2010年01月31日
アバドの「フィガロ」
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ウィーン時代のアバドの、最大の業績のひとつがこの《フィガロ》だろう。ウィーン・フィルはさっそうと走らせるアバドの指揮に、喜々として従いながらも、その優美な演奏を失わず、これはアバドの《フィガロ》であるとともに、ウィーン的な《フィガロ》ともなり得ている。
クレンペラー、ベーム、ジュリーニ、カラヤンと数々の名盤が作られてきたが、1994年アバドの指揮のもとウィーンで収録された演奏は、《フィガロの結婚》というオペラだけが持つ知的香りと朗らかな人間劇としての楽しさを絶妙なバランスでブレンド、現代に生きる古典の素晴らしさを堪能させてくれる。
生き生きとした表情を一瞬たりとも失わない。《フィガロの結婚》は、もともと活発で生き生きしたオペラに決まっている。それでも、ここまで躍動感あふれる演奏はほかにない。
適材適所の配役も素晴らしい。
威厳だけでなく優しさも弱さも持つ伯爵を歌うスコウフス、そこはかとない感情移入が素晴らしいステューダーの伯爵夫人、生き生きとして一番元気なマクネアーのスザンナ、愛すべき人間性を披露したガッロのフィガロ、そして天衣無縫の若いツバメを演じて爽快なバルトリのケルビーノなど、一人一人が生きた存在感をもって役割を演じ、歌いきっている。
アバドが節度をもって全曲をふくらみ続ける蕾のように再現した点も見事だし、ウィーン・フィルのふくよかさも美しさに花を添えている。
耳だけの音楽ながら、演奏が優れているからであろう、視覚を刺激されるような感銘があり、全曲を聴き終えたとき、舞台を見終わった感銘すら覚えてしまう。
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