2009年12月31日
ロストロポーヴィチのプロコフィエフ:交響曲全集
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ロシアがソヴィエト連邦だったその末期に、ソヴィエトの自由化政策によって、西側に出ていた芸術家たちの一時帰国が実現しはじめた。
ロストロポーヴィチもそうしたひとりで、彼と、その夫人でソヴィエトきっての名ソプラノだったヴィシネフスカヤの帰国の様子は、テレビでも報じられ、またドキュメンタリー番組にもなっていたが、愛する祖国の土を再び踏むことのできた彼らの感慨深げな表情は、たいへん印象的であった。
こうした祖国の作曲家の作品を演奏する時のロストロポーヴィチは、彼の郷愁の思いがひしひしと伝わってくるかのような、ロシア的な情感をてんめんと歌わせた表現で、強く胸を打たれる。
第6番では、作品のもつ現代的手法から鋭い感覚美を表すだけでなく、その内部に秘められた抒情性やスラヴ的な憂愁も表出されている。
しかもロストロポーヴィチの思索的な表現が、そうした印象をさらに強める結果となった。
第1番はユニークな表現でテンポが遅い。作品の擬古典的な様式と時代を無視した解釈だが、そこに豊かな音楽性があることが認められよう。
第2番は、ロストロポーヴィチ特有のリズムと楽想の強靭な把握が功を奏しており、作品の抒情性をよく表出しているが、弦に比較して木管や金管群がバランス的に弱いのが残念だ。
第3番は第2楽章以降が優れており、ロシア風の旋律を共感に満ちた表情で歌わせているし、終楽章では金管の吹奏が美しく、音楽を率直に高揚させているのもよい。
第4番の2つの版をそれぞれ演奏しているものは他にもあるが、1枚のCDに収めたのは珍しい。
作品的には改訂版の方が充実しているが、初稿にみられる一種のぎこちなさの中にもそれなりの魅力がある。
ロストロポーヴィチは、フランス国立管の洗練された響きを縦横に駆使して、プロコフィエフの音楽をエネルギッシュに、流麗に演奏している。
第7番は華麗に演奏されることが多いが、ロストロポーヴィチはテンポを遅めにとり、内向的でほの暗い音楽を聴かせる。
それがプロコフィエフのスラヴ的な性格を抽出し、細部の美を発見させる。
創意豊かな内面感情に忠実な演奏といえよう。
第5番も同じようにロシア風ともいえる重厚さを感じさせるが、両端楽章では指揮者とオケと作品の調和にやや疑問が残る。
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