2009年05月22日
ヤノヴィッツ&カラヤンのR.シュトラウス:4つの最後の歌
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《4つの最後の歌》には、シュヴァルツコップとセルによる、人生との決別への思いを静かに深く伝えた名盤もあるが、ヤノヴィッツとカラヤンによるこの演奏も素晴らしく、ともに傍らに置きたい思いがする。
ヤノヴィッツは艶やかな声で全曲にわたってむらなく美しく歌っているばかりでなく、その人間ばなれのした美声で息長く、器楽のようなフレージングで歌っている。
その声はとても人間の出すものとは思えないほど純粋だが、それがこの"彼岸の音楽"にふさわしい。
ヤノヴィッツもさることながら、ここでも心憎いほど巧妙なカラヤンの棒の魔術に酔わされる。
カラヤンとベルリン・フィルは隅々まで磨き抜かれた至高のオーケストラ演奏を繰り広げており、その耽美的で限りないほどの美しさに魅了される。
ヤノヴィッツの美声とカラヤン芸術が、R.シュトラウスの音楽への共感をきわめて美しく澄んだ表現によって伝えた名演というべきだろう。
カラヤンは、R.シュトラウスが第2次世界大戦に敗れた祖国ドイツへの挽歌として書いた《メタモルフォーゼン》の曲想を余すところなく表出しており、暗鬱で悲痛な表現には強く心を打たれる。
カラヤンはまた、しなやかに集中した流れの美しい演奏の中に、一筋縄ではいかない《死と変容》の美しさを透徹した表現と間然するところのない変化によって描きつくしており、ベルリン・フィルの響きと精妙な色彩の美しさも無類である。
カラヤンにとって、R.シュトラウスの世界は、何の無理もなくスムーズに溶け込めたものなのであろう。
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コメント一覧
1. Posted by Kasshini 2016年12月09日 09:25
今さらながら聴いてます。YouTubeで聴いた感想だと、ポップとテンシュテット、シュヴァルツコップとセル、プレヴィンより好印象。冒頭のような部分的無調は、聴きやすいです。ヤノヴィッツの透明感溢れる声は、彼岸の歌を体現している印象です。ボーイソプラノ、ソプラニスタが歌うと映える印象です。想定していた歌手は、マリア・イェリッツァなんだろうと思います。眠りにつくときのグレの歌を思わせるオーケストレーション、夕映えの中にの清澄に満ちた響きも。WPhのホルンやクラリネットが生きそうな歌です。死ぬ前に聴きたい、葬式でというのもわかる気がしますね。メタモルフォーゼンもよかったです。
2. Posted by 和田 2016年12月09日 18:31
「4つの最後の歌」はこれまで様々な演奏が録音されてきましたが、先に挙げられた以外では、ジェシー・ノーマン&マズア盤がかつてのシュヴァルツコップ&セル盤に匹敵するか、それを超えた名唱だと思います。ノーマンの豊かな表現力が、ここでも最高に発揮されていて、これほど作品の内面に深く迫った表現というのも少なく、彼女はここで作品の“いのち”を読み取っています。R.シュトラウスの人生の終わりにあって、これまでの歩んできた道を回想する4つの歌をこのようにさり気なく、深い感情と共感をもって歌い上げられるのは信じ難いくらいです。ゲヴァントハウスの艶やかな響きも、彼女の声の味わいをいっそう深めています。