2009年08月18日
アバド&シカゴ響のチャイコフスキー:交響曲全集&管弦楽曲集
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録音年代順に追っていきたい。
「テンペスト」はアバドの面目躍如といった好演である。
清潔で端正、シカゴ響の優秀な技術を駆使して一糸乱れぬアンサンブルを繰り広げる。
「小ロシア」は冒頭から柔らかく歌い流れる演奏で、構造が明快でメリハリも充分だが、根底にあるのは歌謡性だ。
推進力が強いにもかかわらず、デリケートなニュアンスにも不足しないのがアバドらしい。
音色も明るく、チャイコフスキーの西欧的な側面をよく抽出している。
第5番はロマンティックな表現のほとばしる鮮烈なチャイコフスキーだ。
スコアにないさまざまなテンポの揺れ動きが明確な意図をもってすこぶる効果的に表されており、アバドのチャイコフスキー観が良く表明されている。
シカゴ響も自然な流れで音楽の推移と感情の発展を一体化させている。
珍しい「地方長官」も一旦破棄されたスコアを再現したものだが、なかなかの名作。
「悲愴」は曲頭から終結まで、息もつかせず聴かされてしまう。
シカゴ響の響きの良さと、アバドの緻密な棒さばきが一体となって、ある種の理想郷を創り出したのだ。
力強い表現ながら全く荒っぽさがなく、巧緻な合奏で各楽章の性格を見事に描き上げ、内面から湧出する歌が自ずと作品の悲愴美を表している。
「スラヴ行進曲」も誠実な姿勢が好ましい秀逸な演奏。
第4番は、第5番や「悲愴」での名演に劣らぬ素晴らしい出来だ。
アバドはまず標題的な要素を洗い落とし、絶対音楽として純粋な交響曲として、再現を試みているようである。
アバドによるシカゴ響の掌握はますますうまくいっているようで、「ロメオとジュリエット」の後半、弦楽セクションの聴かせどころとなっているクライマックスのあたりなど、輝きと粘りを聴かせており、このオーケストラがベストに君臨してきた理由がよくわかる。
「ポーランド」はきわめて純度の高い表現で、第1楽章の冒頭から晴朗で清潔、各楽想の表情や展開も自然である。
第2楽章も鮮明な輪郭をもった音楽で、第3楽章の響きの純粋な美しさも快い。
アバドの演奏は、この曲の粗野な生気や民族的な性格が純粋に音楽的効果に昇華され、チャイコフスキーに洗練された表情を与えている。
シカゴ響の演奏も、いつもながら素晴らしい。
「1812年」は端正な表現だ。
「冬の日の幻想」でアバドは、従来と同様にチャイコフスキーの歌謡性を豊かに表出している。
また、速めのテンポを採って推進力を感じさせ、歌に溺れてしまわない現代性を示している。
シカゴ響のスムーズなアンサンブル、感覚的に磨かれた輝かしい光沢と運動性も見事で、実に立派な演奏となった。
「くるみ割り人形」も名演で、オーケストラを存分に鳴らしながら、鋭敏な感覚による軽やかなリズムで、各曲を清潔にまとめている。
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