2009年05月26日
バレンボイムのベートーヴェン:ピアノ・ソナタ全集
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バレンボイムによるベートーヴェンのピアノ・ソナタ全集は、エンジェル盤に続いてこれが2度目。
ここで目立つのは、手際の良さ、語り口の巧妙さであり、これはバレンボイムの指揮者としての活動が長いことと関係があるのだろう。
やや軽い印象もあるが、初期の作品ではこれが良い方向に作用している。
晩年の作品になると、たとえば「ハンマークラヴィーア」など、書かれたテクチュアがいかに厚いものであろうとも、バレンボイムは透明感のある、薄く美しい響きで聴かせる。
最晩年のソナタの緩徐楽章でさえ、非常に抒情的である。
懐が深いというか、鷹揚というか、バレンボイムの弾き表わす音楽にはコセコセしたところがまったくない。
それでいて細部の魅力もきちっと押さえられた素晴らしい演奏である。
数年前のベルリンでのソナタ全曲演奏と同じに、余分なものを削ぎ取って〈固める〉のでなく、音の細胞一つずつを生かし〈解放する〉豊かさがよく出ている。
バレンボイムが弾いたベートーヴェンのソナタにはどれも、地平線のその先までを見通すような素晴らしい拡がりがある。
各々のパッセージやフレーズに相応しい響きやバランスを実に注意深く選びとっているが、それが部分強調や表面的な対比の興味に終わらず、楽章全体、曲全体に奉仕しているのが凄い。
現代ピアノの可能性を徹底して引き出しながら、それに悲鳴を上げたり、殴りつけるような衝撃とは無縁に、音楽そのものの威容を率直に余す所なく伝えている。
オペラも含めた指揮、室内楽演奏、歌曲でのピアノと、音楽のあらゆる分野から体得した音楽表現の理想と精髄が、ここに結晶した感じである。
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