2010年07月17日
イッサーリスのブラームス:チェロ・ソナタ集
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イギリスのチェリスト、イッサーリスは1958年生まれである。
誰もが認める才能を持つ名演奏家だが、コンクールのような競う場を嫌い、一人、孤独に自身の世界を温めてきた。
26歳のときのデビュー盤にイッサーリスはこの地味なブラームスのソナタを選曲した。
しかもそれは輝かしさのアピールなどではなく、敢えて、さらに暗がりを求めてさまようかのような影の濃い演奏となっている。
1980年代半ばと言えば演奏家の世代交代が促進され始めた時期になるが、多くの若手演奏家たちが感性の新しさ、解釈のみずみずしさ、そして輝かしい個性と若々しい生命力をアピールしたのに対し、イッサーリスはあくまでも暗く、自身の淀みに敢えてこだわり、コントラバスにも似た表現の重さと暗さをベースにブラームスを歌い上げている。
だが解決できない自分をさらけ出すことで、イッサーリスの演奏はかえって真実の演奏としての気迫と説得力とを獲得した。
その仄かな光を求めるかのような演奏は多くの聴き手を魅了したし、イッサーリスが名演奏家である以前に、一人の愛すべき人間であることを明確に印象づけた。
それは脚光を浴びる新世代の若手演奏家といえども決して一色ではなく、現代に生きる喜びと同時に影を持つ事実を確認させた新しい出会いの瞬間でもあった。
「我が道を行く」とはかっこいい表現だが、貫徹するのは難しい。だがこのチェリストはやってのけた。
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