2009年09月25日

カイルベルト&バイエルン国立歌劇場のワーグナー:楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」


この記事をお読みになる前に、人気ブログランキングへワンクリックお願いします。



1963年にミュンヘン国立歌劇場が再建された際の記念公演のライヴ録音で、この作品に対するカイルベルトの傾倒の深さが如実に示された名演奏である。

これだけの大曲、名曲なので、昔から腕っ節の強い指揮者たちが、何人も取り組んできたが、フルトヴェングラーやトスカニーニのライヴ盤は、名演としてもよく知られているし(フルトヴェングラーは、音楽にかなりの欠落があるのが残念)、何種類かあるクナッパーツブッシュも素晴らしいものが多く、特に比較的最近、オルフェオ・レーベルでCD化された1955年のライヴなどはオケもさることながら、歌手の見事さに目も眩む思いがしたところだ。

しかし、筆者にとってのベスト・ワンは、カイルベルトがバイエルンで指揮した記念ライヴのCDである。

ここで表出されている素朴で重厚な表現は、いかにもカイルベルトらしい。

雄渾な前奏曲が始まると、たちまちのうちに劇場空間のなかに引きずり込まれるのがわかる。

前奏曲から合唱に移る瞬間の美しさは、まるでそのとき幕がさっと開かれ、舞台の奥行きが一気に深まるようで、いつ聴いても陶然としてしまい、後はひたすら、音楽のなかに身をゆだねるのみだ。           
この録音から30年後のサヴァリッシュ時代のミュンヘン・オペラの感覚と比較すると、いろいろ懐かしい思い出がよみがえる貴重な録音である。

この時代のワーグナーは、演奏にも演出にもまだ保守的・伝統的な様式を根強く残しており、ヴィーンラント様式とははっきり一線を画していた。

その良くも悪くも素朴な古めかしさが今となっては独特に感じられる。

いわば、読みづらい毛筆の行書だが、それが作品にはむしろふさわしく、なんという柔らかい、それでいて芯のあるオーケストラであろうか。

巧さもとびきりで、管楽器と弦とのブレンドも絶妙。               

演奏、録音の両面で技術的な傷が見受けられるが、まさに古き良き時代のマイスターの堅実さをそのまま表現したような演奏は今日では貴重なものとなった。

ライヴ故の高揚感もあり、少しばかり古めかしいドイツ的な「マイスタージンガー」の典型的な演奏といえよう。

歌手もハンス・ホッターをはじめ、懐かしい顔ぶれが揃い、たっぷりと聴かせてくれる。

ザックスのオットー・ヴィーナーは、ちょっとクセがある声と思われるかもしれないが、自分の心を偽ろうとする誠実な大人の深い味を出している。

いまはほとんどいなくなってしまったヘルデン・テノールのジェス・トーマスも、声に張りがあり、輝かしさと若さで、ヴァルターにぴったり。

ヒロインであるエヴァのクレア・ワトソンも、凛々しさそのもので、ポーグナーはハンス・ホッターなので文句のつけようがない。

ワーグナー唯一の明るい作品であるこのマイスタージンガーは、ともすれば軽くみられがちだが、オケ、ソリスト、合唱のすべてにわたって、音楽的にも精密であり豊かなので、いい演奏に出会えば、もっとワーグナーには喜劇を書いてほしかったと、誰もが思うのではないだろうか。

ところで、クラシック音楽情報ならこちらがオススメです。
人気ブログランキング



フルトヴェングラーのCDなら、 フルトヴェングラー鑑賞室



classicalmusic at 19:36コメント(0)ワーグナー | カイルベルト 

コメントする

名前
 
  絵文字
 
 
メルマガ登録・解除
 

Profile

classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

Categories
Archives
Recent Comments
記事検索
  • ライブドアブログ