2010年04月29日

ポリーニ&ベームのモーツァルト:ピアノ協奏曲第19番&第23番


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ポリーニとベームの初共演ということで話題になった録音。

人類史上最も美しい音楽を書いたのはモーツァルトと言われている。世界で最も美しい音色を出すオーケストラはウィーン・フィルだと言われている。

このふたつが、真実として結晶化した録音がある。ベーム指揮、ポリーニ独奏で演奏されたピアノ協奏曲第23番だ。

私はこの演奏をもう15年近く聴いてきて、まったく飽きない。それどころか、聴くたびに、何と美しいのかと思う。ぐうの音も出ない。

ウィーン・フィルの録音はいくらでもあるけれど、これほどまでに美しい演奏をした記録は他にないかもしれない。

ポリーニはショパンではあれだけ詩的情感をこめて演奏していたのに、モーツァルトでは意外と淡々としている。

それでいて第23番の第2楽章など何ともいえぬ甘く悲しい情感を見事に出しているし、第19番の第3楽章でのオーケストラとのかけ合いも見事である。

ベーム指揮のオケは厚みがあるうえ、リズムやアンサンブルがきっちりしていて素晴らしい。

弦楽器は優雅で、なめらかで、柔らかくて、メランコリック。木管楽器はこれ以上ないというくらいに絶妙の表情をしている。

フルート、オーボエ、クラリネット、ホルン、が紡ぎ出す響きの何という美しさ。

決して濃厚な味わいではない。油彩というより、水彩画だ。透き通ったような、まさに空気の震えのような美しさだ。

ピアノも目立ちすぎないのがいい。オーケストラ以上に薄味で自己主張が強くないので、心おきなくウィーン・フィルの美しさを堪能できるのである。

世代は違うけれど、ポリーニとベームはモーツァルトの協奏曲において、ぴたりと合っていたんじゃないだろうか。

なぜかアバドではなくてベームが、ポリーニのエレガントな、というよりエレガントだったモーツァルトの弾き方に、調和していた。

この演奏に説明はいらない。

ベームは、いまでは失われてしまった"ウィーン風"モーツァルトの美をウィーン・フィルから引き出し、それが実にポリーニの、美音とくっきりした様式感を持ったピアノを支える。

モーツァルトの音楽が幸福感と結びついていた時代の記念碑みたいに、いまでは聴こえてしまうのが、ちょっと残念だけれど、まだ甦る可能性だってあるし、この記念碑はそれ自体素晴らしい。

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classicalmusic at 17:29コメント(4)トラックバック(0)ポリーニ | ベーム 

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コメント一覧

1. Posted by Kasshini   2016年06月29日 04:48
ピアノ自体は、実はグルダの方が好きだったりします。ですがグルダがモーツァルトを最も美音にするベーム&WPhですもの、ポリーニの軽やかかつ瞬くように煌びやかなピアノも相まってとても好きです。昨年末、第1楽章で、随所に短調に転調する場面で何度思わず泣いてしまったことか。今も引きずる失恋鬱ど真ん中で聴いていたのですが。それ以来、この曲とこの演奏は忘れられないものになりました。
2. Posted by 和田   2016年07月07日 23:04
Kasshiniさん、お久しぶりです。コメントありがとうございました。
ウィーン的なるものは音楽には全て美点であるというつながりですが、以前、「パルジファル」の件で、とりあげられていたクレメンス・クラウスのバイロイト・ライヴを入手しました。
何としてでも聴きたいとは思っていなかったのですが、アマゾンマーケットプレイスで安く購入できたので。
1953年のモノラル録音ですが、音質は可もなく不可もなく、クラウスの至芸をたっぷり満喫できました。
同年の「指環」よりウィーン風のエレガンスや繊細なニュアンスが感じられて気に入りました。
クナのうねるような演奏とは対照的ですね。
ちなみに当時のバイロイトのオケにはどれくらいウィーン・フィルの団員がいたのでしょうか?
ご存じでしたら教えていただきたいです。
それにしてもクラウスはクレンペラーのようにステレオ円熟期まで長生きしていれば、かなりイメージが変わっていたと思います。
フルトヴェングラーのように燃え尽きて亡くなった暁からステレオ録音が始まったという訳ではないようなので尚更…。
3. Posted by Kasshini   2016年07月15日 03:48
自分もさほど知ってはいないのですが。この知恵袋が適切でしょうか。これを読むとその年の中心指揮者によって選出オケが変わっていたようです。
50年代から60年代半ばは、半数以上がヴィーン国立歌劇場。60年代でもベームが振った後半はシュターツカペレ・ドレスデンが筆頭と記憶します。思えば戦前カール・ムックがパルジファルを振った時も当時彼が首席だったシュターツカペレ・ベルリンですし。
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1439749219
クレメンス・クラウスでネガティブに評価する点はヒトラーに気に入れた点と時には政治的謀略で地位を得ようとした点です。
それでも評価したいのは、ヴォツエックといった作品も高く評価し、あの薫りたつ音色と歌わせ方、弾むリズム感。音符の伸ばし方。あと、政治的謀略も絡んでいますが、ベルリン、ミュンヒェン、ヴィーンのドイツ語圏3大歌劇場を歴任した2人の中の1人であることです。パルジファル快速演奏の理由は、R.シュトラウスが快速で演奏する理由を知っていたからのようです。さすが、親友であり師弟であったというべきでしょうか。またR.シュトラウスがもう一人のドイツ語圏3大歌劇場を歴任したもう一人の指揮者です。
4. Posted by 和田   2016年07月15日 18:16
貴重な情報ありがとうございました。
なるほど、指揮者による選定が大きいようで、年度によって構成員は違うものの、単なる寄せ集めのオケとは思えないバイロイトの音なるものは感じ取れますよね。
私は今もワーグナーにどっぷりはまりこんでしまってます。
ワーグナーの毒にしびれてしまったが最後、長さを忘れて、魔力にとりつかれたようにひたすら聴いています。

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classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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