2010年06月04日

クレンペラーのブルックナー:交響曲第5番


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滔々と流れる大河のような、とはよく用いられる比喩だが、この演奏を評する時ほど相応しいことはない。

川幅が広いので遠くから眺めると緩やかな流れに見えるのだが、近づいてみるとその膨大な水量がかなりの勢いで流れていたりするように、この演奏も途方もなくスローテンポで雄大でありながら、音楽の流れそのものは一切滞ることがないのである。

クレンペラーの演奏の常だが、外面は微笑みひとつなく無愛想で取っつきにくく、即物的なアプローチのように見えて、その実、分厚い殻の内側に無限のニュアンスが湛えられている。

その殻を打ち破るには、リスナーからの歩み寄りも必要だが、ひとたび、その殻の内側を知った者にその至福は一生の宝となる。

第1楽章から各フレーズの呼吸の深さに、まるで時計の針の進みが遅くなったような錯覚に囚われる。

しかし、その異次元に迷い込んだような感覚が大事なのだ。ブルックナーは非日常の異空間に鳴り響く音楽だからである。

我々も自らの意志で脈拍をゆっくりに整えるくらいの心構えで演奏と向き合わねばならない。

そうしてはじめて、第2楽章の熱い歌に、魂の奥の奥まで揺さぶられ、真に癒されることを実感できるのである。

フィナーレにおける対位法も、仰ぎ見る音の建築物のあまりの巨大さに圧倒されるが、コーダの壮麗なるクライマックスでは、ブルックナーが見たと同じ「光」を見ることができるかも知れない。

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