2021年11月03日

官能と陶酔がいつの間にか崇高な法悦と浄化にまで昇華していくフルトヴェングラーのワーグナー演奏の秘法がSACD化により余すところなく示された《トリスタンとイゾルデ》


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ワーナーによるフルトヴェングラーの歴史的遺産のSACD化は、交響曲及び管弦楽曲を皮切りとして、協奏曲や声楽曲など多岐に渡るジャンルについて行われてきたが、ついにオペラが登場した。

ワーグナーの楽劇「トリスタンとイゾルデ」と既にご紹介した楽劇「ワルキューレ」、ベートーヴェンの歌劇「フィデリオ」の3点という豪華ラインナップとなっている。

いずれも名演であると思うが、その中でもベストの名演は楽劇「トリスタンとイゾルデ」と言えるのではないだろうか。

フルトヴェングラーが生前スタジオ録音した正規レコードのうちでは、この「トリスタン」が最もすばらしい。

それどころか本演奏は、フルトヴェングラーによるあらゆるオペラ録音の中でもダントツの名演であるとともに、様々な指揮者による同曲の名演の中でも、ベーム&バイロイト祝祭管による名演(1966年)、クライバー&ドレスデン国立管による名演(1980〜1982年)と並んでトップの座を争う至高の超名演と高く評価したい。

レコーディング嫌いで有名であったフルトヴェングラーが、このような4時間近くも要する長大な作品をスタジオ録音したというのも奇跡的な所業と言えるところであり、フルトヴェングラーがいかにこの演奏に熱意を持って取り組んだのかを伺い知ることが可能であると言えるところだ。

本演奏でのフルトヴェングラーは荘重にして悠揚迫らぬインテンポで曲想を進めていくが、ワーグナーが作曲した官能的な旋律の数々をロマンティシズム溢れる濃厚さで描き出しているのが素晴らしい。

各登場人物の深層心理に鋭く切り込んでいくような彫りの深さも健在であり、スケールも雄渾も極み。

とりわけ終結部の「愛と死」における至純の美しさは、神々しいばかりの崇高さを湛えているとさえ言える。

官能と陶酔がいつの間にか崇高な法悦と浄化にまで昇華していく、彼のワーグナー演奏の秘法が、ここに余すところなく示されているのである。

こうした濃厚で彫りの深いフルトヴェングラーの指揮に対して、イゾルデ役のフラグスタートの歌唱も官能美の極みとも言うべき熱唱を披露しており、いささかも引けを取っていない。

トリスタン役のズートハウスは実力以上のものを発揮していると言えるし、クルヴェナール役のフィッシャー=ディースカウも、後年のいささか巧さが鼻につくのとは別人のような名唱を披露している。

フィルハーモニア管弦楽団もフルトヴェングラーの統率の下、ドイツ風の重厚な演奏を展開しているのが素晴らしい。

録音は、フルトヴェングラー自身がレコーディングに大変に満足していただけのこともあって、従来盤でもかなり満足し得る音質を誇っていたが、ユニバーサルによるSACD化によって見違えるような鮮明な音質に生まれ変わった。

細部のニュアンスや全体のデュナーミクの躍動を格段に鮮明に聴くことができる。

例えば、第2幕冒頭の弦楽器の繊細な合奏やホルンによる狩りの響き、そして歌手陣の息遣いまでが鮮明に再現されるのは殆ど驚異的ですらあり、このような歴史的な超名演を、現在望み得る最高の高音質で味わうことができるのを大いに歓迎したい。

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classicalmusic at 12:30コメント(0)ワーグナー | フルトヴェングラー 

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classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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