2009年05月30日
マイスキーのバッハ:無伴奏チェロ組曲
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バッハの「無伴奏」は、チェリストの音楽的資質と技巧水準を白日のもとにさらけだしてしまう作品だが、マイスキーの魅力はこの曲でいっそう大きく顕現している。
張りのある美しい音色で演奏した、たくましく彫りの深いバッハである。
完璧な技巧を駆使しながら、一分の隙もなくまとめた演奏で、作品の内面にひたむきに迫った、実に屈折した陰影の濃い表現で、密度の濃い音楽をつくりあげている。
マイスキーはソ連にいた頃、狂人を装って精神病院で、当局の摘発を逃れたという、ユニークなキャリアの持ち主だけに、ヨーヨー・マほど楽天的にはなれない独特の人格を形成したのだろう。
そうした彼のパーソナリティが、この演奏に反映しているのか、ピンと張り詰めた緊張感と、独特の集中力が凝縮され、享楽的な気持ちでは聴くことができない。
彼の演奏にはヨーヨー・マのような楽天性を全く感じさせない。マイスキーが目指しているのは、バッハの音楽そのものの実質に肉薄することである。
内面的な掘り下げも深く、精神の葛藤すら感じさせる、マイスキーならではの境地が感じられよう。
耳を喜ばせるヨーヨー・マに対し、マイスキーは聴き手の精神に訴えかける。
明るく豪快であるよりも、より精緻で耽美的な世界が展開されているのである。
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