2009年08月21日
ヴァンスカ&ラハティ響のシベリウス:交響曲全集
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1990年代後半、にわかにシベリウス旋風を巻き起こしたフィンランドからの新しい風である。
1953年生まれのヴァンスカはヘルシンキ北に位置する小都市ラハティのオーケストラの音楽監督に1988年に就任、オーケストラとともに手作りのシベリウス像を築き上げてきた。
それは作品の原点に戻り、作曲者の意図を忠実に浮き彫りしてみる、そんな努力と研鑽の日々であったように思われる。
その結果、彼らが到達した結論は、シベリウスにはシベリウスの音があり、様式美があり、佇まいの美しさがあるということであった。
それはブラームス的でも、ブルックナー的でも、マーラー的でもない、素朴で慎ましく、しかし誇り高いシベリウス像であり、聴き手に新しい発見にも似た感動を与えるものとなっている。
肥大しない、声高に叫ばない演奏が伝えるシベリウスの世界は一段と人間的で、しなやかで、そして繊細である。
名盤は枚挙にいとまがないが、ヴァンスカ率いるラハティ響の演奏で聴くと、シベリウスの心が見えてくる。
彼らは決して大言壮語しない。咲き誇る大輪の花としてシベリウスの交響曲を輝かしく、鮮やかに再現するのではなく、むしろ花になる以前の蕾の状態や、花を支える葉や茎、いやさらに土や根もあることを今一度ふまえたうえで、じっくりと、時間を費やして演奏していく。
編成も小ぶりだし、何よりも音符一つ一つに注がれる目が純粋で無垢であり、それが不思議な連帯感ともなって演奏を魅力的にしていく、そんな新しいシベリウスを聴かせてくれる。
もっと輝かしい演奏、もっとドラマティックな演奏、もっと起伏に富む演奏を見出すことは容易だが、このコンビの演奏にはそれらとは異なる愛情の豊かさと親密さがあり、それがシベリウスが思い描いていた原風景への旅にも似た感銘を与えてくれるのである。
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