2010年03月24日
F=ディースカウのシューベルト:冬の旅(1962年EMI盤)
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F=ディースカウ若き日の「冬の旅」だ。
F=ディースカウの王座はまだ揺るがない。ただし40年以上の長い演奏生活で多くの録音があり、ベストを決めるのは容易ではない。
ここでは厳しい様式感と気力の充実とで1962年の最初のステレオ録音を挙げておく。
数えきれぬほどの演奏があり、それぞれに特色がある。しかし私の心をとらえるものは2つ。
1つは凛然たること古武士のごときゲルハルト・ヒュッシュ。いま1つは、そのヒュッシュの呪縛を解き、声楽曲として豊かな世界を展開したフィッシャー=ディースカウ、それもこのムーアとの若々しい1枚だ。
この不世出のバリトンは飛び抜けた美声のうえに、声のコントロールも完璧、さらに曲に対する、客観的とも言える精緻な研究によって、この曲集の持つ悲しさ、憧れと絶望を美しく歌い出している。
ひたむきな心象風景のひとこまひとこまが彫りの深い表情で歌われている。
ことに、余りにポピュラーなため、かえって多くの歌手がつまづきやすい〈菩提樹〉など、曲全体も全体とのバランスの上でも、やはり傑出している。
まだ年輪の大きさ、人生への諦念への歩みには遠いにしても、この曲は老人の歌ではなく、死と向き合った青春の歌である。
F=ディースカウの若さと"死"の世界の息詰まるような対峙がここにはある。
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