2009年11月28日
テンシュテットのマーラー:交響曲「大地の歌」
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この録音は、指揮者自身がなかなか出来映えに満足できず、発売が遅れたという録音だ。
しかしたとえ未完成であっても、言おうとしていることは非常にはっきりしている。
多分、この言おうとしたことを言い切るには、もはやロンドン・フィルというオーケストラの力量では不可能だったのだ。
ここでは絶対にベルリン・フィルの超絶的な力が必要だった。
酸鼻きわまる絶叫のような第1楽章を聴いていると、そう思われてくる。
とはいえ、それでもなお、これは名作「大地の歌」の最も説得力のある演奏である。
何と言ってもフィナーレが凄絶だ。
この「告別」と題された長い楽章を聴いていると、自分が本来平和な自宅にいることも忘れてしまう。
だんだんうなだれてくる。時間が止まる。曲が描き出す世界の中に完全に吸い込まれてしまう。
普段は明るい音色のロンドン・フィルが暗鬱な響きに一変している。音符のいちいちに異様な力がこもっている。
一般的に、ロンドンのオーケストラは、かの国の伝統なのかどうか、あまりあからさまに悲しいとか不幸だとか言い募るのは品がないらしく、自然に節度が守られてしまうのだが、テンシュテットが指揮した場合は、その暗黙の領域をはみ出し、あえて泥沼に踏み込んでいくのだ。
最後、曲は神秘的な甘さの中で静かに終わる。そのいわく言い難い感触、謎のような微笑、不思議な後味、これこそ音楽でなければ表現できない何かである。
聴き手は、何か謎の中に放り出されたような気持ちがする。
作曲者は、まさしく「告別」という題名そのまま、聴き手を置いてどこかへ姿を消したのである。
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