2009年04月16日
クレーメルのバッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタとパルティータ(旧盤)
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全6曲をきわめて集中力の強い演奏で弾き上げているのはクレーメルである。
シゲティの"精神"的な演奏や、シェリングの端正だが気迫のこもった名演のあとで、底知れぬスケールの大きさを感じさせたのがクレーメル盤であった。
クレーメルはヴァイオリン的とか美感とか、感覚的な享楽性を完全に排除して、ただひたすらバッハの作品を完璧に忠実に再現しようと心掛けた、現代の演奏家の良心のようなものを感じさせる。
技術的にはまったく完璧そのもので、これほど非情に弾き上げられた例は、前代未聞といえるだろう。
抜群のテクニックで、これらの技巧的な作品にみなぎる劇的な性格を、独自の創造精神であらわした演奏で、各曲を、鋭く、激しく、あざやかに弾きわけながら、豪快で、かつ、緊迫した音楽をつくりあげている。
ここでのクレーメルは、かつてないほど激しく鋭角的な表現を目指す。ここまで気迫がこもっているのは、クレーメルの覚悟の大きさを思わせる。
肉を切らせて骨を切るといった、武道の奥義といった風情すら窺える。
それは3曲のソナタによく表れており、特にフーガ楽章、最終楽章での気迫の充実が注意をひく。
超人的な技術を必要とするフーガがことにすばらしく、難しい三重音や四重音を楽々とこなしている。
またパルティータでは、さまざまなリズムをもった各舞曲を、メリハリをきちっとつけながら弾きあげていて、見事だ。
クレーメルの演奏を聴いていると、ヴァイオリンの演奏を聴くのではなく、音楽そのものを味わう気になってくるから不思議である。
パルティータ第2番終曲のシャコンヌは、極めて構造的な解釈と演奏で、楽譜を依りどころとして鮮やかに鳴り響いており、その鋭利な演奏は言語に絶する凄絶ささえ感じられる。
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