2009年05月14日
クナの「パルジファル」
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ワーグナーはやっぱり《パルジファル》に神秘的な性格を与えようとしていたに違いない。
現在ではむしろこの作品の神秘のヴェールは取り除かれ、響きの美しさなどが前面に出てきて現代化されたのだけれど、神秘性を切り捨てるわけにはいかない。
となってみると、クナッパーツブッシュが実現させた、神秘のヴェールの奥に輝く《パルジファル》はその効力を失わないことになる。
ジェス・トーマス、ジョージ・ロンドン、といった歌手陣は、たとえそこにハンス・ホッターのグルネマンツという希代の名唱を加えても、すでに上映史の領域に入っている。
クナッパーツブッシュの指揮だって当然ながら過去に属しているのだけれど、歌が宿命的に持つ過去への後退をぎりぎり免れているのではないか。
ほとんどリズムの感覚などなく、あくまでゆったりと指揮者は《パルジファル》の中に入ってゆく。
前奏曲で奥地への道に踏み込んでしまったら、あとは聖林を信じるほかはなくなる。
信じたら、儀式への参列の切符を手にしたも同然。
そして第1幕で、また第3幕で、いつ果てるともなく、と思えるくらいの感覚で繰り広げられる儀式に、同化し、陶酔するほかはなくなる。
もしかしたら、聖林は、金メッキしたまがいのものであるかも知れないのだが、クナッパーツブッシュの作り出す大きなうねりは、決してそれを気づかせず、崇拝させ、起こる奇跡に法悦を覚えさせることになる。
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