2009年05月23日
クレーメル&アルゲリッチのベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ全集
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異色の組み合わせだが、結果は大成功である。
2人のテクニックがすぐれているばかりでなく、デリケートなニュアンスを要求する部分でも万全の構えである。
クレーメルとアルゲリッチはデビュー当時から、すこぶる個性的な表現で知られ、それによって聴き手を魅了し続けてきた。
大胆と情熱のアルゲリッチに対し、繊細と鋭敏のクレーメル。こんな風にその芸風は大きく異なっている。
だから2人の共演は、激しい緊張を生むことが予期された。
拮抗する2人の独奏家が繰り広げる名技は、スマートで精妙、優れて知的なベートーヴェンに欠かせない強靭な求心力と集中力も必要にして充分なものであり、聴き手を惹きつけた。
前者はクレーメルのリードする力がより強く、後者はアルゲリッチのリードする力がより強く作用したのではないか。
強烈な個性の持ち主である2人が、違いを超えて音楽的調和を手に入れるべく協力し、それを実現するのは、大きな楽しみ、大きな悦びであった。
2人の独奏家の個性が強ければ強いだけ、実現された調和は密度が濃く感じられる。
当盤がまさにそう。
ヴァイオリニストが格上、ピアニストが格下の関係では、こんな演奏は望めない。
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コメント一覧
1. Posted by Kasshini 2021年03月29日 04:43
この演奏はアルゲリッチの本能に赴くままの豪放磊落に、クレーメルが正反対の合いの手を入れる印象的なものでしたね。ルービンシュタインでもこんな豪放磊落な演奏してない(゚Д゚)ヴァイオリニストは、クライスラー及び歴代ヴィーンフィルコンマスOBの甘い優美で歌心あるものか、ナタン・ミルシティンかジノ・フランチェスカッティの耽美で歯切れのいい歌心が好みですが、アルゲリッチは書いた演奏者の競演はなく、どれかベストか決めあぐねいてますね( ´-` ).。oO
2. Posted by 和田 2021年03月29日 12:16
これは時代の美意識が生んだ名盤です。伝統的な室内楽のあり方をある意味で継承し、ある意味で打破しています。継承している点は両者の音楽的対話が非常に密であること。ハイフェッツ&スミスのようにピアノが家来のように扱われたり、メニューイン&ケンプのように異質な個性を共演させた違和感はここにはありません。2人の目指す方向は完璧なテクニックを駆使した譜面指示の完全な再現であり、ほとんど一音ごとに移り変わる濃やか、かつ大きな表情です。内輪で地味な表情に人間感情を秘める従前の室内楽演奏と異なる、外に向かって大きく訴えかける演奏。それは、現代の大会場に解き放たれた室内楽演奏の変貌した姿そのものと言えるでしょう。