2009年06月11日
セラフィンのヴェルディ:椿姫
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《椿姫》というオペラは、その大衆性と裏腹に、名演・名盤と呼べる録音が驚くほど少ない。
このオペラに今なお決定的な名演がないのは、第2次大戦後、最高のヴィオレッタだったカラスが最盛期に録音する機会を逸したためである。
カラスはこの1955年に行なわれた録音の4ヵ月前に、スカラ座でジュリーニ指揮の《椿姫》で大成功をおさめたばかりだったから、もしこの録音で歌っていたら素晴らしい名演が残っただろう。
しかし、カラスは2年前にチェトラに録音していたので、同じ曲を6年間は他社に録音できないという厳しい専属契約があった当時、EMIに録音できなかった(現在、カラスのヴィオレッタの名唱はライヴ録音で聴けるが音質はよくない)。
だが、この録音にセラフィンが抜擢したステッラのヴィオレッタも、カラスには及ばないとはいえ素晴らしい。
ステッラはこの録音の前年にスカラ座の《オテロ》のデスデーモナで成功をおさめ、EMIに《ドン・カルロ》のエリザベッタを録音しているように、本来の声質はリリコ・スピントだが、カラス同様セラフィンの指導を受けたのだろう、ここでは若々しい柔軟な声でヴィオレッタの悲劇を見事に表現している。
やはり最盛期だったディ・ステファノのアルフレードとゴッビのジェルモンの歌唱も素晴らしく、さらにセラフィンの作品の本質に迫る劇的な緊張感をたたえた指揮、それに鋭く反応しているスカラ座の管弦楽団と合唱団、充実したキャストのオペラティックな感興豊かな表現力も非常に味わい深い。
セラフィン盤は、指揮の玄人好みとも呼べる渋い音楽作りが楽しめる。
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