2009年09月01日
クレーメル&ムーティのシューマン/シベリウス:ヴァイオリン協奏曲
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クレーメルとムーティの初共演であった。
シベリウスでは、この曲のもつクールな透明感がクレーメルにぴったりだ。
たとえば第1楽章冒頭などは楽譜の指定を無視して最弱奏で登場し、北欧に吹く風のようにいじらしく打ち震えて聴く者の心に触れてくる。
表情豊かなルバートや訴えるポルタメント、第2楽章コーダでの静かな瞑想も忘れ難い。
シューマンも反ロマン風だが決して冷たくならない。第1楽章の楚々とした虚無感などいかにもクレーメルらしい。
この協奏曲はシューマンが精神に変調をきたした時期に作曲された。
そのため妻のクララや、友人の大ヴァイオリニスト、ヨアヒムは、この作品を欠陥だらけと見なして、出版と演奏を禁じてしまった。
確かにここにはシューマン特有の過剰と短絡が際立っているものの、他にない独自の楽想がほとばしっている。
それは誰もまだ覗いたことのない狂気と境を接する深層心理の世界で、当時の人々がそれから眼をそむけたかった理由もわからないではない。
この危険な領域に果敢に切り込んでいるのがクレーメルの演奏。
彼は2度この曲を録音しているが、シューマンの苦悶の深さとそれからの救済を求める切実さという点で、この演奏が優っている。
ややシューマンのもつ甘いロマンティシズムからははずれた表現だが、この曲のもつ技巧的で、どっしりとした感じをよくあらわした演奏である。
ムーティの棒も、冴えわたっている。
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