な神経が隅々にまで行き渡りながらも、調和の理念がスケール大きく展望され、真摯な祈りがこもり、最後は充実した和音感でしめくくられて感動的だ。

アムステルダム・コンセルトヘボウの柔軟な反応力は見事である。

無心なバーンスタインの心から投影されてくるベートーヴェンの音楽は、民族国境をこえて、まさしく世界をひとつに結ぶ力をもっている。

この求心力、緊張力の持続はライヴ独特の強味でもあり、バーンスタインの人となりが明らかになった名演と言える。

カラヤンのよく計算された、完璧ともいえる演出の巧みさこそないが、ここには素晴らしい集中力と、爆発的な熱狂がある。

独唱はベテラン揃いで、なかでもモーザーのスケールの大きな歌いぶりや、シュヴァルツの端正な歌唱は見事だ。

声楽陣も、この指揮者の真摯な姿勢に感化されたような、スケールの大きい充実した歌唱を展開しており、すべての演奏家が最大の力を出しきった、全く自然に音楽を作っていく様は感動的である。

録音もコンセルトヘボウ独特の豊麗でコクのある非常に好ましいものだ。

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classicalmusic at 00:02コメント(0)ベートーヴェン | バーンスタイン 

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classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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